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天涯孤独から一転した俺は  作者: 双葉
第一章 ー終わりの始まりー
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12 隠密行動




 決行日、俺とルリを除くメンバーは既に屋敷を出て椿をマークし始める。ほむらは予定通り姉妹でのモデル撮影をする為、椿と共に現場へ向かい、青田、黄島、赤川の3人はその2人が出る時間から少しずらして尾行を開始した。


 焔には予め隠しカメラとデジカメ、小さいバッジ型マイクを手渡してある。そこまで用意した理由は、焔から昨日聞いた椿のスケジュールにあった。ここしばらく椿は夜に帰宅する事が多く、焔と同じ入り時間であっても必ず帰りは別になっていて、先に帰るように毎度伝えられていた。


 他に仕事が入っているのかと、その時は焔も疑うこと無くすんなり聞き入れていた。しかし、ある日の楽屋で誰かと親密そうに電話をしている椿を見つけた焔、最初は学園の友達か何かかと思ったがある言葉を耳にした、それは、『早く会いたい、愛してる』と、甘い言葉だった。


 そこから先は、廊下を立ち聞きしていた所をスタッフに見られてはいけないと考え、すぐにその場から立ち去った。その日以来椿のスケジュールが気になってしまい、メイドが油断をしているうちにメモ帳を覗き込んだ。書かれているのは入り時間と現場の名前、帰宅時間……では無く『アカツキ』とカタカナで書かれた名前だった。


 もちろんそれが電話相手の名前とは限らない、だがどの日の最後には必ず『アカツキ』と言う名前が記されている、『早く会いたい』『愛してる』そして『アカツキ』これだけ揃ってしまえば疑わない方がおかしい。だがこれだけでは証拠が不十分だ、そこで今回は色々な装備を焔に持たせて現場へ行かせた。


 バッジにはマイクと別に発信機も搭載していて、半径20キロの範囲ならばどこに居てもすぐにわかる。青田は日頃から趣味でこんな物騒な物を生み出している、今回はそれが役に立ちそうだ。俺とルリは屋敷の部屋でノートパソコンを開き、それぞれの位置や状況を逐一受信出来るようにスタンバイしている。




「聞こえるか焔、声は出さなくていい物音で伝えろ」



 車で移動中の焔のとなりには椿がもちろん居る、それも隠しカメラで繊細に映っている。移動中の椿はスマホを弄りながら時よりため息を吐いている、自分でも悪趣味だとは思うがこれも復讐の為だ。


 トントン、とわざとマイクを指で弾く焔。送受信は正常に行われている事がわかった、俺は青田に通信を切り替え正確に位置を把握出来ているか確認をする。




「青田、2人の車はどこに向かっている?」


『こちら青田、車はスターズホテルの駐車場へ入りました』



 今回の撮影は夕方まで行う為、ホテルに衣装や撮影スタッフが集まる手筈になっている。ちなみにスターズホテルはこの大都市の中でも一番高級なホテルで、ビルの高さも並では無い。厳重な警備や良質な対応などで、各国で名のある人物も日本に来る度に利用されている。


 そんなホテルにも空閑は出資している、今やどこに行っても空閑が出資した企業がそこらじゅうに広がっている。正直目眩がしそうでならないが、空閑を滅ぼすなら内側から根絶やしにしなければキリがない、たった少数だが初めにこの作戦を成功させなければならない。




「よし、黄島、準備はできたか?」


『はい! バッチリ変装完了でありまーす!』



 元気な声がヘッドホンに響き渡る。黄島はコスプレ趣味も有りながらメイクも得意、そんな彼女は椿を担当するメイクスタッフとして紛れ込む。本来担当するスタッフは別に居るが、焔が椿の声真似で電話をして、今回だけは担当を外れてもらった。


 目の前で特殊メイクをしている姿を見た時は別人にしか見えなかった、声までは変えられなかったが、喋り方やイントネーションを少し変えるだけでも全然違っていた。だが焔は姿こそ変えられないが、声や演技で迫力さや雰囲気をガラッと変えてしまう所が凄い。


 これでいて『無能』と言われているのが理解できない、俺から見ても原石で磨けば宝石に早変わりする連中ばかり。赤川はイラストレーターだが、活躍するには場面が違うので青田のサポートとして動かしている。


 そうこうしている内に車は駐車場に止まり、2人が車から降りてきた。週刊誌やら報道陣に囲まれる2人だが、やはりカメラは椿へ向いている。青田のスーパーカメラ君一号とやらのおかげで、黄島の持つメイクケースに仕込んだカメラが上手く仕事をしている。だがこれは手ぶれ補正が無いのか、見続けていると酔いそうだ、後で青田に言わなければならない。




『こちら青田、2人はホテルに入りました』


「わかった、お前達はそのまま続けろ。最終的な判断は任せる」


『承知致しました』



 俺は席を立ち上がる、俺には俺のやる事がある。それは『アカツキ』と言う名前の人物は誰なのか、椿とは恋仲な関係なのか。生憎椿と焔の部屋は鍵がかけられている、もし開いていたとしてもそこにわざわざ答えを残さないだろう。


 どうせ椿の事だ、自分と釣り合いのある人物としか関係を築いたりしないはず。そこで俺は数ある企業の中に『アカツキ』に繋がる何かが無いか、ネットを使って調べようって訳だ。



「ルリ」


「何なりと」


「もう一台パソコンを用意してくれ、アカツキとやらを調べる」


「承知致しました。私もお手伝い致します」


「頼む」



 ルリは一度、パソコンを手配する為に部屋から退室し、俺はこの屋敷にある書斎へ向かう事にした。あそこには誰でも閲覧できる『企業関連ファイル』が置いてある、総帥の意向で『各企業の名前や業績を知り、己を磨け』等と脳筋見たいな事を言い、学生である俺達にも暇があるなら読めと言われている。




「椿……あの時の借りは返させてもらうからな」



 パソコンを手にして戻ってきたルリを部屋に待たせ、俺は地下にある書斎へ歩き出した。

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