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天涯孤独から一転した俺は  作者: 双葉
第一章 ー終わりの始まりー
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14 居場所




 メインコンピューター室。この部屋は屋敷の外を監視する為に作られた部屋、そして書斎にある物を管理する部屋でもある。入室できる人間は、メイドの中でも序列が上位の者と、屋敷の当主である総帥のみ。


 ルリはメイド長だからカードキーを持っている、だがこの部屋を利用する事は滅多に無いらしい。このメインコンピューターには、空閑に関するデータもあるが、ルリの権限では開くことが出来ない。閲覧できるのはたった一人、当主のみとなっている。空閑のデータがあれば、俺の両親と関わっていた人間を割り出すことも早い、でも閲覧制限があるのなら今は大人しく、目の前の任務を遂行するしか無い。


 4畳より少し広いくらいの部屋、灯りも薄暗く照らしていて、モニターの光が強いくらいだ。ルリはキーボードを慣れた手つきで弾いていく、書斎から消えた12番目のファイルを誰が持ち出したのか……いや、もう誰が持ち出したかわかっている、俺はただ確証を得たいだけ。それさえわかれば後は真実に向かって走るだけ、まだ俺を無能だとかほざく奴をひねり潰したい、見返してやりたい。




「日向様」


「どうだ?」


「場所がわかりました」


「どこだ!」



 俺はルリが見ている画面に顔を寄せる、屋敷を上から見た断面図の左端に、赤いマークが表示され点滅している。俺達が居る部屋から階段を上がって、すぐ左の部屋を示していた。


 そうか、やはり貴様だったか。俺は確証を得る事が出来た、でも一つ思い出した事がある。この部屋に来る前、ルリの説明によれば『屋敷内では効果が無い』と言っていたはず、でも今表示されているのは屋敷内だ。




「さっき屋敷内では使えない、とか言っていなかったか?」


「そうですが、私は"設定上"とも申し上げました」


「つまり設定を変えれば、屋敷内でも使えるのか」


「はい。ですが外から中へ切り替えたので、今は中でしか使えません」



 このシステムを上手く扱えば、もっと面白くなりそうだ。今はまだ特に思いつく様な案は無い、とにかくファイルの居場所はわかった。俺は隠す所は別かと思っていたが、勘違いだったようだ、椿は自分の部屋にファイルを隠し持っている。これで『アカツキ』が何なのか誰なのか、知る事ができる。


 後は部屋の鍵をどうにかしなければならない、あの部屋だけは屋敷にあるマスターキーで開かない。焔はいつも椿が帰宅するまで中に入れず、客間で時間を潰しているようだ。鍵は椿かお付のメイドが持ってる2本のみ、焔か黄島に頼んで盗み出すしかないか。




「場所はわかった、部屋に戻ろう。新たな指示を出す」


「承知致しました」


「ルリ、もしあの部屋の扉を壊したらどうなる?」


「警報機が作動致します」



 一瞬壊せば早いとか考えたが、当たり前か。警報機の電源を落とすと、警備会社に自動的に通報されたりするかもしれないし、今は鍵を盗む事だけに専念するしかないようだ。


 俺達はメインコンピューター室を出る、この長い廊下を歩くのもあとどれくらいなのか、早くこんな屋敷から出たい。でも空閑を消滅させるまでは我慢するしかない、終わらせるまではまだ、耐えなければならない。俺が味わってきた苦痛を、同じかまたはそれ以上の痛みを味合わせるまでは……



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 部屋に戻ってから30分、いよいよ撮影がスタート。モデルの2人は『仲良し』を演じながら、カメラマンの要望に答えてポーズを決めていく。黄島が持っていた化粧鞄を楽屋に置いてあるおかげで、今は誰も居ない映像がパソコンに映し出されていた。


 俺は黄島に電話をする、今なら誰も居ない上に椿の私物は化粧台に残されたままだ。その中に部屋の鍵があれば複製するか、そのまま持ち去ることが出来る。ホテルから屋敷までは距離があるか……やはり複製するのが早いかもしれない。



『あ、お疲れ様ですチーフ!』


「黄島か? 楽屋は空っぽだ、椿の鞄の中に部屋の鍵があるはずだそれを盗め」


『わかりました! 一度会社に戻りまーす!』



 ツー、ツー、ツー。



「なんだ、今の」


「黄島さんなりの演技です」


「下手か……」



 電話相手がバレないようにしたのはいいが、チーフってなんだチーフって。その後、黄島は椿の鞄から部屋の鍵を回収し、ホテル前に赤川が運転する車に乗り込み、一度屋敷へ戻ってくる事になった。青田は楽屋を映すカメラを見たり、焔が身につけている小型カメラを通して動きをチェック。


 俺とルリは鍵を持ってくる2人を出迎える為、メインホールへ向かおうとしていた時だった。階段を上がってくる足音、女にしては足音が大きく力強い。だが俺には関係ない、誰であろうと邪魔はさせない。


 お構い無しに階段のある角へ差し掛かった時、『もう一つの兄弟』の片割れと鉢合わせた。




「おや、引きこもり君じゃないか」


「忍お兄様でしたか」


「まだ君のような下等生物が居た事にビックリだよ」



 椿や焔の従兄弟、空閑忍くがしのぶ。当主の座を狙う男で、総帥の中で株価上昇中のいけ好かない野郎だ。椿とは違い卑怯な手を使ったりはしないが、20歳で空閑グループの仲間入りを果たした社長でもある。そして何より女大好きの気持ち悪い奴だ、こいつには弟も居るが弟の方がもっと酷い。


 忍はまだ紳士的な部分があるが、弟はナンパしまくる男として最低な奴。




「忍様、日向様にその様な侮辱は許しません」


「メルリ、君は美しい……」


「行こうルリ」



 俺はルリの手を掴み歩き出す、




「待ちなよ、僕は貴様が何をしてるのかわかってるんだ」



 思わず立ち止まる、だが振り返ったりはしない。そして忍がハッタリを言っていたとしても、俺が空閑を壊そうとしている事を知っていたとしても、脅しのつもりなら俺には通じない。



「だから、何ですか? 忍お兄様」






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