‐母親‐
「それでは坊っちゃんを奥様の寝室へとお連れします」
「頼むぞ、セレスもさぞ喜ぶだろう。跳ね起きるんじゃないか?」
俺は父親の手から執事、カインズの手へ渡された。
産まれた瞬間の記憶は朧気過ぎてあてにはならないが、金髪の綺麗な女性だった気がする。
しかしまだ産後すぐだろう?疲弊し切ってると思うんだけどな。
「それでは失礼します旦那様」
そういいまた重々しい扉をくぐり長い廊下を歩き俺は奥様、俺の母親の元まで行く。
俺は向かうまでの道程で昔の母親を思い出した。
俺の元居た世界の母親は正直、百歩譲ってお世辞に言ったとしてもろくでもなかった。
父親が女を作って出ていってからと言うもの絵に書いたかの様に酒とギャンブルと男に溺れて行った。
そして妹は知らないが俺とは父親が違う。母親も誰が妹の父親かなんかは知らないようだったし俺も知らないし興味もなかった。
ただ妹が、兄妹が出来たことが素直に嬉しかったんだ。
だがそこからの母親はただの妹を産んだ女であり妹の母親と言えるような事は何一つしなかった。
あまつさえあの女とその時々の彼氏と呼ばれていた男どもに暴力を振るわれていたかなんか数えきれない程だ。
特に柄の悪いチンピラみたいな奴が来たときは情事の最中に妹がお腹を空かせて泣いたときはその都度うるさいと動けない程に殴る蹴るをされたこともあったがあの女は笑って見ていた。
だから俺は妹を3歳の時に家から連れ出して必死に親戚を回ったり働ける様になったら直ぐに働いた。
だがあの女はそんな自分の子供にどこで知ったかはわからないが金をせびる連絡を延々としてくるようになった。
こっちが高校にも行かず親の愛情も知らず恋愛や青春も捨てていたにも関わらず好き勝手やってまだ関わって来たような屑だった。
だから俺は親と言う物がわからない。
だから期待している反面怖くもあるのだ。
またあんな過去と同じものが繰り返されたりしないだろうか?と。
そんな暗い考えを巡らせて居ると俺を抱いているカインズがとある扉の前で止まった。
「さぁ着きましたよ坊っちゃん、貴方様のお母様のお部屋ですよ」
あ、着いたんだ。
父親に会うときと違って別の意味で緊張するな…
コッコッコッ
すると中から優しい声で返事が帰って来た。
「はい?どなたかしら?」
「カインズです。お休み中の所を失礼します奥様、もうお目覚めでしょうか?」
「えぇ、起きてるわ大丈夫よカインズさん。どうかしましたか?」
「坊っちゃんがお目覚めになられたのでお連れしました、旦那様にはこちらへ来る前にお会いになっています」
「まぁ、やっと起きたのね!申し訳ないけど入ってきてもらえる?」
俺が起きたと聞いたら急に声が明るく力強い物になって少し驚いた。
「それでは失礼します」
さぁ…ついに母親と対面だ!!
不安と期待が入り交じって変な高揚感に包まれる。
扉が開かれて室内へ入るとベッドで横になり上半身だけ起こしてこちらを見ている女性がいた。
それを見てつい俺はその女性のあまりの尊いと言わんばかりの美しさに口を開けて見とれてしまい、何より一目見た感想が口から零れ出てしまった。
「いえー…」
その女性は見事なまでに艶やかな黄金の糸の様な綺麗な長髪をしており、面持ちは綺麗なんて言葉では足りない位に顔が整っており、ただ優しいだけではなくどこか気品や力強さを感じさせる。
こんな美人、今まで見たことないぞ…
本当に母親がこんなに綺麗な人でいいの!?
ここまで美人とは思って居なかったので面を食らいすぎてきっと今の俺の表情は面白い顔になっているだろう。
「奥様、体調は如何ですか?なにか必要なものが御座いましたらなんなりとお申し付けください」
「ありがとうね、まだ流石に体が痛いけど今は少し楽になったわ。それよりも早く可愛いソーマを抱かせてもらえる!?」
痛みよりもまず先に俺を抱き上げたいようだ。
そして俺はカインズから母親に抱かれるが、女性特有の良い匂いが俺の鼻腔を刺激した。
優しくも安心する匂い、母性を感じる匂いとでも言うのだろうか。
「あらソーマ、どうしたのその様に呆けた顔をして。変な子ね、フフフ」
俺の顔を見て母親がそう言って上品に笑ってきた。
そりゃこんな美人に抱かれて良い匂いまでしてみろ!大体の男は俺と同じく固まるに決まっている、あぁそうだとも!万人がこうなる!!
