魔法講義(雑)
「どうやら巨人からは助かったようね」
魔法を解いてピヴァンが言った。ホッとしたような声だが警戒の声色が残っている。
「巨人からって・・・」
それじゃああの人達が敵みたいだ。
「敵の敵だからって味方じゃないのよ」
それはそうだけど、いくら何でも敵視しすぎだと思った。土煙が止まぬ中、影がこちらに近づいてきた。ピヴァンに脅されたせいで息を飲む。影はこっちを見ると私とピヴァンを交互に見比べているように見える。
「それで、どっちかな?」
影は右手を上げ持っていた剣のようなもので、私たちを指しながら鋭い声で言った。誰に聞いているのだろうと思っていたら、
「血塗れのほうも怪しいけど、小さいほうも怪しいかなー」
別の声がした。二人で話してるようだが影は一つしか見えない。先ほどからも声は二人分に聞こえていたが、どうやら気のせいではなかったようだ。
「じゃあ両方かな」
「そうだね、その方が良さそう」
剣が振り上げられた。
「ちょっと待って!」
嫌な気配を感じて影を制止する。
「何かな?」
影は訝しみながらも動きを止めたが、
「命乞いじゃない? 聞くの?」
「なるほどねー、じゃあ聞っかないー」
そう言うと影は手に持っていた物を振るった。土煙から出てきた物は大剣だった。大剣は巨大で人の身長を大きく超えている。
袈裟斬りの要領でピヴァンと私を同時に両断するつもりのようだ。
「ちゃんと一瞬で殺してあげる」
その言葉を聞いて私はようやく影から出ている嫌な気配が殺意だと気づいた。私は唖然としていたがピヴァンは黙っていなかった。
「話くらい聞きなさいよ!」「アイシクルエッジ!」
声に従い氷の刃が剣と相打つべく召喚された。刃は三本で中空を浮き、影の剣を受け止めようとする。
二本はあっけなく砕け散ったが三本目で影の剣が止まった。影は少し驚いたようだったが、止められた剣にさらに力を加えると三本目を容易に砕いて、手元に剣を戻した。
「ふーん、いいよ。何を聞かせてくれるの?」
何とか興味を持ってもらえたようである。先ほどまでの機械的な冷たさを感じた声は軽減されている。
影は剣を振るい土煙を薙ぎ払った。煙が晴れるとそこには影のような女性? が大きい剣を持っていた。
服装は全身黒づくめで手足胸には金属の鎧を纏っている。だがそれ以上に気になるのは頭だ。どうみてもバイクのヘルメットを被っているようにしか見えない。頭を見直した後全身を見直すと黒い服の部分がライダーズジャケットにしか思えなくなってきた。申し訳程度につけられている鎧はアンバランスで別々の規格の物を合わせているようだ。そして何よりもそれを着ている彼女? の身長は小柄で線が細い。ブレストプレートが大きく見た目では性別は定かではない。声が女性のような気がするから彼女と見ているだけだ。人のことを怪しいというが彼女? の恰好のほうがよっぽど怪しい見た目だった。
剣の見た目は刃が星空のように黒くそして所々輝いていて、樋は星の川にも見える。
刃幅は柄に近づくほど太くなり遠くなるほど細くなっている。最大の横幅でぐらいで剣先付近は5cmほどで両刃だ。とてもじゃないが片手で振れる重さには見えないほど大きいものだった。今は仕舞われていて背中に対して平行に身につけられている。
「で、何から話してくれるの?」
話し合うといっても何から話せばいいんだろうか。少し悩んでいると。
「早くしてよ、早くしないと殺すよ」
静かながらもその声には殺意を感じる。ピヴァンを見ると・・・。
「私も記憶は混濁してるのよ、悪いけど説明はあんたに任せるわ」
ピヴァンのほうが状況に詳しいかと思ったが彼女もよくわかってはいないようだ。とりあえず起きた後の云々を聞いてもらうことにした。
まずは話を聞くと言ったとおりに話している間、口は挟まなかったが反面疑惑の視線は強くなったように感じた。
そして最後まで話し終えると。
「魔法ねぇ」
と小さくつぶやいた。そういえば彼女? は魔法を見てから私たちの話を聞く気になっていた。
「それは私が答えてあげるわ!」
そう言ったのはピヴァンだ。喜々として語り出した。何でだ。
「そもそも魔法っていうのはね……」
あまりにもピヴァンの語りは長すぎた。昼が夕方になるほどに。あまり理解はできなかったので要点になりそうなところだけ抜粋すると概ねこんな感じだ。
1.魔法はイメージで発現する
2.言葉はイメージを固めるためにつかう
3.使用には体内にある魔力を使う
4.感情により増大する
ぐらいだろうか。次はゆっくりとそして座りやすい場所で聞きたいものだ。
彼女、面倒なのでライダーとでも呼んでおこう。ライダーは話を興味深そうに聞いていた。その間色々な仕草が見れたので女性なのは間違いなさそうだ。
「ってことなのよ!」
話終わったピヴァンは自慢気だがそんなことをこんなにも覚えているならここがどこかとかも思い出してほしかった。話を聞き終わったライダーは横を向いて手を突き出すと。
「火よ、我が手に、発現せよ!」「ファイア!」
何も起きないようだった。そして問うてきた。
「出てこないなー、何でかな?」
「そりゃあ、あなたに魔力がないからよ」
「そっかぁ……」
ピヴァンの言葉にライダーは肩を落とした。顔が見えない為よくはわからないが魔法には心躍っていたようだ。だが自分で使えないのにはがっかりしているようだ。
「とりあえず不可抗力で儀式を行ったのはわかったわ」
それなりに信用してもらえたようだ。
「でも何するかわからないから、しばらく監視させてもらうわ」
信用はしてもらえたが信頼はされなかったようだ。
こうしてライダーが仲間になったのだ。仲間というか同行者で監視者って感じだったけど。
うっかり寝落ちしてて更新忘れるところでした