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天涯孤独から一転した俺は  作者: 双葉
第三章イギリス編 ーその手を掴むためにー
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15 リセット





 ついに学園登校日がやって来た、新しい制服に袖を通して新しい鞄を持って部屋を出て行く、皆はもう準備が出来ていて玄関で待っている。イギリスの授業に少しでも付いていけるように、久しぶりに部屋の中から出ずに教科書を黙読したり、ルーナやエーリカから要点を聞いてそれらをノートに書いてみたりと、昔のようにただひたすらにシャーペンを走らせていた。


 あの頃とは違って別の焦りと戦っていた、ちゃんとイギリスの勉強を理解出来るのか、友達が作れるか、問題無く卒業出来るのか。ルリをもし連れて帰れる状態ならば、卒業の事までは考えなくても良いんだけど、せっかくまた学生生活を満喫できるなら、卒業するまでイギリスに居たいと考えてる。


 日本に戻ってもまた慌ただしい毎日になるだろうし、もっと言えば国籍を取り直さないとダメだ、そうなるとイギリスでこのままルリ達と生活をし、平和な毎日を送っても俺としてはアリだと思ってる。モーガンさんの育成機関とやらに就職したり、自分で何かを興すのも一つの手だ。会社経営とまではいかなくても、小さなお店で皆とワイワイしながら人生を送りたいとも思う。



「ちょっと現実逃避し過ぎか」



 我ながら頭を使う作業のやり過ぎか、未来の事まで考え始めるとはな、黄島辺りに笑われてしまうかも。でも出来ることならそんな人生を歩みたい、復讐とかそんなの抜きにした人生を歩みたい、いや、その未来に向かう為に今は必死になるしかないんだ。


 可能性は無限に広がっている、それを掴む為には今目の前にあるものを終わらせる事、そしてその第一歩が今日から学園へ通う事だ。俺なら出来る、何にも不安を感じる必要なんて無い、今までだって出来たことじゃないか、どんなに辛い思いをしても乗り越えられたじゃないか、今回も普段通りやればいいんだから。



「ひなにぃ遅いよー」


「悪い、ちょっと手間取ってな」


「日向君」


「モーガンさん、何でしょうか」



 考え事をしているとモーガンさんに話し掛けられた、いつもの私服とは違ってスーツのようだ、今日はどこかへ出掛けるみたいだ。



「エーリカを頼むよ」


「パパ!?」


「わかりました」


「ひなにぃ!?」



 エーリカは何か勘違いしてるようだが無視だ、アタフタしてるエーリカを見ると、さっきまでのちょっと暗い考えなんて吹き飛んだ、見ていて楽しいし一緒に居ても飽きない。それにエーリカの制服姿は初めて見た、思った事は口にすべきだろうか、悩むくらいならちゃんと伝えてあげた方が良いだろうな。



「エーリカ」


「え、な、何か??」


「制服似合っているじゃないか、ちょっとスカート丈短いけど」


「んん〜〜〜!?」


 スカートの裾をグイッと下へ引っ張るエーリカだが、そういう仕様になっているのか、竹の長さは変わらないし顔は真っ赤だ。というかそろそろツッコミを入れるべきなんだろうか、今この場には俺、エーリカ、ルーナ、モーガンさん、青田……そして、



「お前らなんだその恰好」


「私達も日向様の護衛役として〜」


「学園に通う事になりました! ブイ!」


「ブイ……じゃねぇよ、メイド業はどうするんだよ」



 赤川と黄島までアリスシアの制服に身を包んでいた、確かに学生に見えなくも無いが、それで一年生は無理があるだろう。というか青田も何か女教師見たいな恰好をしてるし、コイツらは一体何を考えてるんだ、本当に思考が全く読めないから困る。



「青田……お前まで……」


「息子が他の女に誑かされないか心配で……と、シア奥様が仰られましたので、日向様のクラスに新人教師として配属されました」


「コイツらは?」


「赤川さんと黄島さんは2年生です」



 いつの間にそんな事になってんだよ、てかシアさんの考えがおかしいだろ、他の女って何だよ教室に居るのはクラスメイトだろ。赤川と黄島はノリノリだし、青田はシアさんに気に入られてるのか知らんが、身内で固めてたら色々と怪しいだろうが。


 日本人4人ともグルだってバレちまうだろうに……



「お姉さんが、手取り足取り教えてあーげーる」


「黄島年齢考えろ」


「グサッッッッ!!?」


「き、黄島さんしっかりしてください!!」



 俺の言葉がナイフの様に鋭い一言だったようだ、一瞬にして地面にぶっ倒れてピクピクしてる、イギリスに来てからハメを外しすぎだったからな、たまには鞭くらい打ってもバチは当たらないだろ。



「あははっ! ひなにぃの周りって面白い人ばっかりだねっ」


「お前も相当愉快な奴だけどな」


「フゴォッッッッ!?」


「ちょ……エーリカ様制服汚れやがりますから……」



 冷静に対処するルーナを見ていると、大変な奴と一緒に生活をしてるんだなって、少しだけ同情してしまうし気持ちがわかる、世話を焼く側が世話を焼かれてるとは笑えてくる。赤川と黄島は2年生、青田は俺達のクラスを担当する教師、ルーナは中等部3年。


 まぁ何かあれば動きやすい面子だが、割と面倒な事が起きやすい確率もグッと上昇しちゃったわけか、でもそれくらいじゃないと、刺激のある青春は味わえないだろうな。日本の学園ではちゃんとした生活を送れなかった、だから今回はそれのリベンジになる、楽しい楽しい学園ライフを送ってみようじゃないか。



「よし、モーガンさん」


「うん、何だい?」


「行ってきます」


「あぁ、行ってきなさい」



 自分の為に、これからの為に、俺は仲間を引き連れて歩き出す。この生活をこなしながらルリと再び出会う為に、真実を突き止めてそいつをぶっ飛ばす為に。




 ―――もう誰も失わない為にな





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