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Dr.Kの鼓動  作者: パワプロ58号
3.北信越大会
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75/408

第75話「チームの柱」

 クロ高の先発は新田。スワ高の一番打者は、山中究一。

「しゃうぃーす」

前歯に舌をひっつけて、新田を煽るような眼で見ている。

(変化球うぜぇから……無理に振らない。球数稼いで早い所降板させる――)

これを頭の中反復させる山中。これは、試合前に法寺に念を押されたことである。

(多分俺たちのことは嘗めてっから揺れるやつは投げねえ。となると――木庭が投げるあれと、あれと……あとは体の近くにぐーんって来るやつだよな)

しかし、新田はストライク先行で投げていき、2球で追い込む。

(あれ……木庭のやつと全然ちげえぞ……どうなってんだ)

山中はベンチの法寺を見た。法寺のサインに、うなずく山中。

(……でぇえいくそ……お前に任せるって何だよ……)

三球目のツーシーム、打ち返したが、セカンド今宮に楽々捌かれアウトとなる。

「くぅ~悔しい!」


 悔しそうにする山中がベンチへ戻っていくのを横目に、飯島紀明は打席に立つ。

(ああ……コドーはリリーフか……)

新田を見ながら少し古堂を思い出す飯島。彼自身、バントしか極めてこなかったので、この場面、バントのみに力を注いだ。しかし――

「ファウル! アウト!」

スリーバント失敗でアウトとなった。ベンチに戻ろうとしたところを、次のバッターである阪本が揶揄する。

「飯島! 追い込まれたらバントやめろってハヅ言ってたろ!」

「仕方ねえだろ! お前あのぐいーんって曲がるやつ打てるのか!!?」

「……スライダーな」

「ぐぬぬ……」


 しかし、阪本もバットをボールに当てられず、三振でアウトとなる。1回の攻撃を終えたスワ高。法寺が全員を集めた。

「……9球で一回が終わった。あのピッチャーは体力あるわけじゃないから、70~80球が山場だろう。さあ、このペースだとどうなる?」

「9回まで投げられるよな」

「ああ。そういうことだ。もっと見ていい。お前たちは果敢に振りすぎだ」

「わかった」

法寺の言葉に、全員がうなずいた。

「次の回は法寺からだし、点入れようぜぇ!」

5番打者の高町が叫ぶ。そして、2回表がやってくる。


 2回表、クロ高の攻撃は下位打線から。

(今まで6番やってた金条が7番に下がったことで、打撃の安定感は増した……はず)

そう思う古堂だったが、センターフライに倒れる金条。続く佐々木、新田も凡打に抑えられ、三者凡退で終わってしまった。


 そして、2回裏――先頭打者である法寺覇月が左打席に立つ。

(長野県のどのチームも、彼を抑えることができなかった。そして、彼を中心に勢いづいたこのチームを止めることができなかった。ならば簡単……彼を止めればいいだけの話!)

金条は、初球、低めのスライダーを要求。法寺は見逃す。

(次は……)

法寺は強く新田を見据えている。一重だが、大きな目が、新田に威圧をかけている。新田はさわやかに笑い、二球目を投げた。揺れる魔球。ナックルだ。

(あっ……!?)

見逃した法寺。ボールだった。

(くっ……ナックルは投球者自身もどこに行くかわかりにくい魔球……。追い込みたいときにはあまり使えないか……?)


 三球目、外に逃げるシュートを投げる新田。

(もらったぜ)

法寺はしっかり打ち返した。まっすぐ打ち返した打球は、センター山口の頭上を越えていく。

(くっ……)

先頭打者にツーベースヒットを浴びてしまう。しかし、新田は平然としている。キャッチャーの金条に声をかけた。

「こいつには仕方ないさ! あとをしっかり抑えていこう! 配球頼む!」

「はい!(新田さんは……俺に対する配慮を欠かさない……。だから心配なんだよな……自分が崩れていることを、なかなか見せない。監督が気づいたり、白銀世代の、本当に上の人にしか見分けられないような綻びだったりでしか……その崩れの片鱗は、一切見えない)」



 続く5番高町に、送りバントをされる。1アウト3塁。そのピンチで打席には6番箕口。

(おうおう……イケメンピッチャーなんとか封じたい……つうかイケメンずるい)

しかし、スライダー、カーブ、最後にストレートの三球で抑え込まれてしまう。

(くぅうう……遊び玉がないのは本当に苦しいっ!)

