2 決して妬んでいる訳ではない
いや、別にええけどね。
俺は昔から伊予美一筋やからね。
他の女子にキャーキャー言われたって何とも思わんしね。
「キャーッ!松山くん素敵―っ♡」
こんな事言う女子がおっても何とも思わんし。
「小暮君カッコイイ♡」
こんな声援聞いても、は?勝手に言うとけば?って感じやし。
「遠川監督こっち向いてくださーい♡」
なんて言う奴がおった所で俺には関係ないし。
こんな声援何とも思わんし、関係ないし、
別に嫉妬したり妬んだりする訳ではないけど、
あんまりキャーキャー言われると練習の妨げになるので、
俺は至って紳士的に、丁寧な物言いで、彼女達に言葉をかけた。
「キャーキャーうっさいんじゃボケ!気が散るからどっか行けやアホ!」
すると笑顔でキャーキャー言っていた女子達の顔が般若のごとく豹変し、
俺よりデカイ声で罵詈雑言を浴びせてきた。
「うっさいのはあんたやろ!あんたこそどっか行け!」
ぐっ。
「試合でロクに活躍もでけへんヘボキャッチャーのくせに!」
ぐぬぬ・・・・・・。
「松山君や小暮君みたいにかっこよくないし!」
ぐぬぬぬぬ・・・・・・。
「早く主人公交代しろ!」
それは言うたらあかんやろ!
結構気にしてる事言わんといて!
あかんわ、口で女子に勝つのは不可能や。
女子どものマシンガンのような猛口撃にすっかり心をへし折られた俺は、
その場でひざまづきそうになった。
するとそんな俺の元に、ノックを一通り終えた遠川監督が歩み寄って来て言った。
「おい正野、せっかく応援に来てくれている女子を邪険に扱うものじゃないぞ」
「いや、邪険に扱われているのはむしろ俺の方なんですけど・・・・・・」
「何にしても私達に興味を持ってくれのはありがたい事だ。
例え誰を応援しようと、女子達が居てくれた方が、
お前達も練習に張り合いが出るだろう?」
「はぁ・・・・・・」
そんな遠川監督の言葉に、俺は魂が抜けたような返事を返す。
確かに遠川監督の言うとおり、女子達が練習を見に来てくれるのは、
それが誰目当てであれ、張り合いは出る。
遠川監督のおかげで練習の質も格段にレベルアップしたし、
毎日これ以上ないくらいに充実している。
だが、しかし。
それでも俺には、足りないモノがひとつあった。
それは、マネージャーや。