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008 竹の棒+イラクサの紐=罠付き棒

 武器を調達したので街を出た。

 受付嬢はアレコレ準備しろと言っていたが、俺には必要ない。

 否、必要であったとしても、準備することができなかった。

 ミスリルナイフの購入で全財産を使って無一文になったからだ。


「マジで何も出てこねぇな」


 俺は今、セントクルスの西門を出て道なりに歩いている。

 舗装された道の上には、魔物はおろか動物すら出てこない。

 そういうものだと教わっていたが不思議なものだ。

 これでは退屈のあまり歩きながら寝てしまいそう。

 余談だが、クリスと街へ入る際に通ったのは南門だ。


「おっ」


 道中で竹を発見した。

 細長い竹で、見つけた瞬間に飛びつく。

 ちょうど細長い竹が欲しいと思っていたところだった。


「ナイフの切れ味を試してみよう」


 腰の(シース)からミスリルナイフを抜く。

 このシースはナイフを買った際に貰ったものだ。


「せいっ!」


 竹の茎を左手で押さえ、右手でナイフを切りつける。


「おお!」


 感動のあまり声が出る。

 竹がスパッと滑らかに切れたのだ。

 このように竹を切るのは中々に難しい。

 ナイフの切れ味をよく物語っていた。


「あとはこの茎をこうして……よし!」


 茎から生える細い枝を根こそぎカットして杖が完成する。

 杖は移動から戦闘まで役に立つ便利なアイテムだ。

 先端を削って尖らせば槍として使うことも出来る。


「ここだな」


 改めて舗装された道を歩くことしばらく。

 脇の茂みに矢印の向いた看板を発見する。

 看板には「この先、シロコダイルの棲息する沼地」と書いていた。


「ここまで丁寧だと拍子抜けだな」


 サバイバルでは全てが手探りだ。

 丁寧に看板が作られていることなどあり得ない。

 むしろ自分で自分用の看板を作るくらいだ。


「先に道具を作っておくか」


 ワニと戦うには道具が必要だ。

 ミスリルナイフの切れ味が凄かろうとそれは変わらない。

 杖こと竹の棒も材料の一つだ。


 俺は矢印と反対側の脇道に侵入した。

 杖で雑草を掻き分けながら真っ直ぐに進んでいく。

 少ししてイラクサを発見した。


 イラクサとは多年生の植物で、高さは約40センチ。

 トゲトゲの茎が特徴的で、その葉には薬用成分が含まれている。

 ショウガと共に熱湯へ放り込めばハーブティーの完成だ。味はそこそこ不味い。


 そんなイラクサだが、今回は葉ではなく茎を使う。

 俺はナイフを使って茎だけをテキパキと回収していった。


「拍子抜けと言っていたが、こういう時は便利なんだよな」


 回収したイラクサを持って舗装された道に戻る。

 それなりに安全が確約されている場所というのはありがたい。

 俺は道の真ん中に腰を下ろし、作業に取りかかった。


 今から作るのはロープだ。

 イラクサの茎で作るロープは大人の人間すらも吊り上げられる。


 作り方は簡単だ。

 まずはナイフでイラクサの茎の皮を剥く。

 表皮をペロロンと剥き、強度の高い繊維を確保した。

 この作業を全てのイラクサで行う。


 次に確保した繊維を()り合わせる。

 この作業は両手で行うが、今回は安全地帯に居るので足も使った。

 靴を脱ぎ、繊維の先端を足の親指に巻き付けて、両手で撚っていく。

 足を使うことにより作業の効率が格段に向上し、サクッと終了した。


「よーし、完成!」


 出来上がったイラクサの紐を竹の棒に取り付ける。

 蔓のようにグルグルと絡ませ、先端は罠結びにしておいた。


 罠結びとは、輪っかを作る結び方のことだ。

 この輪っかは引っ張ることで締まる仕組みになっている。


 今回の輪っかはかなり大きい。

 ワニの口をすっぽり通す必要があるからだ。


 竹の棒とイラクサの紐を合体させて、罠付き棒を手に入れた。

 右手にナイフを持ち、左手に棒を持つ。

 これで準備は整った。


「ナイフよし、道具よし、忘れ物なし、全てよし! 行くぞ!」


 俺は看板の前まで戻り、矢印の方向へ進んだ。

 まだ見ぬシロコダイルとの戦いに、今から興奮している。


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