悔しそうにする箕口。しかし、次の打者、藤正彦は笑っていた。

「んでも……次打ったら確実に点入りますよね! 俺変化球打つのずっと鍛えてたンス!」

藤は茶髪をなびかせながらヘルメットをかぶった。

「バキチー、見てろよ」

同学年のバキチーこと木庭に笑いかけ、藤は打席へと向かった。

「頼むぜ……」

打席に立つ藤。初球のスライダーがボール球。見逃した藤。

(ボール球なのはラッキー……でも今のほっとんどストライクゾーンよなあ……)

二球目のツーシーム。速球にタイミングが合わず空振りする。

(な、なんじゃあの球速差ぁ)

三球目のスライダー、木庭のスライダーよりもずっと鋭く、なおかつ利き腕が違うため逆方向に曲がっていく。その変化球を、藤は、不格好なスイングで打ち返した。

「鈍い当たりっ!」

緩く打ちあがった打球は、後退していくファースト伊奈のさらに後ろで落ちた。伊奈が打球を拾うが、藤はスライディングで間に合った。そして――

「法寺ホームイン!! 諏訪涼成高校1点を返したぁ!」

「っしゃあ!」

「ナイスバッチ!」

「正彦ファインプレー!!」

スワ高ベンチが一点を盛り立てる。

(この先輩たちは……服装がダサいだの、頑張るのは面倒くさいだの、色々とうるさいけど……どんなに不格好でもヒットを祝福してくれるんだ……)

藤は嬉しそうに一塁ベースの上で笑った。


 続く8番敷島を三振に抑え、この回は一失点に抑え込んだ新田。金条が駆け寄ってくる。

「大丈夫すか新田さん」

「ああ。まあ打たれることはあるから仕方ないとは思うけど……やっぱ点取られると悔しいわ。次の回、もっと厳しく行こう」

「はい!」


 3回表、先頭打者は今宮だ。しかし、木庭のカーブを少し打ち損じて、サードゴロに倒れる。

(うーん、半端に球速ないから逆に打ちにくいやつか……)

続く小林をセカンドライナー、田中をピッチャーライナーで3アウトにした。


「木庭やる~」

「ナイピバキチー」

チームメイトの声に、木庭は嬉しそうに笑った。

(打球飛んでくるとこええけど、先輩らの喧嘩見てたらなんか捌けるようになってるもんよなあ)

木庭は笑いながらマウンドをあとにする。



 そして、3回の裏は、先ほどナイスピッチを見せた木庭来彦。新田の変化球の前に手も足もでず三振となる。次の打者は、一番バッターの山中。

(でぇい……当たればこっちのもんだ……走って内野安打にしてやら)

初球のシュートを見逃す山中。二球目のカーブも見逃す。

(さっきからバット振ろうとすらしないけど……打つ気あるのか? やっぱ新田さんの級数稼ぐのが目的なんだろうか)

金条はそう思い、ど真ん中のストレートを要求。内野ゴロに抑える算段だ。金条の読み通り、タイミングが合わず打ち崩した打球は三塁線を転がっていく。大滝が打球を拾う。しかし――

「あ、足くそはええ!!」

クロ高ベンチがざわつく。大滝がすぐに送球するが、その間に一塁ベースまで駆け抜けてしまった。

「1番バッター、山中の内野安打ぁ!」

一塁ベースの上で大きくガッツポーズを取る山中。

「すげえ究一……。さすが元スワ中のスピードスター」

二番打者飯島が、山中のガッツポーズをみて嬉しそうに笑う。

「ノリ! お前も、元涼成中のスピードスターって言われてたろ!」

「いや適当な嘘つくのやめようぜリート!」

阪本が笑う。打席の飯島だったが、新田の変化球に合わせることができず三振に倒れた。


(悔しいな……究一が打てただけに……)

とぼとぼと打席に戻っていく飯島に、法寺が声をかけた。

「大丈夫だ。まだ3回だぞ」

明るく笑う法寺の言葉に、飯島も笑った。

(ハヅはマジで頼りになるわ)


 フルカウントまで粘った阪本。6球目、外角低めぎりぎりのツーシームを打ち返す。

(おおしっ! ラッキーだ!)

センター山口の前にぼてぼてと打球が落ち、ランナー一二塁となる。


「さあ……ラッキーだったな俺たち」

二塁ベースの上で山中がつぶやく。

「どういうことよ」

セカンド今宮が問う。

「……え? 打席見てみろよ。ハヅだぜ」

ハヅこと法寺覇月が打席に立っていた。威圧感を放っている。

(ランナーためた状況で……彼と対峙するのは不本意だ……。でも、やるしかない。敬遠して満塁策も怖い)

勝負に出たクロ高バッテリー。初球のナックル。入ってストライク。

(揺れる魔球……軟投派投手が使っていい変化球じゃねえだろ)

二球目もナックル。次はボール。しかし、三球目もナックル。そして2ストライクと追い込む。

(……何としてでも打たなきゃ……みんな、俺が打つことを期待している)

法寺は大きく息を吐く。

(俺のためにランナー溜めてくれたんだ。答えないと……じゃないと、俺が野球誘ったのに、俺が打てないせいで負けたら……)

法寺は目を見開いた。そして、新田が投げた4球目――スライダーである。

(ナックル三球見せてからのスライダー、本当にイカレたリードだ!!)

法寺はここで来たスライダーを見て笑いながら、しっかりと打ち返した

(!?)

クロ高バッテリー2人は驚く。上を見上げた。




――晴天の中、打球がはっきりと、球場のスコアボードに直撃していくのだった。

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