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040 巨大パンダの脅威

 〈魔王の住み処〉と呼ばれるS級の山から下りてきた新たな敵。

 それは――。


「「「キングベア!」」」


「どう見てもパンダじゃねぇかよ!」


 皆がキングベアと呼ぶ魔物――正真正銘のパンダであった。

 キングオーガと同じく全長3メートル級のパンダ。

 通常のパンダは約2メートルなので、それに比べると遥かに大きい。

 しかしながら見た目はパンダそのものだ。


「パンダ?」


「おいノブナガ、なんだそれは!」


「聞いたことないわね、パンダって」


 どうやらこの世界にはパンダが存在していないらしい。

 説明するのも野暮なので、俺は「気にするな」と流した。


「それであのパン……キングベアは強いのか?」


 イザベラが答えてくれた。


「強いなんてものじゃないわよ。A級なんだから」


 パンダことキングベアはA級らしい。

 S級だったらどうしようかと思ったが、A級なら問題ない気がする。

 なにせ――。


「こちらにはA級のザウスが居るし、焦るほどではなくないか? それにさっきのキングオーガだってB級なんだろ? なら似たようなものさ」


「そんなわけないでしょ!」


 俺は頓珍漢な発言をしてしまったようだ。

 これまたイザベラが教えてくれる。


「A級とB級では強さが雲泥の差よ。クエスト報酬だって一桁変わってくる」


「その通りだ。そして俺は――A級の敵を倒せるほど強くねぇ」


「はぁ!? でもお前、A級なんじゃ……」


「C級以下の雑魚ばかり狩って昇格した雑魚専なんだよ! 恥ずかしいから言わせるんじゃねぇ!」


「ああ……そういう……」


 合点がいった。

 イザベラが前に言っていた「階級と実力は比例しない」という言葉に。

 そして、フリッツの方がザウスより強く見えてならなかったことにも。


 A級にはクエストをこなし続ければ到達できるのだ。

 極端な話、自分の得意なC級クエストを繰り返せばいいのだろう。


「どうするんだ、逃げるのか?」


 フリッツに判断を仰ぐ。


 言っておいてなんだが、逃げ切れるとは思えない。

 キングベアは完全に戦闘モードに入っており、俺達を捉えている。

 今はゆっくりと歩いているが、逃げた瞬間に全速力で追ってくるだろう。

 あの巨躯が全力で走れば、人間の走力ではまず逃げ切れない。

 選択肢は戦うしかない。


「逃げるのは不可能だ。戦おう」


 フリッツも同じ判断を下した。


「扇状に包囲して攻めるぞ!」


「「「了解!」」」


 フリッツPTを敵の正面に据えて、俺達は左右に展開する。


「行くぞ! お前達!」


「「「おう!」」」


 フリッツがPTメンバーに合図を出し、突撃する。

 キングオーガの時と同じ戦い方で挑むつもりだ。

 しかし、今度はあっけなく決着がついた。


「グァオ!」


 キングベアが二足立ちし、右腕を横に薙ぎ払ったのだ。

 それでフリッツPTの前衛3人が同時に吹き飛ばされた。

 続けざまに左の拳が振り下ろされ、中衛が地面に叩きつけられる。

 通常のパンダとは比較にならない圧倒的な戦闘力だ。


「これがA級か」


 たしかにキングオーガとはモノが違う。


「隙ありだぜ! くらいやがれ! ハードストライク!」


 ザウスが上手く懐へ潜り込んだ。

 そして、渾身の右ストレートをキングベアの脇腹に叩き込む。

 3人の女奴隷によって強化された強靱な肉体からなる強烈な一撃だ。

 まさに「ハードパンチャー」の二つ名に相応しい攻撃だったが――。


「うがぁあああああああああああ!」


 ――キングベアには通用しなかった。

 攻撃を仕掛けたザウスの腕が折れたのだ。

 キングベアの皮膚はシロコダイルよりも更に硬い。


「グァオ!」


 ベシッ。

 キングベアの反撃は張り手。

 ザウスは盛大に吹き飛んだ。


「「「ザウス様」」」


 奴隷達は慌ててザウスに駆け寄り、回復魔法を詠唱する。

 瞬く間に俺とイザベラ以外のPTが散った。


(このままだとイザベラも瞬殺だな)


 そうなってからでは遅い、と思った。

 サバイバル生活の基本は観察であり、今は情報が必要だ。

 この巨大パンダがどう動くかをもう少し知っておきたい。


「イザベラ、俺が仕掛けるから背後から隙をつけ」


「分かったわ」


 俺はキングベアの正面に回り込む。

 ゴブイチにリュックを持たせると戦闘開始だ。

 ミスリルナイフを片手に突っ込んでいく。


「グァオ!」


 先制はキングベア。

 左右の腕をでたらめに振り回す。


「かすっただけで致命傷だな、こりゃ」


 かつてツキノワグマと戦った時を思い出す。

 あの時も、一発をもらえば死が確定する状況だった。


「この状況……たまらねぇ」


 死が間近に迫った状況で、俺は興奮していた。

 常人なら足が竦んでしまうところだが、俺はその逆だ。

 脳内物質が大量に分泌され、動きが冴えていく。

 このスリルがあるからこそサバイバルはやめられない。


「まずは挨拶がわりに……そらよ!」


 隙を突いてキングベアの胸元にミスリルナイフを突き立てる。

 だが――ナイフは頑丈な皮膚に阻まれた。刺さらない。

 手がじんじんと痺れた。


「やはりきついか」


「グァオ!」


 キングベアが反撃を行う。

 俺の両肩を掴んで首筋に噛み付こうとしてきた。

 苛立った時にクマが見せる行動と同じだ。

 俺はしゃがんで回避したあと、横に転がって離脱する。


「イザベラ! 今だ! やれ!」


「言われなくても!」


 イザベラは俺の戦闘中に準備を終えていた。

 赤と青の炎を纏わせた鉄の鞭を振るい、キングベアの背中を狙う。

 鞭は激しくしなり、ベチンッと轟音を立てて命中。


「グォ?」


 だが、キングベアには通用しなかった。

 すまし顔で振り向かれると、鞭はガッツリと掴まれた。


「グァオ!」


 キングベアが鞭を引っ張ってイザベラを寄せようとする。

 それを察知したイザベラは鞭から手を離し、寸前のところで危機を回避。

 傷を負わずに済んだものの、イザベラの戦意は完全に喪失していた。


「あの攻撃が通用しないなんて……もうおしまいよ……」


 ペタリとその場にへたりこむイザベラ。


「マジでつえーな、このパンダ」


 フリッツも、ザウスも、イザベラも、もう駄目だ。

 そして俺のミスリルナイフも通用しないときた。


(こいつらを捨てて逃げるか?)


 そんなことが脳裏によぎる。

 ボロボロの3PTを生贄にすれば逃げ切れるだろう。

 ゴブイチをジャックに運ばせて、俺は自分で走ればいい。

 キングオーガは倒しているから報酬だって貰える。

 生き残りがいなければ最優秀賞は消去法で俺に決まりだ。

 賢い選択をするならここは逃げるのが正解。


 しかし――。


「仲間を捨てて生き延びることは出来ねぇよなぁ」


 俺は戦うことを選択した。



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