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天涯孤独から一転した俺は  作者: 双葉
第二章 ―イギリスからの来訪者―
30/99

2 喧騒

月曜日ですね、今週もよろしくお願いします。土日は以前から言っていますが、基本的にお休みなのでよろしくお願いします。




 メイドになると決心したその日から、椿はルリの下で見習いとして働き始めた。もちろん学園も生徒として登校するが、恰好はメイド服のままだ、本人は嫌がっていたが『やるなら全力で』と、ルリの押しが強いのに負けてしまい、学園でもメイド服で行く事になった。最初は『浮気』の事でザワついたが、椿の恰好を見るなりクラスは静まり返った。


 予想より効果があった事に、俺自身驚きを隠せないが、結果的に嫌な方向にならなかっただけマシか。授業中も至る所から視線を集め、椿は何やらモジモジしていたが、それも放課後になれば慣れていた。元々モデルをやっていただけはある、仕事で着るのと日常で着るのとは訳が違うだろうからな。


 椿は今までモデルの仕事をしていたが、あの事件以来全くオファーも無く、時間が出来たことを理由に、メイド業に集中し始めた。焔もせっかく元に戻った仕事を全て辞め、今は赤川と黄島の手伝いをしている。椿はわからないが、それぞれにやりたい事ができるのはいい事だ。


 そんな生活にも慣れてきた頃、椿は俺の部屋に来ると、一通の白い便箋を持ってきた、もちろん宛先は『空閑椿』と書かれてある。それを何故俺に持ってきたのかわからない、手渡されたので裏面を見てみると、差出人の名前が書かれてある。




「『雨宮あまみや·ビルシェタイン·イリーナ』」


「ビルシェタイン家の息女よ、空閑家と深い関わりがあるの」


「雨宮の成分はどこなんだ?」


「確か、お母様が日本人でお父様がイギリス人。雨宮家はビルシェタイン家の傘下で、今はイギリスに本拠地を敷いてるとかなんとか」


「なるほどな、で? 中身は見たのか?」


「見なくても何となくわかるわよ……開けるけど」



 あの椿が苦い顔をしている、そんなにこの差出人が嫌なのか? 便箋を荒々しく開封し、一枚の紙を取り出して椿はジッと見つめる。なんだか眉毛が釣り上がっている気がする、それに手が震えていた。


 読み終えたのか、その紙を雑に扱いながら俺に手渡してきた、一体何が書かれているんだろうか。内容は、『ハーイ、椿元気? 明日から日本に行く事になったから、よろしくー! あ、噂を聞いたのだけど、貴女ダメイドになったんだってー? 受けるー! 会うのが楽しみだわ!』と、書かれていた。


 典型的な外国人と言うか、椿をオモチャにしてると言うか、イラッとするのはわかる。ビルシェタイン家か、聞いた事が無い名前だが、空閑と関わりがあるなら話をしてみたいものだ。




「このイリーナとか言うのが、明日日本に来るみたいだが?」


「最悪よ……あんなチビ野郎と再開するだなんて……」


「何が最悪なんだ」


「この女は空閑を『潰す』のが目的よ、深い関わりってのはライバル企業だからなのよ」


「空閑を潰す? ……あ、あははははっっっ!」


「はぁ!? アンタ何笑ってんのよ!」



 そうかそうか、俺以外にも空閑を潰したい奴が居るのか、これを笑わずにしてどうするんだ。だが俺とは潰す目的がまるで違うな、向こうは企業として潰したいみたいだ。空閑は世界シェアもトップに位置し、どこの企業も空閑に買収されたり、グループに参入したりと巨大な組織だ。


 それにビビらずに立ち向かうとは、本当に畏れ入る。尚更イリーナとやらに会ってみたい、どんな奴なのか凄く気になる。すると、椿は俺を睨みながら、




「アンタ、今会ってみたい……とか思ったでしょ」


「あぁ、そうだな」


「やめておきなさい、アンタも名前は空閑よ? 下手に近づいたら噛みつかれる」


「そうか、それは困ったな……」


「そうよ、だからやめときなさい。ろくな事にならないわ」





 ―――それを聞いたら余計に会いたくなったよ





 俺の発言に『馬鹿でしょ、痛い目見なさい』と吐き捨てながら、壁に掛けていたモップを手にして部屋を出て行った。ビルシェタイン家はイギリスの何なのか、空閑と関わる理由がライバル企業だからなのか、それ以外にも何か密接な関係があるならそれを知りたい。


 長年ここに居るルリなら、何か知っているのでは無いか? そう思うと俺はスマホを取り出し、すぐに呼び出せるボタンを押す。数秒としないうちに部屋にルリがやってきた、手にはバケツと雑巾を持ったままだった。




「お呼びでしょうか」


「悪い。ルリはビルシェタイン家を知っているか?」



 椿が残していった手紙を渡しながら話す、ルリは受け取ると中身を確認する。それを表情を変えずに、目だけを動かし読み終えると返してきた。その後ルリは近くにあった椅子に座り、こちらを向いて、




「少しだけお時間をください、日向様」


「あぁ、構わない。話せ」



 ビルシェタイン家と空閑家の事をルリは知っている、その事を知れば俺はまた成長できる、そして内容次第ではイリーナに会わなければならない。目的が違っていても、目指すべき場所は同じだ、潰すのなら勢力が少しでも強い奴を引き入れたい。





 ―――ビルシェタインは公爵こうしゃく家です





 

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