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018 吊り上げ式の罠を設置してみた

 パープルラビットをどうやって捕獲するか。

 待ち伏せは駄目、かといって寝込みを襲うのも駄目。

 となれば、答えは一つしか無い。


 ――罠だ。

 パープルラビットの進路に罠を仕掛ける。


 そんなことが出来るのかって?

 余裕だ。


「材料はこんなものでいいだろう」


 昼から夕方にかけて、俺は材料集めに勤しんだ。

 街に戻れば数分で手に入る物を、数時間もかけて自然から調達する。


 これにはちゃんとした理由があった。

 自然にある物を使うほうが罠に掛かる可能性が上がるのだ。

 街で売られている物は、自然にはない見た目や匂いをしている。

 その為、警戒心の強い動物にはなかなか通用しない。


「今から罠を作る。ジャック、周辺の警戒をよろしく頼むぞ」


「キュイッ!」


 パープルラビットが寝床へ消えた夕暮れから罠作りを行う。

 森の中は日中でも薄暗いけれど、今はそれに輪を掛けて暗かった。

 素早く作業を済ませなければ夜になる。

 だが、数々の修羅場を潜ってきた俺に不安はなかった。


「よし、いっちょやるか!」


 気合いを入れて作業開始。

 まずは罠の種類だが、今回は吊り上げ式の罠を使う。

 掛かった獲物を吊り上げて動けなくするタイプの罠だ。


 次に罠を仕掛けるエリアについて。

 これについては一つしか候補がないので迷わない。

 パープルラビットが盲腸便(エサ)を隠した場所だ。

 奴は必ずそこへ現れる。


 吊り上げ式の罠の作り方は単純だ。

 よくしなる枝や茎に紐を掛け、紐の先端を罠結びにする。

 罠結びのロープをフックにひっかけて完成だ。

 盲腸便を食おうとした瞬間、フックが外れて吊り上がる。


 この罠において大事なのは、吊り上げに使う枝や茎だ。

 最低条件として、獲物の重さで折れないレベルの頑丈さが求められる。

 加えて、吊り上げ時の勢いを強める為に、よくしなるものが望ましい。

 罠の威力はどれほどしなっていたかで決定する。


「おっ、この茎、思っていた以上にしなるな。助かるぜ」


 今回は現場に自生している植物の細長い茎で対応できた。

 一応、伐採した竹を持ってきていたが、使わずに済んだ。


 しならせた茎に掛ける紐はイラクサから自作した物を使う。

 大人を優に持ち上げられる強度だからパープルラビットも余裕だろう。

 近くに良さそうな蔓が生えているのだが、それには見向きもしなかった。

 ここ一番の場面では、石橋を叩き壊す勢いで念を入れるのが大事なのだ。


 今回は紐の垂らし方にまで配慮した。

 盲腸便の隠し場所である木の枝や幹を這わせたのだ。


「ここまで徹底すれば問題なかろう」


 最後に罠が発動するかを自分の指で試してみる。

 左の人差し指と中指を立たせて、盲腸便に近づけていく。

 そして、便の手前――落ち葉でカモフラージュしたフックに指を当てる。

 次の瞬間、罠が発動した。


「グオッ!」


 思わず変な声が出てしまう。

 罠の威力が想像以上に強かったのだ。

 イラクサの紐より先に俺の指が千切れるかと思った。


「やべぇ威力だぜ……」


 罠結びの輪っかを広げて、フックに引っかける。

 地面に落ちている葉や枝で軽くカモフラージュしておく。


 カモフラージュは「もう少し必要かな?」と思う程度がちょうどいい。

 あまり手を加えすぎると違和感を抱かれるからだ。

 それに人の匂いも付いてしまう。


「これでよし」


 作業が済んだら速やかに撤収だ。

 俺はゆっくりとその場から離れ、右手を挙げる。


「キュイィィン」


 俺の手に気づいたジャックが速やかに戻ってくる。

 そのまますーっと定位置である俺の右肩に着地。


「明日が楽しみだな」


「キュイン!」


 ジャックと仲良く帰路に就く。

 半日も活動したせいで疲労が溜まっていた。


(疲労は問題ないが……)


 歩きながら視線を下に向ける。

 ズボンの一部が妙にふっくらしていた。

 疲労と同等、いや、それ以上に性欲が溜まっている。

 肉体の若返りに伴って、性欲も若返ってしまったのだ。


(若返ったのは嬉しいが、この性欲はきついな)


 10代後半から20代前半の性欲は凄まじい。

 何かしらの手段を以て1日1回は発散したいところだ。


(このクエストが終わったら娼館にでも行くか)


 そういえば、この世界の娼館には行ったことがない。

 前世では、色々な国で娼婦のお世話になったものだ。

 良い思い出が大半だが、中には嫌な思い出もあった。

 安井さんに紹介してもらった店は実に最悪だったぜ。


(いかんいかん、こんなことを考えているとますます……!)


 ズボンの一部が今にもはち切れそうだ。

 来るべき時に備えて今は我慢しろ、と自分に言い聞かせた。

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