影走る
ちょっと短いですが昨日の続きです!
炎の巨人はのっそりと動き、下ろしていた手を再度こちらに向けるとまた火の玉を撃ってきた。
「大地よ、隆起し、我が前に障壁を!」「アースウォール!」
再度土の壁が出現する。
「ダブルエンチャンドハード、アクアシールド、アースウォール!」
続けて硬化の付与であろう魔法が入った。爆発音がまた聞こえたと思ったら、もう一度聞こえた。
そして土の壁が崩れ落ちた。だがそれで終わらなかった。火の玉はもう一つあったのだ。火の玉が水円蓋にぶつかり、蒸発音が聞こえた。強化があったおかげか水円蓋は消えず、火の玉は消えた。
見えるようになった視界で相手の様子を伺う。火が衰えていないところを見ると先ほどの芸当は造作もないことのようだ。ピヴァンも余力はありそうだが、私を気にしているのか攻勢に出ようとはしない。
そんな時、空から何かが降ってきた。着地点は炎の巨人である。炎の巨人は悲鳴を上げるかのように咆哮した。半身が斜めに消えていたが、炎が猛りすぐに人の形に戻った。
流石に応えたのか、体長が少し縮んでいる。
「まだ元気だなんて、面倒だなー」
落ちてきた影が喋る、土煙のせいかはっきりと姿は見えないが体格からして人のようだ。声からすると女性だろうか。ハスキーボイスに聞こえるが土が舞い上がってるせいかもしれない。
「え、当てるつもりあったの? でもそれより早く地面から抜いてほしいなー」
人影は一つなのに声がもう一つ聞こえた。涼しい印象を覚える声だが少し怒気を帯びてるようだ。抜くという言葉からして地面に刺さっているのかもしれない。
炎の巨人が無視をするなとばかりに咆哮して、影に迫る。影に近づくと両腕を振り上げ、叩き潰すように振り下ろした。
動きは遅いがそれでも脅威であることには変わりないその一撃を。
「はっ!」
影は剣のようなものを振り巨人の腕を切断した。だが巨人の身体は火そのものなのか、切断された部分と体はすぐに接着して再度影に迫った。影はその場を離れながら巨人の腕を切断し、その攻撃を躱した。
巨人の身体は元に戻る。どうしたと言わんばかりに咆哮する。
「斬っても切りがなさそうだね。もう一回空から行く?」
「うー、地面に埋まるのは一回で十分だよ」
「じゃあ、開放するよ」
「仕方ないなー、一回で終わらせてよ」
遠巻きながらそんなようなやり取りが聞こえた。影は翻り白銀にも似た輝きを発すると、一気に巨人の足元へと駆け寄った。そして巨人を人薙ぎしてその巨体を二分割にした。巨人が何度やっても無駄だとばかりに吠えるが、それは巨人の動きを止めるためだったようだ。
影は輝きの中、剣のようなものを掲げた。その瞬間輝きは膨張した。
「アステリオン!」
夜空の星の輝きが視界を埋め尽くす。
輝きが収まったころには巨人の姿はなかった。
勇者っぽく見えてるといいです!
6/7 ライダーと同行者の口調を修正しました