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対抗戦、開始! 1

 出場選手の紹介も終わり、ついにスタートのときがやって来た。


 出場総数32。

 スタート地点にはそれなりに広い場所が選ばれたが、32もの人馬が並ぶとなるとそれなりに手狭感がすごい。


 スタートダッシュは勝負の要。

 競馬で言うところの追い足などという概念がない世界だけに、先行逃げ切りを狙う騎手たちが、馬体を押し合いながら最前列にひしめいている。


「ねえ、颯真。こんな後ろで大丈夫なわけ?」


 対して、レリル――もとい、正体不明の謎の仮面の白騎士が騎乗する獣馬(颯真)は、居並ぶ騎馬たちの三馬身ほど後方に陣取っていた。


 領主代行を気遣ってというか、お偉いさんに下手にぶつかり落馬でもさせると後が怖いと思っているのか、颯真たちの近くに寄り付こうとするものはいない。

 その時点で正体などバレバレなわけだが、本人(レリル)が気づいていないので、颯真はわざわざ指摘など(無駄なこと)をしない。


「いいんだよ、ここで。※馬語」


 むしろ、この位置関係が都合がいいと、颯真は前方に集中する馬群を見て、ぶひんとほくそ笑む。


『え~、それではこれより、第33回シービスタ安全祈願奉納の儀を開始しいたします~』


 拡声魔導具(スピーカー)から、呑気なアナウンスが流れた。


 堂々と安全祈願と銘打たれてはいるものの、スタートラインに並ぶ人馬ともどもに鼻息荒く殺気立ち、安全という言葉とは程遠い。

 古来より、平和を願って人柱を捧げる風習はあるそうだが、これもその類かと問い質したいところではある。


 まあ、この例年の対抗戦では、直接騎手を狙わなければ、妨害ありの乱暴なものらしいので、ある意味間違っていないのかもしれない。


「いよいよね~。それで、今日はどんな作戦で行くの? 曲がれないって弱点は克服したんだよね?」


「してない」


 こちらも呑気に語りかけてくるレリルに、颯真は事もなげに返した。


「へ? してないって……どうゆーこと? 謎かけみたいな?」


『見物客の皆様は少し下がって場所を譲ってください~。参加者の選手の皆様は位置についてください~』


 アナウンスのテンションとは正反対に、騎手は怒声、騎馬は嘶きを上げてのヒートアップ。観客も熱気にあてられ、スタート前の広場は興奮の坩堝と化している。


「んな、七面倒臭いことするかよ。レリルはただ俺を信じて()()()()おくだけでいい。なんだっけ? 人馬一体? お互いの信頼関係が大事なんだろ?」


「信頼――そうね! すみませーん、わたし棄権します!」


「あ、てめっ!」


「だってだって! 嫌な予感しかしないんだもん! わたし、棄権する~! するってば、ね~!」


 大声を上げてレリルが馬上から手を振るが、スタート前の熱狂の最中では声が届くわけもなく。

 逆にスタートを控えて大はしゃぎしていると勘違いされ、観客から手を振り返されていた。


「ふ~、よし」


「よし、じゃなくって!」


『では、位置について~』


 いよいよスタート間際。すでに棄権できる段階にもない。

 下手に下馬すると、他の出場馬に誤って蹴り飛ばされる危険すらある。


「覚えてなさいよ~、颯真! 後で酷いんだから~」


 ここまで来たら覚悟を決めるべきだとさすがのレリルも悟ったらしく、仔猿が親猿に掴まるように手綱そっちのけで颯真の馬体へとしがみついた。


『よ~い――』


「――ぶひーん!」(どーん!)


 アナウンスの語尾に被せて、颯真は問答無用で猛ダッシュをかませた。


 前方のスタート付近、馬同士で混み合い、スタートダッシュでごたつく選手たちをボウリングのピンよろしく次々と薙ぎ倒す。


「おっしゃー、まずは大成功ー!」


 見た目は馬でもその正体はれっきとした魔獣である一角獣馬(ユニコーン)。獣馬の馬力に抗えるはずもなく、颯真の前方にたむろしていた10近くの選手がいきなりリタイアし、颯真は一躍トップに躍り出た。


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