10 碇が絡むとますます話がややこしくなる説
こいつが絡むとますます話がややこしくなるんとちゃうんか?
と至極不安に思っていると、碇は声高らかにこう言った。
「昌也君が鹿島さんをもてあそぶなんてとんでもない!
昌也君にもてあそばれているのは、この僕なんだから!」
それみろやっぱりややこしゅうなったわい!
「やかましいわ!誰がお前なんかもてあそぶかい!」
俺は声を荒げたが、碇は更に声を荒げてこう返す。
「もてあそんでるじゃないか!
あの宗太とかいう昔の恋人と僕に二股をかけてるし!」
「二股なんかかけてないわい!
そして恋人と書いてピッチャーと読むのはやめろ!」
ああもう、ますます頭が痛くなってきた。
ホンマにこいつが絡むと話がどんどんおかしな方向にいってしまう。
そしてそんな俺達のやりとりを聞いていた小暮が、
まるで犬のウンコを踏んだ靴底を見るような目で俺を見ながらこう言った。
「正野お前、やっぱりそっちの趣味だったのか・・・・・・」
「ちゃうわい!やっぱりって何やねん!」
俺はそう言ったが、碇がそれを制してこう続ける。
「そうだよ!僕と昌也君は心も体も結ばれているんだ!
投手と(テ)捕手としてだけではなく、恋人としても!」
誰か碇を黄泉の国へ連れて行ってください。
俺が心からそう思っていると、
それを聞いた小暮は至って真面目な顔でこう言った。
「そうか、正野と松山はやっぱりそういう関係だったのか。
これを伊予美ちゃんが知ったら、どう思うだろうな」
「なっ⁉お前、言うなよ⁉話が訳のわからん事になるから絶対に言うなよ⁉」
そんな俺の必死の訴えに対する、小暮の答えはこうやった。
「実はもうここに呼んでいる」
そして近くの木の影から伊予美が現れた。




