-甘え方-
かれこれ数時間ぶっ通しで文献、参考書、歴史、宗教から薬学に至るまで様々な物を読み漁った。
そこで新たにわかったことがいくつかあった。
この世界の有名なおとぎ話のようなものらしいが。
過去に魔族、亜人種、人間の大きな戦いがあったらしい、だがそこである吸血鬼の貴族が人間の女性を愛したらしいが。
それを切っ掛けに魔族側を制し人間と共存和平を結び付けたらしい。
この世界がいま現在平和なのはその二人のお陰らしい。
次に、魔法には基本的には5属性あり。
そこに例外の光と闇の2つなのだが属性とは別に種族による特殊魔法やスキルもあるようだ。
俺のような吸血鬼には血を自在に操れたり変化など色々あった、オーガと呼ばれる大型の種族は皮膚を硬化させたりもできるらしい。
どの種族も持ち前のアビリティーみたいな物を持っているわけだな。
そして魔法やスキル、アビリティーを使うにあたって消費されるのが【マナ】と言われるもののようだ。
ざっくり書いてあったのは精神力がこれにあたるらしい、だがこれの上限も生まれたときにおおよその才によって決まってしまうらしい。
なので容量が最初から少ない者は訓練しても、訓練していない多い者の足元にも及ばないそうだ。
また別の本を手に取って読んでいたら気になる内容が書いてあった。
吸血鬼の特殊魔法である血液操作についてだ。
硬化、再液体化はもちろん、その他魔法との連動方法など、実に様々な使用用途が書いてある。
覚えておけば、もし有事の時にはこれ使えるな。
そして遂に目を背けていた内容が目につく。
そう、【吸血】だ。
吸血鬼の代名詞と言える行為だ、よく食事とも言うがやはり人間を襲うのだろうか。
「俺もいつかは飲まなきゃだめなんだよな…」
さすがに元は人間だ、血を飲むという行為にかなりの抵抗がある。
それに飲まなかったらどうなるんだろうか、良く漫画とかであるように。
ち、ちからが…みたくなるのだろうか?
それは父親に後で聞いてみよう。
親であり吸血鬼として大先輩なのだ、色々と詳しくしってるだろ。
「あ、そうだ」
今まで大事な事を忘れていたのに気が付いた。
両親のことなんて呼べばいいんだ?ん~まともに呼んだことないしな。
でも普通に父さん母さんでいっか。
さて、、知りたいこともざっくりわかったし少しくらいやったことない親に甘えるとかしてもいいよな。
子供のころを取り戻したって罰は当たらんだろ。
そういって俺は部屋を出て、昨日行った母さんの部屋まで少し道に迷ったりしながらもたどり着いた。
そして着くなりドアの前で気合を入れる。
よし!!子供らしく子供らしくだぞ俺!!
そう決死の覚悟を決めて部屋をノックした。するとすぐに返事があった。
「はい?どなたかしら?」
昨日も聞いた、優しく暖かい声だ。
「あの、ソーマです!入っても大丈夫ですか?」
なんて声をかければ良いかわかんないからやたら固くなってしまった。
「ソーマ?いいわよ、こっちへいらっしゃい」
少し声に驚きが混ざっているみたいだ。
「しつれいします」
そう言いながら俺は母さんの部屋に入る。
「そんなに固くならなくても大丈夫よ?フフ」
母さんはベッドの上から俺を見て笑ったが。
転生して1日で歩けるようになった子供がどんな顔して親に会えばいいかなんか俺にわかるか!!
「あの人には聞いていたけど本当に人間と違って成長が早いのね~。お母さん、ソーマがもう歩いて話してるからびっくりしちゃった!」
そりゃ昨日まで赤ん坊が1日でここまで成長してるんだ、普通の人間はビビる。
だが流石は吸血鬼の奥さん、言うほど驚いた様子はない。
むしろどこか喜んでいるように見える。
「ご、ごめんなさい」
だがつい驚かせてしまったのを悪く思い謝罪が先に口から出た。
「いいのよ、むしろ我が子がこんなに早く大きくなるのを見れて幸せよ?おっぱいは一回しか上げられなかったのは残念だったけど…」
授乳が一度だけだたのがかなり残念だったみたいだ、親心的にはもっと赤ん坊としてお世話したかったのだろうか?
