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天涯孤独から一転した俺は  作者: 双葉
第一章 ー終わりの始まりー
21/99

19 損失





 翌朝、空閑の屋敷では騒動が起きた。椿、焔の両親がいつものように、新聞を見ていた時のことだった。一面にはデカデカと『モデル空閑椿、熱愛か』『暁グループ御曹司を捨てた!』などと、企業を揺るがす内容ばかりが掲載されていた。もちろん俺達が撮影した捏造写真も載っていて、姉妹の両親は開いた口が塞がらないで居た、この情報はすぐに総帥の耳に入り、屋敷に居る人間全員を食堂へ招集をかけれた。


 全員が揃うと、すぐに椿は『これは私ではありません!』と強く反論、だが良くできた写真はどっからどう見ても椿の後ろ姿、そして見知らぬ浮気役の俺の後ろ姿。仲良く手を繋ぎ歩いている姿は、付き合っているようにしか見えない。いくら反論をしてもこの場に居る人間は、椿の言葉を信じようとはしなかった、総帥はしばらく黙っていたが、強く目を見開いて話し始める。




「これは空閑グループ全体を揺るがす事態、あってはならないことだ」


「お爺様、信じてください! 私は昌磨しょうまさんだけしか愛していません!」


「ではこの写真の人物は誰だ?」


「それは…………」



 まるで処刑台に上がっている椿を見ている気分だ、テレビでの言及、雑誌の特集。どれも椿を潰すには破壊力がある、言い訳をすればするほど総帥の機嫌を悪くし、自分の立場を危うくしていくだけだ。両親達も上手く総帥を落ち着かせようと動くが、どんな言葉を掛けても焼け石に水。


 そして何より暁グループは『空閑グループとは一切手を組まない』とハッキリと断言し、椿と付き合っていた昌磨は、浮気をされた事がよほどショックだったのか、顔も見たくないと呆気なく振られた。昨夜のうちに焔に持たせた隠しマイクが、今朝の通話を鮮明に録音されていたのを聞いて知っていた。


 完全に空閑グループが暁グループを裏切った形になり、軌道修正をするにはかなりの時間が必要となる。だがそんな事今はどうでもいい、俺がしたいのはそれよりも重要な『椿への罰』を実行したい。空閑の顔面に泥を塗り、さらには他社を侮辱した行動に移った椿の今後が知りたい。ま、全ては俺達が仕組んだ罠なんだが、これも仕方がない事だ、全ては『空閑』が悪い。




「どうして信じてくれないの!?」


「椿! 総帥になんて口を聞いているの!」


「だって私は何にもしてない! こんな夜にこんな場所行った記憶が無いんだもの!」


「では証拠を見せるがよい」


「し……証拠」




 ある訳が無い、そしてあったとしても否定される。この撮影した日は、ルリが椿の専属メイドに休暇を与え、そして両親達も屋敷に居ない日。椿は赤川と共に行動していた為、その日何をしていたか実証ができない。慌てて椿はスマホを弄るが、その日やり取りしていた日付の内容なども残っていない、何故ならば赤川と行動していた際、スマホが入った鞄を赤川に預けていた。


 椿は普段から、スマホを見られないようにするセキリュティをしっかりとやっていなかった、こちらとしては嬉しい誤算だった。つまり、どう足掻こうと証拠なんて無いし誰も弁護出来やしない。立ち尽くしたまま俯く椿、総帥はキツい目をしたまま黙っている。




「誰かに……誰かにハメられたのよ!」


「誰にハメられたと言うのだ?」


「……こいつ、コイツよ!! アンタが仕組んだんでしょ虫けらッッ!!」



 ついに俺を指さして訴えてきた、確かに仕組んだのも俺だし実行したのも俺だ。だが残念だったな、怒り狂った人間の感情はそう簡単にコントロールはできない。



「心外ですね、そもそもどうやってそれを可能にするんですか?」


「悪知恵でも働かせたんでしょ!?」


「もう良い!! 椿とその両親には罰を実行する」



 アハハハハハハハハハハハハッッッッ!!! もう何を言っても聞いちゃくれない、総帥は自分の面子を保ちたいがばかりで、他のことなんか頭に入ってこない。これで当主争いから脱落したのは決まった、あとはどんな罰を与えるのかだ。生温い罰を与えるような人では無いだろう、企業は助け合いながら成長していくのが形、しかしその理念を壊してしまったんだ、甘い言葉なんざ吐かないだろう。


 少し沈黙の時間が流れる、そして―――




「椿とその両親は屋敷から永久追放、空閑としての名前も返納せよ」


「そんな!? お待ちください総帥!!」


「以上を持って終わりにする、3人は出ていけぇ!!!」



 迫力のある言葉を吐き捨てながら、広間から立ち去った総帥。何もかも終わったと絶望する両親、椿は床に膝から崩れ落ち顔面蒼白。他の住人も退室し、その場に残ったのは俺達とメイド、全てを失った椿とその両親。


 椿は立ち上がると真っ先に俺の元へ走ってくる、そして胸ぐらを掴みながら、




「アンタが……アンタがやったんでしょッッッッ!?」


「言い掛かりはよしてくださいよ椿お姉様」


「しらばっくれないでよッ! どうせアンタも当主の座欲しさにこんな事をしたんでしょ!?」


「…………無様だな」


「な……なんですって」



 俺は胸ぐらを掴む椿の手を払い除け、隠していた感情を強く出していく。色々と我慢してきた付けを、ここで支払うことにしよう。コイツらのような人間は誰かの為に動くわけが無い、自分勝手で自己中心的にしか動けないコイツらに、



 ―――慈悲なんていらない




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