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天涯孤独から一転した俺は  作者: 双葉
第一章 ー終わりの始まりー
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15 二つの影




 赤川達は屋敷に寄る前に青田の場所へ向かい、鍵を複製しコピーキーを手にして俺達の所へやって来た。青田は日頃から色々持ち歩いているらしいが、鍵を複製する機械を持っていたとは思わなかった。正直『機械を弄る趣味があるならできるかも?』程度にしか考えてなかった、ちょっとした賭けだったが、上手くいったのならそれでいい。


 とにかく鍵が手に入った、これで椿達の部屋に侵入する事が出来る。俺が探しているファイルもそこにある筈だ、それさえ見つければ椿を完封できるかもしれん。だがまだ足りない、俺を虫けら扱いしたんだからな、もっともっと何か見返さないと気持ちが晴れない。




「お前達は現場へ戻れ、後から指示を出す。それまで椿の監視を続けろ」


「承知致しました!」



 俺とルリは屋敷に戻り、椿達の部屋に向かう、刻みたての鍵を握りしめ復讐への一歩を踏み出す。さぁ、ここからだ、アイツの泣き顔や絶望した顔を見させてもらう。俺は思わず静かに笑う、それを横目でルリが見てくる。彼女は至って普通の表情だ、共感してるのか分からないがそれでもいい。


 そして扉の前にやってきた、鍵を差し込み回すと。






 ―――ガチャ





 何の引っ掛かりもなくすんなり解除された、俺は一度ルリを見てから中へ入った。中は女の子らしい部屋……とは少し程遠く、本棚やクローゼットにテーブル、そしてベッドが2つ。ぬいぐるみの一つくらいあってもいいんじゃないか? と思ってしまう、今時の女の子はこんな感じなんだろうか。


 手分けしてファイルを探し始める、いくら高性能でも細かい所まではわからない。この部屋にある事は間違いないようだが、何処に隠したんだ? 本棚を探しても見つからない、ベッドの下にもクローゼットにも無い。数分間探し続けたがファイルはどこにも無い、もう一度同じ場所を探すがやはり無い。




「無いか」


「クローゼットにもございません」


「困ったな……」



 少し探し疲れた俺は、椿のベッドに座り込む。使っているベッドは俺と同じタイプの物、そこそこ柔らかいスプリングベッドだが、違和感を覚えた。普段使っているベッドにしては、ちょっと沈み過ぎている気がする。ここに住み始めてから知った事だが、一年に一回はベッド越し交換するタイミングがある。


 もしスプリングや板が壊れたりすれば交換をする、毎日メイド達が部屋を掃除する時に確認したりもする。つまりこのベッドは変えてからまだ4ヶ月程、そしてもし壊れたりしていればメイドが気付くはずだ。




「ルリ、この部屋はいつも誰が掃除してるんだ?」


「椿お嬢様の専属メイドです」


「なるほどな」


「どうかされましたか?」


「あのメイドと椿は手を組んでる」



 ルリはあまりピンと来ていないようだ、俺が座って気がつくレベルに壊れてるベッドを、気が付かないメイドなんてまず居ないだろう。何年椿のメイドをやってるか知らないがプロなのは確かだ、というかこれは壊れてる訳じゃない。椿が意図的にスプリングの一部を取り外しているとしたら、この生地の中にファイルを隠している可能性だって考えられる。


 俺は一度自分の部屋に戻り、自分のベッドに座ってみる。体重を預けても沈み込む深さは浅い、ルリにも座らせてみる。その後また椿達の部屋に戻り、交代でベッドに座ってみると、



「これは……」


「わかったか?」


「はい、沈み方が不自然です」


「ルリ、この生地に付いているチャックを開けろ」


「承知致しました」



 ベッドによっては、通気を良くする為のチャックが付いている。それが両サイドに1つずつ、その内の沈み過ぎる方を開いていく。最初に見えるのは無数の綿とスプリング、そして怪しい場所に手を突っ込むと、あるはずの場所にスプリングがいくつか無い、その代わりに引っ張り出て来たのは。


 書斎にある筈の『企業関連ファイル12』だった、どうやら持ち去った人間は椿で正解のようだ。



「ビンゴ」


「お見事です日向様」


「それはまだ中身を確認してからだな」



 俺はファイルを開いて中身を確認していく、あの『アカツキ』とメモされていた名前を探していく。素早く目を動かして無ければ次へ、それを繰り返していくと、最後の建設関係項目の一番上に、探していた名前と企業名を発見した。


 企業名は『暁都市建設』そして社長名は、




「名前は『暁昌磨あかつきしょうま』」


「暁都市建設、聞いたことがあります」


「俺も少しだが耳にしたことがある、この大都市の半分は暁の建築物らしいな」


「今は世界にも発展させています、今は息子である昌磨様が社長を引き継ぎ、お父上は会長に就いておられます」



 そうか、椿が権力を欲しがる理由はここにあるのかもしれん。そいつの事が好きでたまらないのなら、自分の手元に置いておきたいだろうし、もし椿が当主になれば暁としても都合がいい。お互いにメリットしか生まれない状況なら、よっぽどのことが無い限り離れる事は無い。


 だが、どちらかが『裏切る行動』をすればどうなるか。まだ少しだけ材料が足りない、暁を巻き込みたくはないが仕方あるまい、関わったそいつが悪いのだからな。




「ルリ、今からスターズホテルへ向かう」


「承知致しました。車を回します」



 ファイルを一度元に戻し、俺はルリが用意した車に乗り込む。すると、丁度青田から連絡が入った、椿達の撮影が終わり楽屋へ戻る所らしいが、椿だけ楽屋とは反対側の裏口へ向かったらしい。青田は裏口が見える場所に移動し、高性能カメラで椿の様子を撮影する。


 屋敷から持ち出したパソコンの画面には、リアルタイムでその様子が見る事ができる。裏口の陰に入り1人でスマホを触る椿、誰かに連絡をしている様にも見える。すると、




「ほぉ」


「日向様?」



 つい口に出してしまいルリが反応してしまった、運転をしている彼女はこの画面を見る事ができない。だから俺はそのままを伝える事にした、『椿と暁を確認した』と。暁は裏口に車を回し、降りてくると椿を抱きしめていた、何かを話しているが、焔はまだ椿に小型マイクを忍ばせていないようだ。


 だがそんな事はどうでもいい、アイツらの関係はしっかりと確認できた。後は……



「青田」


『はい』


「撤収だ、一つ面白い事を思いついた」


『承知致しました、撤収を宣言致します』



 思いついたやり方で奈落へ突き落とすだけだ。




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