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天涯孤独から一転した俺は  作者: 双葉
番外編 天独転!!
27/99

ほむらちゃんの恋愛劇場 EXTRAモード





 私は今、メイド室にあるソファーでうつ伏せになり、先程発言した事を反省しています。あんなお嬢様らしくない発言をし、その場の空気を一瞬にして凍り付かせた私は、空閑の娘として最悪な事をしてしまいました。もし相手が本当にお兄様だったら、間違いなくドン引きされていますし、嫌われて距離を取られる事間違いなしです。


 どうして私はたかが練習で緊張しているのか、相手は同じ性別なのに顔を真っ赤にしているのか、正直、訳がわかりません。このままでは全てが台無しになってしまいます、せっかく付き合ってもらっているのに、赤川さんや黄島さんに失礼過ぎます。もちろん私は至って真面目にしています、でもいざ始まると上手くいきません、どうすれば良いのでしょうか。




「焔お嬢様、私達はいつまでもお付き合いしますから、落ち込まないでください」


「赤川さん……」


「そうそう! 何度も何度も練習すれば、きっと上手くいきますから!」


「黄島さん……!」



 お2人は笑顔で私に手を差し出してきます、その手を掴まない理由はありませんが、今はどうしても立ち直れそうに……とため息を吐いた瞬間でした、メイド室の扉が開き誰かが帰ってきました。




「お、青田お疲れ様ー」


「お疲れ様です黄島さん、赤川さん。そこでうつ伏せになっているのは、焔お嬢様でしたか」


「あ、青田さん……」



 私は起き上がり、挨拶をする。青田さんは私が元気を無くしているのに気が付き、何があったのかを、赤川さん達が代わりに話してくれました。話の内容を理解すると、青田さんは少し考える動作をします、赤川さんと黄島さんも一緒に悩んでくれていて、私はと言うと……ため息を吐くばかりで何も思い付きません。


 しばらく悩む事一時間後、青田さんが口を開きました。




「もういっその事、日向様に当たって砕ければよいのでは?」


「青田ぁ……砕けちゃダメでしょ」


「なら、メイド長に助言を頂くとか」


「まぁ……確かにメイド長は、日向様と常に一緒だし……」


「る、ルリさんに聞くだなんて……私には無理です!」



 考えても見てください、ルリさんはお兄様を屋敷に連れてこられた本人。親同然のようにお兄様を可愛がり、時々見せる視線は慈愛に満ちています。もはや、お兄様のお母様と言っても過言ではありません、そんな人を相手に『お兄様に恋している』とか言える訳がありません!


 ルリさんは大人で美人でクールで、女としての最強武器であるあの胸が大きくて、隙のない立ち振る舞いで…………挙げればキリがないくらいに完璧女性。そんな方なら色々と経験はありそうですが、やはり聞くことはできないです。




「ですが、私共にも限界が……」


「青田、貴女が持ってる機械かなんかでさ、ほら日向様洗脳できない?」


「我が主になんて事させるつもりですか……黄島さんはもう少し、よく考えて発言してください」



 はぁ、確かにお兄様を洗脳すれば、この恋も100パーセント叶うのでしょう。でもお兄様にそんな事したくないですし、それで叶ったとしても嬉しくないと思います。ちゃんと想いを伝えて、しっかりとした返事をお兄様から聞きたい。


 と、私は青田さんと黄島さんの会話に、少し引っかかる事がありました。黄島さんは青田さんに『洗脳できない?』と質問しました、そしてその問いに対して青田さんは『我が主になんて事をさせるつもり』と言いました、それってつまり……もしかして、洗脳自体はできるって訳ですよね?




「あの青田さん」


「はい焔お嬢様」


「洗脳はできるのですか?」


「ほら黄島さんのせいで……」


「わ、私?」


「出来るか出来ないのか答えてください!」



 思わず大きな声で言ってしまいました、3人ともビックリしたのか、身体を大きく揺らし、青田さんは『は、はい。その、出来なくは無いです』と慌てながら答えてくれました。そう、出来ない訳じゃないと言ったのです、ならその洗脳を上手く利用すれば、私はもしかしたら。


 でもでも迷ってしまいます、それが本当に正解なのか、それとも間違っているのか。恋愛初心者である私が、いきなりチートを使って、絶対に成功させようとしている事が正解なのか。頭の中で天使の私と悪魔の私が戦っています、激しい乱戦を繰り広げています、勝ったのは―――






 ―――私を洗脳してくだひゃいッッッッッ!!!!





 もう叫び声に近い声量で、青田さんに勢い良く頭を下げ、後半噛んでしまい恥ずかしいですが、頭の中で見事勝利したのは悪魔の私でした。もちろん3人はポカーンとしています、私だってワケわからなくなっています、自分でも何言ってるんだろうと思ってます。


 それでもお兄様の事を愛してしまった、結末がどうなろうと、必ずこの思いだけは伝えたい。だからこそ私を洗脳してもらって、緊張を無くせば余裕でいけるはずです。待っていてください、お兄様!!!



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