2 三人でフルメンバー
試合前、グランドに出てウォーミングアップを始めようとすると、
一塁側のギャラリーから
「おーい!正野!」
と、ハリのある声が俺を呼んだ。
その声に振り向くと、
学ラン姿で額に必勝の鉢巻きをした、原平先輩が居た。
その背後には張金高校の応援団旗を掲げたひょろ長いのっぽの団員と、
大太鼓のようなお腹に大太鼓を抱えた小太り
(というかガッツリ太っている)の団員が控えていた。
その姿を見た俺は、フェンス際まで駆け寄って声をかけた。
「おーっ、わざわざ学ラン姿で応援に来てくれたんですね!
旗や太鼓まで用意してくれて、本番さながらじゃないですか!」
それに対して原平先輩は、両拳を堅く握りしめてこう返す。
「当たり前や!この試合に俺達応援団の未来がかかっているからな!
今日は何としてもお前らに勝ってもらう為に、
俺らは全身全霊を尽くしてお前らを応援するぞ!」
「そ、そうですか、それは頼もしい限りですけど、
今日ここに来れたのは三人だけなんですね。
他の団員の人は、あんまりこの賭けに乗り気じゃないんじゃないですか?」
「違うわい!今ここに居る団員で全員や!他の団員は皆辞めてしもうたからな!」
「えぇっ⁉そうなんですか⁉」
「そうや!
チア部と一緒に活動でけへん応援団なんてやってられへんって言うてな!
だからそいつらを呼び戻すためにも、死んでもこの試合には勝ってくれよ!」
「わ、わかりました。
俺達も原平先輩達の応援に応えられるよう、必死こいて頑張ります!」
「頑張りますとかはええねん!
とにかく勝て!何としても勝て!ただし!正々堂々とな!」
「は、はい」
何か、尋常じゃなく気合入っとんなぁこの人。
まあ応援団の存続がかかってるんやから、そりゃあ必死にもなるか。
それだけ応援団の事を大切に思っているのやろう。
そんじゃあこの人の言うように、正々堂々勝ちに行きますか!




