表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

干支達の夢

干支達の夢 その九b 【サルに寄せて】

二〇一六年は申年です。そこでサルにちなんだ諺を散りばめてお話を作りました。量は葉書一枚分。タイトルはズバリ【サルに寄せて】です。それじゃ、いってみよう!

「お前らなぁ…」職員室の床の上に正座させられているのは、猿田と猿川の二人だ。本来は仲の良いはずのこの二人、この処よく揉めている様だ。

「で? お前ら何が原因で殴り合いなんか…」新米教師の犬田は何とかしなければと少し焦っていた。

「ちっ…」「ふん!」二人は犬田の言葉にも猿を決め込んでいる。このままじゃ埒が明かないと思った犬田は、目撃者を呼んで話を聞いた後で言った。

「なるほど、先週の土曜日、猿田のファッションを猿川が笑ったのが…」

「だって、こいつ必死なんだもん。中学生がタキシードですよ? いくらクーコちゃんをデートに誘おうと企んでもな! そもそも下心一杯の、意馬心猿の情が見え見えなんですよ!」

「よく言うわ! お前だって薔薇の花を百本って、どんだけなんだよ! クーコを彼女にしたいだなんて、それこそ猿猴月を取るじゃねーか!」

「ううむ、二人とも同じ娘をデートに誘おうと…てか、ガキのくせにタキシードに薔薇百本って…お前ら、猿に烏帽子って言葉知ってるか?」

「あ、オレ、やっぱり犬田先生嫌いだわ」「俺も」この言葉に焦る犬田。

「え? ああ、今のはジョークだよ。猿に絵馬って言葉の間違い。ねっ?」

「ふん! 猿芝居は俺達にゃ通じないよ。そもそも先生と俺達は犬猿の仲と言ってもいい位だもんなぁ」「お! 今、猿川がイイこと言った!」

 二人は、いえ~い! と手を合わせてパチン! と音を鳴らした。

「先生こそ、沐猴にして冠すって言葉知ってる? お似合いの言葉かもよ」

「おっ! 糞ガキが! 確かにオレは教師生活一年目だ。けどな、猿の尻笑いの様な事だけはしないって! 第一、クーコはオレの姪っ子だぞ? 絶対にお前らとは付き合わせないからな。クーコがお前らの彼女に、なんてあり得ないわ! そう、猿の水練じゃ!」

「え? 犬田先生がクーコちゃんの叔父さん?」「マジっすか?」

「おおよ! 一番上の姉貴の娘じゃ! 知らなかったのか?」

「うわぁ、オレとした事が。情報通のオレにとって、猿も木から落ちるとはこの事か」「全然似てないじゃん…人と猿くらい違うよなぁ」

「所詮中学二年生、お前らのは猿の浅知恵なんだよ。そもそも…」

 この後、犬田先生の説教は小一時間続いたそうな。じゃ、サルー♪

●猿を決め込む……見ざる聞かざる言わざる、から、知らぬ振り、無視を決め込むの意。

●意馬心猿……心が煩悩や欲望のために働いて、抑えがたいことのたとえ。

猿猴えんこう 月を取る……できないことをしようとして、失敗すること。身の程知らずの望みを持ったばかりに、却って失敗すること。

●猿に烏帽子……似つかわしくないことをするたとえ。また、外見だけを取り繕って、中身が伴わないことのたとえ。

●猿に絵馬……取り合わせのよいもののたとえ。

●猿芝居……下手な芝居。あるいはすぐにバレてしまうような浅はかな企み、愚かな言動の意。

●犬猿の仲……非常に仲が悪いことのたとえ。

沐猴もっこうにして冠す……外見は立派だが、中身は愚かな者をあざけって言うことば。また、地位にふさわしくない小人物のたとえ。

●猿の尻笑い……自分のことを棚に上げて他人を嘲笑うこと。

●猿の水練……猿は泳げないものということから、在り得ないことの意。

●猿も木から落ちる……木登りの得意な猿も、時には落ちることがある。その道の達人といわれる人でも、失敗することがあるというたとえ。

●猿の浅知恵……浅はかな知恵のこと。

おまけ サルー……フランス語の軽い挨拶。会った時にも別れる時にも使われる。イタリア語だとチャオの感覚。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] こんばんは! 来年の干支に因んだショートショート楽しませてもらいました(^_^) 知らない諺も多く勉強にもなりました! 読んでるとなんだかお正月を迎えるのが楽しみになってきました(笑) 今…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