「でもいいの!ソーマと早く色々お話したり一緒にお庭をお散歩したりするのが夢だったから!さぁこっちへいらっしゃい?可愛いお顔をみせて?」
俺が生まれてきて一緒に遊んだりするのが夢だったとこの人は言ってくれるんだ。
それを聞いて何かが俺の中で緩んで弾け、涙が溢れた。
「俺なんかで…いいん、ですか?」
何故そんなことを聞いてしまったのだろう。
自分でも正確にはわからない、だが昔からどこかでお兄ちゃんなんだから妹をしっかり面倒見なくちゃ。
大人に早くならなくちゃ。
甘えてる暇や遊んでる暇なんかないんだって思いながら幼少期を駆け抜けて来たからに他ならないのだろう。
前世での母親は俺にこう言った。
「お前なんか生まなきゃ良かった!!」
「お前とこのガキ」が居るからあの人は出て行ったんだ!!」
「あんたみたいなのに食わせる物なんか勿体無くてないよ!」
「はぁ~いっそ家出でもして外で野垂れ死んでくれれば文句もないのにさー」
「のぶちゃん、それ殴るの良いけど面倒だから死なない程度にしてよ~?はははは!」
「ゴミが寝てないでさっさと掃除しろよ!!」
「あーー!!そのうるさいの外に連れてけ!!!」
「たかしが邪魔だっていうからそれ連れて公園なりどっか行ってろ!」
「こいつ《あずさ》邪魔だから風俗にでも落とせば金になるかな?」
「親を助けると思って20万貸しちょうだいよ、ねぇ。今まで面倒見てやったじゃない」
「お前が貸してくれないならあずさのとこに行くよ?」
思い返すだけで反吐が出そうだ。
普通の親というものが俺にはわからない。
「どうしたのソーマ!?」
急に泣き出した俺を見て母さんが驚きながら聞いてきたが反応に困ってしまった。
もう何年も泣く事なんかなかったし誰かに優しくされるのも有るにはあったが。
親からの愛情はなかったんだ。
「なん……でもないで…す」
「良いからこっちへいらっしゃい?」
俺は頷きながら母さんのベッドのところまでいった。
その瞬間、泣きじゃくる俺を母さんは優しく包み込むように抱きしめてくれる。
「ソーマじゃなきゃダメなのよ?私と愛してるお父さんの子供だから、貴方のこともちゃんと愛してるわ…だから大丈夫よ変な心配しなくても…」
優しくされればされるほど、愛されれば愛されるほど涙が止まらない。
でも何も言わず静かに抱きしめて頭を優しく撫でていてくれる。
こんなことされた事ない、だが俺は何度もこうして実のお母さんにこうして欲しかったか。
何度も俺を褒めて貰いたかった。
愛してると言って欲しかった。
俺を、妹を大事と言ってほしかった
こちらの母さんは子供ながらに強がって無理に背伸びをしていた俺には過ぎた人だ。
こんなにも愛してもらってるのにどう返したらいいかわからない。
だが決めた、俺はこの人たちを本当の親と思っていこう。
妹の事は気掛かりだけど、康介君がきっと幸せにしてくれるだろう。
俺はこっちで、新しく生きていこう。
「ありが…とう、母さん」
俺はえずきながら母さんに感謝を伝えた。
「いいえ、私はなにもしてないわ。あなたの成長をあの人と見るのが幸せなの。だから私の元に生まれてきてくれた事だけで私こそ感謝仕切れないのよ?ありがとうね、ソーマ」
そう言いながらより強く俺を抱き締めてくれた。
暖かくて優しい良い匂いがする…
心が落ち着くような、どこか安らげる香りに包まれて幸福感を覚える。
ずっとこのままでもいいとさえ思った。
しばらく抱きしめられていると母さんが少し離れてから。
「すこしは落ち着いたかしら?」
柔らかい笑顔で俺に聞いてきた。
「うん、落ち着いたよ。ありがとう母さん」
「なら良かった!あんなに泣くんだもの、お母さん本当に驚いたのよ?」
今度は柔らかい笑顔から太陽のように輝かんばかりの笑顔でそう言われた。
「なんでもない!ただちょっと嬉しかっただけ!」
「じゃあ男の子なんだからもう泣かない!いいですね?」
そう言いまた頭を撫でられる。
「わがまま言っていいですか?」
「どうしたの?」
ちょっと恥ずかしいが意を決して言う。
「もう一回…抱き着いてもいい、ですか?」
「あらあら、甘えん坊さんね~いいわよ」
少しにやにやされたが受け入れてもらえた。
母さんに抱かれながら、これから少しずつ幼少期に出来なかった事を取り戻していこうと思う。
そして母さんと父さんの自慢の息子になりたいと思う。
今は少しだけ子供に戻ろう、いろいろ忘れて…
誤字脱字ありましたらよかったらご報告ください。
そしてこれからまだ幼少期が続きますので戦闘などが見たい方は申し訳ありませんがもう少々お待ちください。