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天涯孤独から一転した俺は  作者: 双葉
第一章 ー終わりの始まりー
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3 巣窟






 屋敷で食事を済ませた後、誰よりも早く学園へ向かう事にした。食堂でトーストを口にしている時もアイツらはずっと会話を楽しんでいた、いや、楽しむフリをしていた。会話こそ今日から通う学園での生活、その後の活動と言った普通な会話だが、隠しきれない『次期当主は渡さない』オーラが少しずつ漏れていた。


 この屋敷には二組の家族と養子の俺、そして老いた現当主が生活をしている。後は日に日に訪れる親戚や従兄弟がやって来たりと騒がしい空間だ、もちろん俺は空閑くがの血は流れていない為、当主争いには参加出来ない。と言うか俺自身興味が無い、金と権力を欲しているヤツらと一緒にされたくない。


 何故俺は空閑の血が流れていないのか、簡単な話だが俺は『腹違い』の人間だ。死んだ父の愛人の子が俺だ、物心が付く前に、死んだ母の元へ来たのが始まりだそうだ。そして、死んだ母こそが空閑の娘だった訳だが、当主が選んだ男では無く、自ら探した男と結婚し、命令に従わなかった母は、本家から格下げされ、分家の中でも下の方へ追いやられた。


 総帥は『本家へ戻りたければ、日向を『天才』にしてみせろ』と言われ、あんな醜い所業に出た。母は遊び人で夜だけは父と家を出ていた、小学生だった俺を放置して。


 今も考えればはらわたが煮えくり返る、あんな両親ゴミの元へやってきた事が、俺を手放した愛人が許せない。



日向ひなた様」


「何だ?」



 メルリ·ヴァーミリオン、彼女はイギリスにある超名門のメイド育成施設の最優秀者であり、俺を救ってくれた恩人だ。当主がその育成施設に出資している事もあり、彼女には才能があると言い、日本へ連れ帰ってきた。その後専属メイドとして当主に付いていたが、俺の世話をする為に当主から切り替わった。


 最初は当主も『あの空閑家の恥娘の子を養子になんかできるか』と強く拒絶していたが、ルリは俺を何故か高く買っていて『彼には才能があります』と言い放った。出会ってまともに会話をしていない俺に彼女は、才能があると言った。そんな風に言われたのは生まれて初めてだった、そこからは必死になって難しい勉強をし、運動をし、習い事をこなして中学では学内ランキング一位の成績を手に入れた。


 当主はそれを認め、ルリは俺の専属メイドになった。そしていつからか、俺は死んだ両親ゴミに関係する人間全てに、復讐する事を心から決めていた。もちろん一人では情報はおろか、人間関係なんて微塵もわからない、そこで彼女には全てを告白し、協力してもらう事にした。




「今日から通われる『聖心学園』には、日本有数の名家や企業のご息女ご子息が通われます」


「つまり、空閑と関係する人間も多くいる訳か」



 リムジンの後部座席で向かい合って話をする、空閑と関係する人物は、数え切れないほど居るだろう、その中でも分家や本家、そして死んだ両親ゴミと一番関係のある奴を俺は復讐対象にしている。俺をバカにし誰も助けなかったアイツらを絶対に許さない、必ず絶望の縁に立たせ突き落としてやる。



「日向様、私は貴方の言う事なら何でも従います。貴方の目標を達成する為なら、何でも」


「あはは、ありがとうルリ。俺は必ず空閑を潰してやる、君は救ってくれた恩人だ、こんなクソ見たいな屋敷を消したあとは一緒にどこかへ行こう」


「身に余るお言葉です」



 ペコリと頭を下げるルリ、復讐する事を止めず、むしろ自ら協力してくれる彼女の考えはわからない。だがそれでもいい、今は根こそぎアイツらの存在をぶち壊すだけなんだから。それまでは学園生活を楽しみながら、猫を被っていい顔でもしていよう。



 リムジンを走らせること30分、学園の正門に着くと、ルリは先に降りて俺が出てくるのを待っている。身なりを整えた後、少し腰を浮かせて車外へ出た。目だけを動かして右へ左へと視線を泳がす、金に物言わせてるヤツらばかりで反吐が出る。親の金と親の権力で何一つ自分の力で戦うつもりのない、ただの『お人形』達。


 俺は養子だ、立派な生活なんかしたことが無かった。出てくるご飯は残飯か食パン、これが嫉妬だと言われたらそうかもしれない。だがそうしたのも空閑の力が強すぎたせいだ、空閑の権力が強いあまりに、俺をこんな風に変えてしまった。



「日向様、入学式は一時間後です。先に教室へ向かいましょう」


「あぁ、そうだな。ルリ」


「はい、何でもお申し付け下さい」


「俺のクラスに空閑の関係している奴がいるか、調べてくれ。俺も探りを入れてみる」


「承知致しました日向様」



 彼女はポケットから携帯を取り出して、他のメイドに連絡を入れる。今日から始まる生活を楽しませてもらう、その為にはまず『友達』を作らなければならない。


 それも空閑の名前が出れば、勝手に寄り付いてくるだろう、それだけ影響力が高いのだ。空閑に媚を売れば見返りは何十倍もある、つまり"形だけの友達"を作ろうと周りは動くわけだ。



「さて、屋敷の連中が来る前にさっさとクラスへ向かうか」


「はい、参りましょう」



 連絡を終えたルリが半歩後ろから付いてくる、メイドや執事が一人居るのは珍しく無い、特にこの学園に関しては、保護者代わりに授業中以外は常に居る。



「さぁ、始めよう。終わらせるための復讐を」





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