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天涯孤独から一転した俺は  作者: 双葉
第一章 ー終わりの始まりー
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11 制限




 意思表明と覚悟を決めてから一日が経った朝、土曜日の休日で俺は椿に関する資料を手に取り、一日の行動範囲などを調べていた。ルリや他のメイド達にも調査して貰っているが、やはりガードが固く少し悩んでいた。椿の専属メイドにルリが聞きに行ったが、メイド長であったとしても教えてくれなかった、しつこく聞けば椿に報告されたりして色々ややこしくなる。


 俺から聞き出すことはまず無理だ、それこそすぐに椿へ報告し何かしらちょっかいを出してくる。そこで姉に一番接近できるほむらを解き放った、仕事のスケジュールも焔になら話すかもしれない、さらに言えば焔の仕事を譲る事を餌にすれば、椿も黙って見過ごしたりはしない。


 今は朝の9時頃、テーブルに向かって書類を見ている俺と、部屋の掃除をするルリ、そして隅っこでガチャガチャとメカニックな作業をする3人のメイド。




「君たちは何をしてるんだ」


「はい! 盗聴器を作成中であります!」


「流石に犯罪の域だろ……」


「バレなきゃ犯罪ではありません日向様!」



 変わった性格と言うか趣味と言うかわからないが、癖が強いメイド達だ。機械弄りが大好きな『青田』コスプレ趣味の『黄島きしま』イラストレーター『赤川』のトリオ。


 俺は3人を信号機と呼んでいる、大体いつも3人がセットで居るものだから、気がつけば頭の中でグループ名が出来上がっていた。こんな3人だが腕は確かだ、赤川に関しては軍資金を用意できる所を買っている。なんでも、赤川はこれでもかなり有名なイラストレーターらしいが、ゲームや漫画を読んだことがなく、俺は詳しくないが以前ルリにSNSのページを見せてもらった時に、赤川のプロフィールのフォロワー数は軽く10万人を超えていた。


 話が逸れたが、各々椿の行動を知るために動き始めたという訳だ。焔は休日を仕事の時間に当てているが、今回は少し違う。椿と一緒の枠組みに入り、直接動きを観察する事にしたそうだ。そっちを任せている間に俺は、



「椿の部屋に入る事は出来ないか?」


「申し訳ございません、専用の鍵で施錠されていて入れません」


「そうか、焔が帰宅するのを待つしかないか」



 あわよくば、部屋に侵入し手掛かりを見つけ出すつもりだったが甘くは無いか。結局俺は焔が帰ってくるまで、学園の教科書を開き予習をするのだった。




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




 夕方になると部屋の扉をノックする音が聞こえてきた、ルリは扉を開いて誰か確認をすると、



「お兄様、戻りました」


「あぁ、お疲れ様」



 入って来たのは焔だった、少し表情が微笑んでいるようにも見える。手に持っていた小さい紙袋をテーブルに置き、中から取り出したのはデジカメだ。それを俺に手渡してきた、朝出る時はこんなものを持っていなかった。おそらく途中で購入したのだろう、レンズもボディも傷一つ無い。


 俺はデジカメの電源を入れると、小さなディスプレイに花の画像か鮮明に映し出されていた。というか、ページを変えても変えても花ばっかり……




「焔、花ばかりなんだが?」


「は、はい! 私お花大好きなんです、名前とかわからないんですけど、綺麗なお花だなぁって」


「そ、そうか。……ん?」



 苦笑いをしながら次々とページを変えていく中に、花では無くメモ書きをした画像が現れる。最新型のデジカメなのかわからないが、細かな字や数字もクッキリ写し出されていた。



「それはお姉様のスケジュールの一部です」


「なんだと?」



 俺はその画像に集中する、ズーム機能を使って細かい部分も見ていく。書かれている内容はその日に受ける仕事の時間、そして帰宅時間。椿に関する画像は3枚程度で終わってしまった、今わかった事は明日のスケジュールくらいだが、これで奴の動きが読める。


 しかし、俺は一つだけ気になってしまった。どうやってこのスケジュールを撮影する事が出来たのかだ、椿のメイドは内容を一切話したり見せたりはしなかった、だが焔は意図も簡単に情報を手に入れている。


 妹だから見せてくれた、とは行かないはずだ。ましてや椿は焔に弱点など見せるわけが無い、自分が有利になる為には小さな事でもバラしたくないはず。だからそのまま俺は焔に質問をした、



「どうやったんだ?」


「お兄様、私は演技が得意なんです」


「まさか、姉にでもなったのか?」



 軽く笑った俺だが焔は真面目な顔をしながら『はい』と答えた、演技が得意な事は知っている。仕事でのオファーが来ている事も知っている、まさか専属メイドすら欺く程に演技が凄いのか?


 流石の俺でも疑ってしまう、双子でも必ずどこかは違う場所がある。それを完全に消してしまって違和感無く椿を演じる事ができるのか? 驚いている俺に話しかけず、紙袋から髪留めと化粧品を取り出した。髪色と身長はそこまで変わらない、凹凸のある部分も見た目だけなら大きく変わらない。一度後ろに振り返り準備が出来たのか、ゆっくりとこちらへ振り向くと、






 ―――虫けら、こっちを見ないでくれる?





 俺は今どんな顔をしているだろうか、わかる事は目を見開いてしまっているくらいだ。声も雰囲気も態度もセリフも全て椿の物だった、正直二度目だが驚いた。ヒステリーな部分も動きも完全にコピーしている、焔はずっとそんな姉の後ろを付いて行き、ずっとこの感覚を味わってきたから出来るのだろう。


 ルリや3色メイド達もビックリしていた、これ程までの能力が有りながら焔は椿によって制限されていた。だが今はリミッター解除され、本来の焔としてそこに居る。



「あ、あのー……」


「あ、あぁ。あまりにも似ていてビックリだよ」


「よかった……」



 これはとてつもない武器を手に入れた気分だ。だがこれでスケジュールも一日分だが手に入れる事が出来た、あとはアイツの弱点を探るために明日は尾行する。これが焔の本気なら、空閑を消す日は近いかもしれない。




「よし、明日の行動作戦を練る。皆座ってくれ」




 椿の弱点、必ず突き止めてやるよ。

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