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-大阪府 大阪駅-

-大阪府 大阪駅-

10時50分


『日本国政府の発表によると、モスクワ、ロンドン、デリー、北京との通信は途絶、ワシントンDCとベルリンでは詳細は不明ながらも大規模な戦闘が発生し、多数の死傷者が発生しているとのことです。未確認の情報によりますと……』

『避難指示(緊急)が発令されました。以下の対象地域にお住まいの方は、警察官などの指示に従い、速やかに避難してください。大阪市、堺市……』


 駅構内に設置されているデジタルサイネージは、世界規模の巨大災害が迫っていることを伝えていた。

「落ち着いてください! 地下鉄の入口はこちらです! 係員の指示に従ってできるだけ奥へ進んでください!」

 非常呼集の電話を受け取ってからおよそ一時間半。

 駐屯地で説明されたのは、予備自衛官まで動員しての大規模避難計画だった。

 曰く、未確認飛翔体が日本へ向けて接近中。弾道予測の結果、落下地点は東京都近辺である、と。

 念のため、全国の予備自衛官を含めた全ての隊員が各地の駐屯地に召集された。

 そしてつい三十分ほど前に入った情報によると、海上自衛隊の護衛艦が放ったミサイルが目標に命中。しかし完全に破壊することはできず、減速し、コースを変えてさらに地表へ接近。

 再計算の結果、落下地点はここ、大阪府周辺だった。

 危険区域からの避難は時間的に不可能だと判断され、現在は市民を地下施設へ誘導している。


 自分は大阪駅構内の避難補助を担当する部隊に編入されていた。

「三上曹長! 中央口の避難完了しました!」

 割り当てられていた中央口に市民が残っていないことを確認し、班長へ報告する。

「よし、橋本一曹! この二士と一緒に桜橋口の応援に行け!」

「了解! ついてこい!」

 橋本と呼ばれた一等陸曹の後について、人気の無くなった駅を走る。

 桜橋口前のタクシー乗り場には自衛隊車両数台が止まっていた。

「中央口の避難は完了しました。現在、三上曹長以下二名が確認を行っています」

 橋本一曹が報告する。

「よし。中央口をもって大阪駅の避難は完了した。一曹は桜橋交差点へ、そっちの二士は梅田二の交差点を見てきてくれ。最終確認が終了次第、我々も避難を開始する」

「「了解!」」


 一曹と別れ、梅田二の交差点へ向かう。

 近くの学校に通っているので、地図を見る必要は無かった。

 乗り捨てられたタクシーやバスの車内を確認しながら走るが、どこにも人の姿は無い。

 避難計画は順調に進んでいるようだった。

 交差点に到着するが、人の気配は無い。

 あとは戻って報告し、自分も避難するだけ…………

「お兄……ちゃん?」

 車の影から誰かが出てくる。

「……(すみれ)?」

 それは、今朝電話で話していた、妹の菫だった。

「何やってる! 早く避難しろ!」

「待って、わたし、足が……」

「掴まれ!」

 妹を抱きかかえ、地下の入口を目指す。

「なに……あれ……」

 腕の中で菫が空を見上げる。

 つられて空を見上げると、小さな何かが、飛行機雲を引きながら高速で落下してきていた。

 サイレンか、あるいはラッパにも聞こえるような空気を切り裂く不気味な音が響き渡る。

 もう地下へは間に合わない。

「きゃっ」

 近くに止まっていたパトカーの下へ、妹を蹴り入れる。

 すかさず自分もパトカーの下へ潜り込み、妹を抱きかかえた。


 その瞬間、世界から音が消えた。

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