2 記録はセンターフライ
センターの所でいきなり物凄い竜巻が発生し、
俺の打球がその竜巻に巻き込まれた。
そして打球はそのままはるか上空まで舞い上がり、竜巻が消えた後、
ひょろひょろと力のなく落ちてきた。
センターはグローブを構え、その打球をキャッチ。
それを見た審判が、
「アウトォッ!ゲームセット!」
と声を張り上げた。
え?あれ?アウト?
これで試合終わり?俺の負け?
だって今の完全にホームランやったでしょ?
何なの今の竜巻?
あんなんアリ?
こんな事ってある?
状況を全く飲み込めない俺。
そんな中マウンド上の宗太は
「ぃよっしゃあああっ!」
と声を上げ、全身全霊のガッツポーズを決めている。
そんな宗太の元に、駆け寄る一人の女の子が居た。
俺と宗太の幼なじみで、俺と宗太が片思いをしている小白井伊予美や。
伊予美は目をキラキラ輝かせながら宗太に言った。
「甲子園出場おめでとう!宗太君、メッチャカッコよかったで!」
それに対して宗太は、伊予美の両肩に手を置いてこう返す。
「君が居たからここまで頑張れたんだ。この勝利は、君に捧げるよ」
何をクサいセリフを吐いとんねん!
それは俺が伊予美に言いたかったヤツやないか!
そう俺が憤る中、伊予美は頬を赤く染めて宗太に言った。
「ありがとう。ウチ、甲子園に出場する人が好き!だから宗太君の事が大好き!」
いやああああああっ!
それは俺が言われたかったセリフぅうううううっ!
「伊予美ちゃん!」
「宗太君!」
ヒシッ!
固く抱き合う二人。
そして伊予美は俺の方に振り向き、アッカンベーをしながらこう言った。
「それに比べて昌也君はカッコ悪いね。
ここ一番でヒットを打てなくて、甲子園に出られへん人なんかウチ嫌いや。
サヨウナラ、ウチは宗太君の恋人になるわ」
そそそそんなぁっ⁉
その場にひざまづき、伊予美に手を差し出す俺。
しかし伊予美はそっぽを向き、宗太と腕を組んで遠くへ歩いて行く。
待ってくれ伊予美ちゃん!俺を置いていかんとってくれ!
もう一度俺に、チャンスをくれーっ!
「伊予美ちゃああああん!」
と、いう所で、俺は(・)目を(・)覚ました(・・・・)。
そう、あれは夢やったのや。
・・・・・・心臓に悪い夢やでホンマに。
上半身を起こし、ベッドの上で魂が漏れ出そうなため息をついていると、
窓の外から聞きなれた碇の声が聞こえてきた。
「昌也くーん!迎えに来たよーっ!」
とにかく、さっきの夢を現実にさせんためにも、
俺は甲子園目指して必死に頑張るしかない。
俺の挑戦は、まだはじまったばっかりなんや!
よぉし!やるでぇっ!