ならない奴が居るなら見てみたいものだ。
「奥様、あまり無理をなさらないで下さい。まだお疲れのご様子ですし」
「あらカインズさん、そんなことはなくてよ?この子を見たらそんなの吹き飛んでしまいました」
母親は本当に入ってきたときの疲労感を漂わせないくらい元気に言い放ったので俺はかなり驚いた。
子供を見て抱いただけでそんなに回復するか!?まさかこの人も魔族とか!?
《いえ、こちらの女性は種族:人間 で間違えありません》
あ、そうなのか。なら良かった。
素直に嬉しさのあまり疲れどころの話ではなくなってる訳だ。
「それでは今日の夕食は栄養が豊富な食材を多く使い食べやすいようポタージュスープになさいましょう」
「そんな気を遣わなくても大丈夫ですのに」
「いえ、奥様には少しでも英気を養って坊っちゃんに母乳を与えて頂かなければ」
カインズは母乳を気にしてやたら母親の体調を気にかけてるのか。
ん?ちょっと待て。
母乳!?母乳だって!?
いや、確かに赤ん坊だからそれしか食べれないけど…いいの!?こんな美人の母乳飲んでいいの!?
さ、さすがに気が引ける。
しかし俺は高速で思考し一つの答えに辿り着いた。
でも俺って今は赤ん坊だし!飲まなきゃだめだよね!!
そこで開き直ってしまうのは俺の良いところなのか悪いところなのか。
「そうね、なら今日の夕食の献立はカインズさんに一任するわね」
「承りました奥様、それまでごゆっくりお休みください」
そこでカインズが母親から俺を譲り受けようとしようとしたとき。
「あ、ごめんなさい。やはり今すこしソーマ母乳あげてもいいかしら?お腹を空かせてるでしょうし」
「あぁ、そうですな。それでは私は部屋を出ていましょう、終わりましたら声を掛けて下さいませ」
そう言いカインズら部屋を出ていき、部屋に残されたのは俺と母親だけが残って母親が俺に優しく包み込むように笑掛けてくる。
「それじゃソーマ、お母さんのおっぱい飲みましょうね」
そう言うと母親が服を捲ると、そこには陶器の様に白く美しい大きな双丘が顔をだした。
「あっう、えっあ」
只でさえ見る機会などないのにこんな美人の物を見てしまってテンパりにてんぱる。
「ほら、良い子だからあーんしてごらん?はーいソーマ」
そう言って俺は頭を乳房に押し付けられる。
覚悟きめたらー!!そう心に言い聞かせ俺はその尖った先端を口に含み。
吸った。一心不乱に吸った。
自分の血肉へと変えるために母親の母乳を飲みに飲んだ。
そこから必死過ぎて何分そうしていたかわからない。数分の気もするし数十分な気もする。
そこで口を離され抱き抱えられた。
「沢山飲んだわねーソーマ、それじゃ次はゲップしましょうね」
そう満足そうに言われて、俺は抱き抱えられながら背中をぽんぽん叩かれてゲップを出した。
赤ん坊って大変だな、昔妹にしていた頃を思い出した。
そして俺の最初の戦いは終わった、勝った!
意味のわからないことを考えながら赤子の体に引っ張られている活動時間などにより一気に眠気が襲いかかってきた。
「ソーマは良い子ねー、お腹一杯になったでしょうし次はねんねしましょうね~」
ご飯食べて寝るって…でも眠いな。
お母さん、良い匂いだし。
少しだけ寝よう。
こうして俺は初めて母親の愛を感じながら抱かれて眠りに落ちた。
なるべく早く戦闘に行きたいのですが急いでもあれだと思うので思うままに書いていこうと思います。ただご意見ありましたらお願いします。批判でもなんでもいいです。