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033 根掘り葉掘りと訊かれてみた

 自己紹介が終わると移動を開始した。

 PT単位で縦2列の横2列という陣形で進んでいく。

 フリッツとザウスのPTが前を歩き、俺とイザベラのPTが後ろだ。


「ついて来れてるかぁ、F級!」


 ザウスは少し歩くごとにこの発言をする。

 馬鹿にした言い方であり、心配はしていない。

 炎天下のせいで苛立っている様子。


「それにしてもセントクルスの冒険者はなにを考えているのやら……」


 フリッツが呟く。

 こちらも同じで俺をF級だと見下している。

 直接的に何か言うわけではないが、態度がそう物語っていた。

 陰湿な性格なのかもしれない。


 感情を素直に出す分、個人的にはザウスのほうが好印象だ。

 ま、どちらとも仲良くなれるようには思えない。


「階級と実力が比例しないものだけど、それにしても流石にF級は低すぎるよね。ノブナガはどうして選ばれたの? もしかして票の入った冒険者が軒並み辞退して仕方なくって感じ? それとも凄い人の推薦とか? 剣聖あたりの」


 イザベラは純粋に興味を示している。

 自己紹介をする前と全く変わっていない。


「単純に票数で1位だったからだよ」


「F級なのに?」


 俺は「うん」と頷く。


「まぁ、票が入った理由の全てが手腕を評価してのこと、というわけではないけどね。クリスっていう街では名の知れた女が一番人気だったんだけど、しばらく前に街を出たんだ。それで、消去法で俺に入れたって人もそこそこ多いみたい」


「クリスって〈孤高の戦乙女〉のことね。へぇ、セントクルスを出たんだ。ま、セントクルスの周辺は雑魚掃除のクエストしかないから仕方ないかな。やる気のある冒険者にはぬるい環境だし」


 クリスの異名は他所にも轟いているようだ。

 やはり只者ではないのだな、と改めて思う。


「だからってF級を選ぶのは意外ねぇ。ノブナガはどういう実績があるの? 誰かとPTを組んだことはある?」


 根掘り葉掘りと訊かれる。

 インタビューを受けている気分だ。

 シベリアで地元権力者の子供をオオカミから守った時を思い出す。

 あの時はロシア語と英語と日本語の三カ国語で同時に話されて大変だった。


「実績ってクエストのことだよな。俺はシロコダイルの討伐とパープルラビットの捕獲をこなしたよ。特別ボーナス付きの成果でね。どちらもソロ……ていうか、誰ともPTを組んだことがないからね。クランにも入っていないし」


「吹かしもほどほどにしとけよF級!」


 豪快な笑い声と共にそう言ったのはザウスだ。

 こちらに背を向けたまま話に割って入ってくる。


「シロコダイルとパープルラビットといやぁ、どちらもソロ攻略が難しい定番のクエストじゃねぇか。どうせ吹かすならもっと現実味のある奴にしろよ。サラマンダーとかレッドウルフとかよぉ」


「いやぁ、本当なんだけどな」


 苦笑いの俺。


「私は信じるよ」


 イザベラは即答だった。

 顔を見れば本気なのだと分かる。


「へぇ、どうして疑わないんだ?」


 思わず尋ねてしまう。

 ザウスが「お前が尋ねるのかよ」と笑いながら突っ込む。

 俺もそう思った。だが仕方ない。気になった。

 ザウスのように信じないのが普通だ。


「いくらセントクルスの冒険者が低ランクばかりといっても、中にはB級やC級の冒険者もいるからね。それらを差し置いて選ばれたF級なのだから、シロコダイルやパープルラビットをソロ攻略するくらいじゃないと逆に嘘臭くなる。それに……」


「それに?」


「決め手は女の勘よ。貴方からは嘘つきの匂いがしない。そう思っただけ」


「ふっ、なるほど」


 悪くない勘をしている。

 女王の異名は伊達ではない。


「話はそこまでにしてもらおう」


 フリッツが足を止めて右手を軽く挙げる。

 ゼウスが「来た来た」と嬉しそうに呟く。気配が変わった。


「魔物ゴブー!」


 ゴブイチが叫んだ。

 お前も魔物だけどな、と心の中で笑う俺。


 いよいよレイドモンスターと戦う時がやってきた。

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