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天涯孤独から一転した俺は  作者: 双葉
第三章イギリス編 ーその手を掴むためにー
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幕間 ラスト·ピース

ちょっと短め構成です。






 暗いビルの中に集まる黒いケープを着た集団は、ある人物を中心に膝を着いて頭を下げている。昼間とは言え両サイドに別の建物がある為、陽の光がほとんど入らず異質な空間を作り出していた。


 人数は7人でその内の1人が、残りのメンバーに話をかけていく。リーダーと思わしき人物の後ろには、十字架が掲げられていて、さらに不気味さを漂わせている。黒ずくめの連中は薄明るく照らすロウソクの中で、ただただ声を出さずに話を聞いている。



「今指示を出されている者よ、状況を説明しなさい」


「は、はい……ターゲットはもう間もなく潰れるかと」


「割と時間が掛かっているようですね」


「申し訳ございません、邪魔が何度も入ってしまいまして」


「邪魔?」



 リーダーは頭に疑問符を浮かべる、説明をしている部下はスマホを取り出して、それをリーダーへ手渡して見せる。その画面に写った人物は『日向』の姿だった、いつ撮られたか分からないものだが、間違いなくそこに写っているのは日向。


 その画像を見たリーダーは、口の端を釣り上がらせてニヤッと微笑む、話を聞いている限りではターゲットは日向では無く、別の人間だと言うことだが、任務を妨害する障害は取り除かなければならない。



「なるほど……ではこの男もデリートしてください」


「ですが、コイツの周りにはかなり厄介な人間が居ます」


「それでもやりなさい、わかっていますか? 貴女は任務を失敗すると、底辺の仲間入りになってしまいますよ?」


「い……嫌です、絶対に任務を成功させてみせます」



 部下は焦りを感じているのか、良い方法が思い付かずこれまでも失敗を重ねている、今回ここに集められたのも、成功させる為の作戦を考える必要があったからだ、リーダーは1人十字架に向かって祈りを捧げる、それを見ている部下達も同じようなポーズで、口を揃えて祈りの言葉を発した。






 ―――罪人に神の怒りを





 しばらく無言が続いた後、リーダーは部下達に向かって手を差し出す。それを掴み立ち上がる、一見すれば信者の様に見える風貌、しかし中身は黒く死神の使い魔じみた連中。ここに居る連中は自分達の生まれや境遇が似ていたり、またはコケにされてきた者が集い出来やがった組織、その筆頭となるリーダーは依頼があれば部下に指示を出し、ターゲットとなる人物を容赦なく叩きのめす。


 莫大な支援金はリーダーが別で行動し、手に入れた物らしいが詳細は不明。部下達はその指示に従い任務を受ける、この組織は先に前払いし逃げられないようにしていて、任務を放棄し逃げ出す奴は容赦無く殺される。



「あの……司祭様は?」


「司祭様はご自分の事でお忙しいようです」


「そうですか」


「安心してください、必ず貴女のお家は神の力によって回復します」



 ニッコリと表情を浮かべているリーダー、しかしその笑顔は普通のそれとは違い、部下達を恐怖に導いているようにも見える。部下達はまだリーダーの上司である司祭とは会った事がない、リーダーが話すには司祭はとある企業のトップで、リーダーが困っていた時代の時に助けてもらったそうだ。


 そして初めてリーダーが行った任務が、暗殺だったそうだがそれも本当か嘘か不明、ただ言える事はリーダーの目がずっと据わっている。だからこそ下手な事をすれば、人物達が殺されるかもしれない、ちゃんと指示通り動かないとダメだ……と恐怖に何とか勝ちながら残ったのが、今この場にいるメンバーだ。



「有り難きお言葉です」


「とにかく、もう手段を選んで居ては時間がありません。エーリカ·ヴァンデミールとルーナ·ヴィクトリアを、上手く拉致しなさい」


「わ、私に出来るでしょうか」


「その為に彼らも連れて行くのです、最後の希望(ラストピース)は貴女に掛かっていますよ?」


「はい、必ず……」



 その言葉を口にした後、リーダー以外のメンバーはビルから消え去った。リーダーは1人祭壇に上がり、スマホを取り出してどこかへ連絡を始めた。



「はい。大丈夫です、あの小娘なら立派に働いています、失敗したらその時は―――」






 ―――悲劇のヒロインになってもらいます





 相手は司祭だろうか、リーダーは丁寧に電話対応をしている。壁に貼り付けられた写真にはナイフが刺さっていて分かりずらいが、その横に名前が書かれていた。



『イリーナ』と。




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