10話 対人戦闘
というわけで、色々あって治安警察隊に入ることを決めたタルパ。シグマに連れられて手続きを終え、ライセンスの発行を待つ。そんな彼女はシグマにあるところへと連れていかれた。
「で、ここどこ?」
「ここは二番隊隊長の執務室だ。君が治安警察隊に入る時は、この隊長率いる部隊に配属されるだろうからな。最優先で挨拶してもらおうと思ったわけだ。」
「なるほどね。」
「よし、それじゃ入るぞ。」
コンコンコン、と三回扉をノックしてシグマが扉を開ける。中に入ると、
「キャーァァァ!?へ、へんたぁーーーい!」
「ぐぶうぉあ!?」
扉をあけて中に入ると、その中で若い女が着替えをしていた。服は脱いだのか床に散らばり、女は下着だけのあられもない姿だ。
僕達に気づくと大声で叫び、近くにあったでかい箱を投げつけてきた。それは僕の前にいたシグマの頭部に直撃した。シグマの体が宙に浮き、ビターン!と床に叩きつけられた。なんだかとても痛そうだ。
「………大丈夫?首折れてない?」
「な、何よいきなり入ってきて!ノックぐらいしなさいよ!」
「いましただろうが!3回もノックしただろうが!それでも気付かねぇとかテメェ何を聞いてたんだよ聾人かテメェは!?」
「えーとシグマさん、この人が僕が入る予定の部隊の隊長でいいんだよね?」
「………?誰よアンタ」
「くっそ、サロメこのやろう…!せっかく二番隊に入れる逸材を連れて来てやったてのによ…!テメェはこの仕打ちかよ………」
「え?え?この子が?こんな小さい子がウチに入れるほどの逸材?え?………嘘でしょー?」
きょとん、とした、懐疑的な顔を浮かべる二番隊隊長。サロメという名らしい。いつの間に着替えたのかシグマと色違いの同じ服を着ている。キツそうな胸の辺りがなんだかとてもエロい。…おっと、いけないいけない。
「………そう思うなら試してみればいいだろ。どうせ二番隊に入らなくちゃ一番隊だ、どちらにせよ実力は大事だからな。」
「………あなたがそこまで言うならー、やってみてもいいわ。お嬢ちゃんー。あなたの力ー、私に見せてもらうわよー?修錬場までついてきてくれるー?」
「オッケー、勿論いいよ。馬鹿に絡まれたせいでちょっと今苛々してるんだよね。それに、舐められっぱなしは嫌だからね。ま、チャチャっと終わらせよう。」
「へぇ………言うじゃないのー。それはそれは、楽しみねー。」
「んじゃ、俺しばらく首の痛みで動けんという事になるから、あとは二人でよろしくー。」
こうして案内が変わり、二番隊隊長に連れられて修錬場に行った。どうやらさっきまでいた執務室から少し遠いようでかなり歩いた。未だに着いていないのでまだ歩いている。
「そういえば、入都審査する所と治安警察隊の仕事場が繋がってるんだね。これなら仕事の行き来が楽で良いんじゃない?」
「そうでもないわよー?どうせここにいることはほとんど無いしー。まー私達二番隊はー、一番隊だけじゃ対処しきれなかったりー、どうしても実力が必要になる時しか出動しないんだよねー。だから行き来が楽とか関係ないんだけどー。」
「ふーん。二番隊は実力派エリートというわけ。じゃあ、隊長のおねーさんはそんな実力者を束ねてるってわけだ。相当強いんだろうね。」
「当たり前じゃなーい。………一応、今少しだけ見せてあげようかしらー?」
そう言って、隊長は普段は体内に収まっている自身の魔力を少しだけ解放した。吹き出る魔力の圧に押し負け、少し下がらされる。
「へぇ…赤黒いオーラ。相当修羅場をくぐってきたんだね。濃度も量も、村にいたみんなとは大違いだ。」
「へー?あなた魔力に色がついて見えるのねー?色で何か違いがあるのー?」
「ん…あ、着いたみたいだよ。その話はこっちが終わった後でね。」
別に魔力を可視化しているわけではないが、別に今訂正することではないから気にしない。
歩きながら話をしているうちに、修錬場にようやく着いた。重々しい扉をあけて中に入ると、大量の平に固められた砂が埋め尽くす空間があった。
「ここが治安警察隊の修練場。普段からここが使われる時は死人がたまに出るくらいキツイ修錬が課されるけど、戦争するのが役目の騎士団との合同訓練になるともっときつくなるんだー。ほらー、よーく見たら、分かるでしょー?」
その空間の中心にサロメが移動し、地面を叩く。よく見ると、この砂の大地は所々赤く染まっている。血を浴びたのだろうか。
「それじゃ、ようやっとついたことだしー、早速始めようかー?」
腰に下げられた諸刃の長刀を抜き、構える。さっきまでの気の抜けた感じが消え、殺気が溢れ出す。
それに触発され、タルパも刀を抜く。体を突き刺すような殺気。自分も負けじと放つ。
「へぇ………それ、魂具なのねー。それじゃーあ…、あなたの力、見せてもらうわよ。」
始まった。そう言うなりいきなりこちらに向かってダッシュし間合いを詰め、右手に持った剣をタルパに突き刺そうとする。なんとか反応してそれを弾く。
刀を振り上げた反動で体が後ろに逸れたので、その反りを利用して体を翻し、距離をとる。目の前の先では相手は追撃のための魔弾の用意をしていた。このまま使わせるわけにはいかない。タルパは剣に魔力を纏わせ、強化してから妨害を図った。
「………ふぅん、けっこうやるじゃなーい。まさか魔弾が打ち消されるなんてねー。」
「飛ばされる前なら、打ち消すのは簡単さ。」
剣の間合いまで、魔力で強化した足で超高速で近づき、生成途中の魔弾を巻き込む形で剣を振るう。そうすれば、大振りゆえにサロメ本体には簡単に躱されてしまうが、反撃の用意を阻止することができる。
「ずっとそのやり方で来られたらー、鬱陶しいことこの上ないわねー。けどその戦法、相手が魔弾をたくさん使う時しか有効じゃないんじゃなーいの?」
そう言って、またしても魔弾を作り出す。さっきまでは一度に多くを使っていたため一つ一つのコントロールが曖昧だったが、一つだけならそれのコントロールだけに集中することができる。魔弾巻き込み作戦は単発の魔弾には通用しなかった。
事実、今も魔弾も本体も捉えきれずに勢力の拡大を許してしまっている。ついにはタルパの体のふた回り以上も大きくなった。
「それに、力も貯められるから、魔弾の質が良くなるわけだー。さーて、こいつをくらいなー!魔弾『豪山の大噴火』!」
放たれる魔弾。まともに当たれば確実に灰になる業火球。速度も凄まじく、距離も近く、反応する間も無く火球はタルパに直撃し、豪大な爆音を鳴らした。




