1 宗太との勝負
「甲子園に出る人って、カッコええな~」
彼女のその一言が、俺が野球を始めるキッカケやった。
彼女にとっては何気ない一言で、
そんな事はもう覚えてないかも知れんけど、
俺はその言葉をずっと覚えていて、
そんな彼女にカッコいいと思ってもらう為に、
こうして今も野球を続けている。
そんな俺も高校生となり、いよいよ甲子園を狙える年齢になった。
そして今は大阪大会決勝の舞台。
相手は大阪の横綱、大京山高校。
俺の中学時代のチームメイトで、
バッテリーを組んでいた荒藤宗太が所属するチームでもあり、
その宗太が、今マウンドからバッターボックスに立つ俺を見据えている。
試合は最終回の九回裏、得点は四対三で大京山が一点のリード。
ランナー二塁でバッターが俺。
ここで俺がホームランを打てば、逆転サヨナラ勝ち。
そして念願の甲子園出場が決まり、俺は晴れて彼女に告白できる。
そして彼女も甲子園出場を決めた俺の告白を受けてくれるやろう。多分。
そんな状況の中、宗太が第一球を投げた!
真ん中高めのストレート!
俺の一番好きなコース!
俺はその球を渾身のフルスイングで打ち返した!
カッキィーーーン!
よどみのない快音が響き、
俺の放った打球は一直線にセンターバックスクリーンに向かって飛んでいく!
このままいけばホームラン!
逆転サヨナラ勝ちや!
と、思ったその時やった。