8話 街が灰になる
「お………生ゴミの誕生日で開いた。さーて、ネットサーフィンでもしよっと。エゴサだエゴサ。」
救急車を呼ぶのに使った生ゴミのスマホは、生ゴミの誕生日を入力することで簡単にロックが開いた。
さっきサイレンは聞こえてきてたし、あれはもう病院でお陀仏か手術中だろう。
「えーっと、山下………もう出てるし。」
まぁ、もう自分の手を離れた生ゴミのことはどうでもいい。アレのことは忘れてエゴサーチをする。山、と入力した時点で僕のかつての名前が出てきた。
[山下巽 冤罪][山下巽 死刑][山下巽 残念][高校生惨殺事件 真犯人]
まぁ出てくる出てくる。その殆どが僕の事件が冤罪だったと言うニュースを纏めたサイトばかりだ。
その中にあったまとめサイトの一つにアクセスしてみる。ただニュースを纏めたものではなくにちゃんねるなどの感想まとめもされていた。
『冤罪って言ってもさ、あの不細工だぜ?どうせすぐに本性表すんだからあそこで殺しといて正解だったと思うけど。』
『流石にそれはないだろ………可愛そすぎるぞそれは。』
『ほんとそれな、無実の人間死刑にしといて早めに殺しといて正解とか絶対無いわ、お前が死ねよ』
『おぉ、アレのスレが立ってる!俺あの事件の犯人の弟だけど質問ある?』
『それやりたかったら自分でスレ立てろよ』
『場違い。どっか行け。』
『分かった。後でまたスレ立てるわ。一応一つ言っとくけど、アレはマジで死んだほうがいいやつだから。お前らも同情なんてしないほうがいいぜ!』
『なんだったの?釣り?』
『釣りじゃね?』
『釣りだろ』
「…………成る程。そういえばいつの間にかいなくなってたけど、見つけ出して殺してやろうか?」
エゴサは一旦切り上げ。時計を見ると今は午前11時59分。この時間なら、『狂気と深淵の光明』を超える火力を出せる。
「こんな町、滅べばいいんだよ。どいつもこいつも、僕がどれだけ苦しんだかも考えずにのうのうと生きやがって。死ね。全員死ね。一欠片の魂も残してやらんからな?」
正午になって真南に登った太陽が太陽光で魔力にさらに力を与える。月光で強化される『狂気と深淵の光明』とは違い、太陽で直接魔弾を強化する技。その力はタルパの使える魔弾の中でも最大の威力を誇る。
この街に住む誰の命もタルパは気にしなかった。ただ単純に、この忌まわしい町を滅ぼすことだけを考えていた。だから、躊躇なくこの無慈悲なる魔弾を放つことができたのだ。
「…………『暴者に落つる陽』」
2028年10月16日、間宮町という一つの町が、生活するすべての住人と共に消失した。その原因はいまだに分かっていない。
日本を良く思わないアジアの某国家の陰謀とも、某宗教テロ組織が起こした大規模テロだとも言われているが、誰もこの事件の真相にたどり着くものはいないだろう。その下手人がたった一人の少女であるということには。
その後。タルパはバスに乗って(当然のことだが無賃乗車だ)かつて響華に教えてもらった彼女の家に行って彼女の父親の後をつけようとしていた。理由は響華の墓のありかを知る為だ。
自分の死んだ日は11年前の今日であり、この日は彼女の月命日でもある。響華の父親は彼女のことを溺愛していたので、毎日とは行かずとも月命日くらいなら墓参りに行っていると思ったからだ。
それに、もし既に墓参りを終わらせていたとしても記憶を探れば場所はわかる。どちらにせよ彼女の墓のありかが分かるのだから、タルパが屋敷に行かない理由はなかった。
「…………バス来ないな。あんな騒ぎ起こしたから運行中止になったのか………?」
しかし、物事はそううまくは行かないようだ。バスが来ないせいで徒歩での移動を余儀なくされた。
仕方なく歩く。交通機関は自分には使えないようだからまぁ仕方がない。
そうしてしばらく歩いていると、
「ずいぶんと派手にやったな。アレは確実にこの国の社会の面倒ごとになるぞ?」
「…………いたのね、セネカルトさん。」
「当たり前だ。君が目的を果たせたとして、私がいなければどうやって帰るつもりだったのだ?」
「あ」
「だから、私は最初からあの手紙に化けてずっと様子を伺っていたのだよ。」
「…………自分の力なら、アレらはもう簡単に蹂躙できる。そう理解できたからもうトラウマは消えたよ。完全にね。」
「成る程。その割には暗い顔だが………復讐に虚しさでも感じたか?」
「別に。思ったよりもスッキリしなかったし、あの子にバレたら縁を切られるかもと思っただけさ。後者はかなり深刻な問題だけどね。」
「ふむ。まぁトラウマは払拭できたようだからよしとしよう。だが、まだ君にはやることがあるようだからな。これを渡しておく。」
「何これ?」
渡されたのは黄色い石だ。魔力を感じるし、淡く光っている。一体これはなんなのだろうか?
「これを使えば私のもとに帰ってこれる。私がいなくても次元移動が可能になるというわけだ。使い捨てだから無くしたり無駄に使ったりはするなよ?」
「オッケー。ありがとセネカルトさん。僕なんかにこんなによくしてくれて、感謝感激だよ。」
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「さて、ここかぁ。思ったよりも豪勢なお墓だなぁ。愛の重い奴だよ、あのおじさんは。」
当初の目的を果たし、タルパは葛城響華の墓の前に着いた。目の前にあるのは墓というよりも小さめの墓地というようなものだった。巨大なそれは掃除が行き届いているし、使われている素材も高級品だ。
「ねぇ響華ちゃん。僕、人を殺しちゃったよ。僕はただ、君と一緒に幸せになりたかっただけなのに、どうしてこんなことになっちゃったんだろうね?」
置いてあった線香に火を点け挿して拝む。ついでと言わんばかりに愚痴る。
「君は、僕が本当に人殺しになったって知ったら僕のこと嫌いになる?もしそうだったら僕はなんのためにここまで苦労することになったんだろうね。僕の人生、本当に滑稽なモノに思えてきちゃうよ。」
「…………必ず、君に会いに行くから。君を迎えに行くから。その時に、お互い腹を割って話そう。愛でも、愚痴でも。」
「そろそろ戻るよ。新しい君のいる世界に。またいつかね、響華ちゃん。しばらくの間、さよならだ。」
そこまでいうと、タルパは魔石を起動させた。光がタルパを包み、視界を塞ぐ。視界が戻った時、タルパはあのベットの上にいた。元いた場所に戻ってきたようだった。
「戻ったか。治安警察二番隊は相変わらず暇だったそうだぞ?君が仕事の心配をする必要はない。」
「…………セネカルトさん、僕をもっと強くしてくれ。あの子を二度と失わないように。」
「…………なら、明日からは私のとっくに付き合ってもらおうか。」




