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Dr.Kの鼓動  作者: パワプロ58号
8.県予選準々決勝~
175/402

第175話「8強出揃う」

 翌日の抽選会。再抽選ともなると、8強に残ったキャプテンの顔つきも変わってくる。


「……毎度毎度、やっぱりベスト8に残る高校は強そうな顔つきだ」

「……高月くん、言っても君もそっち側でしょ」


 今宮がふと見やった視線の先に、高月と白里が談笑していた。


「あっ……今宮じゃねえか」

「おっ……プロ注目の男!」


 気づかれて少し複雑な表情を見せる今宮。


「……あ、ああ……よッ!(ああ……そういえば……U-18代表は、俺とレイモンドと黒鉄……だけか)」

「ん? 呼んじゃった?」


 その声に反応したのは、鉄日高校のキャプテンで、U-18のエースも務めた黒鉄大哉。


「よう! いやー、今宮くんよ、大変なブロック勝ち上がってきてよぉ」

「……まあな。楽々勝ち進んできたやつらにはわからんだろうな」


 黒鉄の言葉がすぐに煽りだと察した今宮は煽り返す。


(ふん……こいつも一応U-18の正二塁手っつー箔がついたもんよな)



「すげえ……クロ高の今宮に、初巾の白里……白銀世代ばかり……黒鉄、高月、江戸川、柴川……良いピッチャーもそろってる……」


 一人浮いた気持ちになる平田恒太。


「あっ……平田くんじゃん」

「えっ? 今宮……」


「去年の秋大会で戦ったじゃねえか」

(覚えてたのか……)


(去年割と苦戦させられたからな。今年は強くなってるって、金条から聞いてる以上、マークしないわけにはいかねえ)


「まあでも、再抽選……いきなり当たるかもしれないんだよね。そんときは胸を借りるつもりだから、よろしく」




 再抽選の結果が発表された。


 第一ブロック 黒光高校。

 第二ブロック 初巾高校。

 第三ブロック 秋江工業高校。

 第四ブロック 福富商業高校。

 第五ブロック 鶴高校。

 第六ブロック 鉄日高校。

 第七ブロック 阿賀黎明高校。

 第八ブロック 三浜高校。



「準々決勝……お前らとか」


 隣で白里一哉が今宮に笑いかける。


「……初巾高校と福富のいるブロック……今回もか……」


 今宮は早速この結果を持ち帰る。ミーティングでは、全員の緊張感あふれる顔つきが、手に取るようにわかった。



「初巾高校……」

「柏木邦也……」

「レイモンド……」


 野手陣が警戒するのは、柏木のナックル。そして、投手陣は、レイモンドという県内最強野手と謳われる男への警戒心を強く見せた。



「……それで、こないだの小崎高校との試合を録画したビデオです」


 小泉が持ってきたビデオに群がる選手たち。



「阿佐間コントロール良いな」

「いや、また柏木投げてねえのかよ」

「こないだも、先発阿佐間さんでリリーフで柏木っていう戦術で負けたし、今回もそうしてきてもおかしくはない……よなあ」


 沈黙が流れる。


「でも、秋大会は鷹戸と古堂の継投で勝てた。伊東の調子も良いし……投手陣ならいい感じだと思うけど……」

「野手があのナックルを打てなきゃ意味がねえ」


 今宮が言い切る。全員の希望的観測を打ち崩す一言だった。


「じゃなきゃ勝てねえよ。明日……時間はねえけど、元々練習してきたことを活かさねえと」

「そういえば秋も、ナックル対策って言って凄く練習しましたよね」


 伊奈が今宮に笑いかける。今宮は頷く。


「……新田」


 今宮に呼ばれ、一人後ろの方に立っていた新田はこちらに気付く。



「どうした?」

「投げてもらってもいいか? ……ナックル。明日の調整も兼ねて」


 明日の調整、という言葉に、全員が反応した。


「もちろんだ」


 新田の強い返事が、全員を安心させた。





「さあ、ベスト8じゃ満足できないよね」


 白里一哉がミーティング中に呟く。


「ったりめえだ。クロ高が相手とかもはや関係ねえだろ。俺たちは勝つだけ」

「まあ間違いないな。これは虎次郎の言う通りだ」


 弟、白里虎次郎の言葉にレイモンドが同意する。


「クロ高はエース新田を温存している。もっと上の戦いに照準を合わせているかはわからんが、先発新田の線は薄いだろう」

「となると……鷹戸?」

「いや、でも昂大戦で調子悪そうだったしなあ」

「……ってことは、調子マックスの伊東か……新田よろしく温存されてる古堂黎樹か」


 クロ高の先発談義が盛り上がる中、柏木がやってきた。


「んで、根古屋監督は……ウチの先発誰って言ってたの?」


「……お前だよ、柏木」


 白里が柏木に告げる。



「ふーん……わかってるじゃん、監督も」

(阿佐間でも良いと思うんだけどなあ)






