10 応援団とチア部の賭け
翌朝、市営グランドでの朝練を終えて学校へ行くと、
応援団の団長の原平先輩が俺の元に駆け寄って来た。
「おい!野球部の一年!お前に話があるんや!」
それに対して俺は、やる気満々の顔でこう返す。
「何ですか?
言っておきますけど、例え彼女が応援団のマネージャーになろうが、
チア部に入ろうが、あの子は誰にも渡しませんよ。
あんたにも、もちろんあの羽本先輩にもね!」
「そんな事は今はどうでもええんや!
それよりお前ら、今度の日曜、練習試合があるらしいな!」
「はい?ありますけど、それがどうしたんです?」
「その試合でな、俺達張高応援団とチアリーディング部で、
賭けをする事になったんや!」
「賭け?一体何の賭けをするんです?」
「今度の練習試合でお前らが勝てば、
夏休みにあるチア部の合宿に、俺達応援団も同行できる。
そやけどお前らが負ければ、俺達はチア部と一緒に合宿に参加ができず、
これからチア部は応援団とは別に、独自に活動していく事になる!
だから今度の試合、是が非でもお前らに勝ってもらわんとあかんのや!」
「はぁ?もちろん今度の試合も勝ちにはいきますけど、
別に負けた所で大きな損害はないでしょう?
そんな賭けをする事になんの意味があるんですか?」
「アホか!これは張高応援団の存続がかかった大勝負なんや!
応援団がチア部と一緒に活動できなくなるというのは、
ハッキリ言って応援団に入るメリットが全くなくなると言っても過言やない!」
「ええ?それは言い過ぎでしょう?」
「そんな事ないわい!
何が悲しくて日頃から他の運動部と変わらん過酷なトレーニングをして、
真夏の炎天下で学ランを着て他の部を応援せなあかんねん?
それもこれも、チア部の女子と一緒に活動して、
あわよくば付き合えるチャンスがあるからこそ!
だから俺達応援団は過酷な活動でも頑張れるんや!
(※これはあくまで原平の見解です)」
「物凄くぶっちゃけましたね・・・・・・」
「男なんかそんなモンやろ!
そやけど今度の試合でお前らが負けて、
チア部が応援団とは完全に別れて活動をするようになれば、
羽本は自分のハーレムを不動のものとし、
入団するメリットがなくなってしまった応援団には、
新しい団員は入ってこなくなってしまうやろう。
それどころか今居る団員もどんどん辞めていってしまうかもしれん。
それを阻止する為にも、お前らには死んでも勝ってもらう!
試合当日は、俺達応援団も総出で応援に行くさかい!
本番と同じ、いや、それ以上の声援をお前らに送ったるわ!」
「は、はぁ、そうですか・・・・・・」
な、何か、俺の知らん所でえらい話になってたんやな。
でもまぁ、応援してくれると言うのなら、それに応えられるよう頑張らんとな!
今度の試合、伊予美にカッコいい所見せる為にも、絶対に負けられへん。
鉄壁高校との練習試合まであと数日。
果たして俺達張高野球部はその試合に勝ち、
張高応援団の存続の危機を救う事ができるのか?
そして伊予美は張高野球部のマネージャーになってくれるのか?
張高野球部と応援団、そして俺にとっての試練が始まろうとしていた!




