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天涯孤独から一転した俺は  作者: 双葉
第三章イギリス編 ーその手を掴むためにー
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24 劣等感




 エーリカが俺を呼び出した理由は、モーガンさんにイジメられている事を話さない訳についてだった。エーリカがイジメられ始めたのは、入学してから少し経ったくらいの時で、あの学園では定期的に実力テストを実施して、個々の生徒らの勉力を把握し、それに見合ったカリキュラムを組む制度が存在している。


 その都度学園のメインホールにランキングとして掲載され、他の生徒との実力差を見せつける。これは生徒個人に競争本能を持ってもらうのが目的らしいのだが、その狙いは大きく外れてしまい、最優秀者に対して強い嫉妬心や僻みが生まれてしまった。


 そしてその最優秀者に選ばれているのがエーリカだ、彼女は小さな頃から記憶力が高く、分析力も高いとされていて、小学生の時点で大学の勉強をしていたりと、テレビでも取り上げられる程だった。誰もが『天才』『100年に1人の才女』と呼んでいて、エーリカの事を多くの人間が褒め称えていた。


 しかし、この学園に入学し実力テストで最優秀者に選ばれた日には、周りの生徒達はエーリカを指さしながら『絶対にズルをした』『理事長の娘だから優遇されたんだ』と酷く反感を買われてしまった。当時のエーリカは無視を決めていたのだが、その態度にイラついた人間が3人存在した、クレア·マーチスとサレエン銀行の娘、そしてハレイ建築の娘。


 この3人は最初の頃こそエーリカに、直接的な攻撃はしていなかったものの、最優秀者に選ばれてからは地味なイタズラから変化し、エーリカが使う椅子やテーブルを隠したり、上履きを焼却炉に捨てられていたりと、度を越し始めていた。その時はシスターオリヴィアにルーナが相談し、試験的に上履きを利用しない方向で話は終わった、だがこれも逆効果になってしまった、あの3人は『理事長の力を使った』『やっぱり実力テストも不正したはず』と非難を浴びせた。


 余りにも酷い言い様にエーリカも言い返したが、クレア·マーチスはここぞとばかりにある言葉を言い放つ、『理事長が運営している育成機関を、貴女はご存知?』もちろん知らないわけが無い、むしろそんな事がどうしたと言うのか、今ここで話す内容では無いとエーリカは強く言っていた。


 だが、クレアはエーリカを脅す様な言葉を吐いた。『その育成機関に莫大な出資をしたのは、うちのマーチス重工何ですよ?』まだその時は上手く言葉の意図を理解出来なかった、だからエーリカはそいつらの会話なんか無視して、振り切ってその場から去ろうとした……しかし、次の言葉を聞いてからエーリカは無視出来なくなった。





 ―――その出資をやめたらどうなるかしら?




 エーリカは『多分嘘だ』と心の中で呟いた、でも本当の可能性もある。もし出資や支援が止まればモーガンさんに迷惑が掛かる、そう思ってしまうと何も出来なくなってしまった。エーリカがモーガンさんにイジメに関して言えないのは、自分のせいで父親に迷惑を掛けたくないからだ、嘘だとしても何かされると思うと怖くなった。


 それ以来、余計な事をしないように部屋に引きこもり始めた、元々はアニメやゲームの趣味なんか無かったが、部屋で居る時間が長くなり、気がつけば学園で友達を作るより、ゲームやアニメ等でネット上のコミュニケーションを取るほうに夢中になった。




「嘘か本当かわからない何かに、脅されてる訳か」



 夕方。エーリカと2人で話し合った後俺は部屋に戻りベッドの上に居た、天井を眺めながらエーリカから聞いた話を思い出し色々と整理していく。正直な所を言えば嫉妬が影響していると思う、誰もが抱く優等生に対しての劣等感は、個人によって激しさはバラバラだ。


 何が引き金になるかわからない部分もあり、解決する方法なんて有りはしない。実力差を嫌うから相手を傷付ける、これは焔や椿の時とまるで似ている、少しケースが違うが根本は一緒なんだろう。だが、既にあの3人はエーリカに対して暴力行為を実行した、脅迫をされているのなら尚更だ、ちゃんと報いを受けてもらうしかない。



「その為にはやっぱり、モーガンさんに話を通すしかないんだよな」


「日向様、お呼びでしょうか」


「青田、少し頼みたい事があるんだ」



 俺はこの部屋に戻る前に、青田に『屋敷の用事が終わったら部屋に来てくれ』と告げていた。もちろん頼みたい事とは、


「図書委員の生徒の事を調べて欲しい、または名簿があるなら見せてくれ」


「承知致しました、明日にでもご用意致します」


「すまないな、頼む」



 青田は浅く頭を下げてから部屋を出て行った、図書委員の生徒は何故3人と居たのか、それも気になるし何かあるに違いない。今はこれ以上考えても答えを導く事はできない、俺はベッドから起き上がり窓の外を眺める、瑠璃色の空には星がいくつか見え始めていた。


 この問題をさっさと片付けて、俺にとって楽しい学園生活と、イリーナとルリについて調べを進めたい。こんな所で躓いてる場合じゃない、まだまだやらなきゃいけないことは沢山ある、時間を無駄にしない為にも上手くこの問題を解決しないとな。




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