 準々決勝の試合の日――クロ高は足早にグラウンドに向かっていた。


「……そういえば新田、こないだ新井ちゃんとお出かけしてたじゃねえかよ」


 田中がふと呟く。新田は首をかしげる。


「ああ……うん、初巾の試合から見てたんだ」

「一緒に?」

「うん、一緒に」


(デートじゃん……)


 田中の苦笑いも新田はさわやかに返す。


「ま、今日の先発は絶好調の伊東からだし、鷹戸、古堂も控えてるから……俺の出る幕もしかしたらないかもなあ」

「弱気なのか強気なのかわかんねえ発言しやがる」



「さあ、行くぞ……」




 先攻 黒光高校

1番セカンド、今宮陽兵。2番ライト、小林翔馬。3番ショート、田中遊。4番サード、大滝真司。5番センター、山口寿。6番ファースト、伊奈聖也。7番キャッチャー、金条春利。8番ピッチャー、伊東律斗。9番レフト、佐々木隆。


 高校 初巾高校

1番ライト、瀬田成彦せた なるひこ。2番セカンド、山田律やまだ りつ。3番キャッチャー、白里虎次郎しらさと こじろう。4番センター、レイモンド=アルバード。5番ファースト、白里一哉しらさと かずや。6番サード、大槻吉秀おおつき よしひで。7番レフト、権田良介ごんだ りょうすけ。8番ピッチャー、柏木邦也かしわぎ くにや。9番ショート、錨真紀いかり まさのり


「打順を大きく変えてきたな」

「むしろ今までが変な打順だったんだよ」


 今宮と山口が電光掲示板に写った打順表を見ながら考察している。


「瀬田は良い脚持ってるけど、三振多かったイメージだけどな」

「……先発が新田じゃないと予測して……か?」


(まさかな……)



 試合が始まる。マウンドに立つ柏木。汗一つ掻いていない様子。舌を出しながら顎を上げ、マウンドと言う高い位置から1番今宮を見ていた。



(U-18の二番打者でしょ……つまり、こいつを抑えたら……俺も来年のU-18代表候補だよねッ!!)


 初球ストレートが内角に飛び込んでくる。驚く今宮。


(おいおい……こんな強気だったかよ?)



 二球目――早速飛び出してくるナックル。


(いきなりかっ!)


 アウトコースの揺れる球をカットしようとバットを出す――が、空振りする。


(今宮さん……空振りなんて珍しい)


 一球外したストレートを見逃す今宮。


(どーせ次……どーせ次決めに来るッ!)


 4球目投げられたナックル……これがストライクゾーンに入っていた。


(やっぱりなッ!)


 右打席から引っ張る今宮。サード正面に飛ぶ打球を、大槻がしっかりとキャッチして、サードライナーに倒す。


「ナイスヨッシー!」

「ヨシさんサンキュー!」


 柏木がマウンドから声をかけると、大槻は右手で反応する。


(しかし、一回見ただけで柏木のナックルに合わせてくるか……やっぱ相当な練習を積んでるな)



 二番小林が打席に立つ。――しかし、柏木のカーブも取り入れたピッチングの前にタイミングが合わず、三振する。


「くそっ……やっぱ柏木……調子は良さげだな……」


 田中が打席に立つ。6球投げさせるも、ナックルをひっかけピッチャーゴロに倒れてしまう。


「くっ……当ててきやがる……秋はガンガン空振りしてたのに……」



 一回裏。マウンドに立つのは……伊東律斗。


(今日から……新田が投げられる。しかし……俺はこの試合……完投する気持ちで投げる)


 強く意気込む伊東。そのマウンドの熱を感じ取ってか、1番バッター瀬田は身震いする。



(クロ高のピッチャー陣って、やけてに意識高いよなあ)


 初球――積極的にスイングする瀬田。ストレートにタイミングを見事に合わせるが、セカンド今宮がしっかりとキャッチし、一塁に投げる。


「アウト!」


 先頭打者である瀬田をアウトにする伊東。その次の山田もレフトフライに倒す。


(おいおい……勢いづかせてどうするんだよ……)


 3番の白里弟が打席に立つ。


(パワーもあるし……足もある。決して侮れるタイプのバッターではないな)


 初球アウトコースのストレートを走らせる。見逃す虎次郎。



(なるほど、クロ高の三年生って感じの、洗練されたストレートってやつだな)


 二球目――アウトコースに落ちていくフォーク。空振りする。


(おいおい……めちゃくちゃ良いフォークもってんじゃねえか)



 そして、三球目……高めの釣り玉のストレート――これを空振りしてしまう白里虎次郎。



「ぐっ……」


「バッターアウッ!」


(あんのバカ……)


 ベンチで頭を抱える白里一哉。グラブを着け、守備へと向かう。



(なるほど……クロ高も簡単に勝ちをやるつもりはないらしい。ただ……こいつを4番に置いてる時点で……そんなに……じゃん?)


 冷静に打席に立つ大滝を見ながら、柏木は笑みを浮かべた。……2回が始まろうとしている。


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