表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Dr.Kの鼓動  作者: パワプロ58号
7.県予選
164/402

第164話「運命の抽選」

 いよいよ県予選まで一週間を切っている。抽選へと向かう絹田監督と今宮と小泉。


「緊張しますよね」

「ああ。緊張するな」


 監督の運転で抽選会場へと向かう三人。小泉の声に今宮が同調する。


「福井県は高校数こそ少ないが……鉄日、初巾、黒光と言った有力校が揃った激戦区である――記事で紹介されてる」


「黒光、初巾、鉄日、三浜、福富、鶴工業、武里、藤崎の8校はベスト8の再抽選されるまで当たらないようになってる」

「でも、どこかの高校はその8校を破って進んでくることは有名な話ですよ。藤崎だって、それで明誠を破りましたもんね」

「今年は……俺たちがそうなるかもしれない。つまり、緒戦だから絶対に突破できるということが言い切れないのが怖い所だよ」



 今宮の心配する様子に、小泉もどこか不安げな表情をする。




 抽選会場に入ると、いきなり現れたのは、鉄日高校の黒鉄であった。


「く、黒鉄……」

「よう……元気してたかよ。U-18の正二塁手」


「(エースが……っていうとつけあがるんだろうな)よう黒鉄。元気かよ」

「ったりめえだ。俺は夏の甲子園に向けて調整してるんだよ。今年も準決勝まで出番がねえと良いな。ま、宮城が調子崩してるっぽいから、ちょっと心配だけどな」


 それでもどこか余裕のある態度に、今宮は腹が立った。


「そういえば静ちゃん怪我してるんだっけ?」


 そう、こう来ることがわかっていたからである。


「るせーよ。お前らとやるときには勝ってやるから心配すんなよ」



 今宮は捨て台詞を吐いて黒鉄の前を去っていく。



 会場のホールが異様な雰囲気に包まれた。そう、これから抽選が始まるのである。


(去年の秋予選の結果順に抽選くじが引ける――つまり、俺たちは最後から二番目)



 次々に各校のキャプテンがくじを引いていく。聞いたことのある高校、練習試合をしたことのある高校、友達が通っている高校……などなど、次々とトーナメントに名前を埋めていく。



「おっ……」

「あれは……」


 藤崎高校の道中桔平である。残すところ8校になったのである。


(一回戦から強豪と当たってまうかわいそうな高校は……松野学園マツガク阿賀黎明あがれいめい県立松野ケンマツ奥野おくの県立越谷ケンエツ田賀たが野海のうみ西馬せいまか……ふん、藤崎ウチやったらどこも蹴散らせる……)


 引いた番号は6――田賀高校の隣である。そのブロックには、平田恒太や猿渡紋太を擁する鶴高校もいた。


「二回戦で道中と戦うみたいだね。猿渡はあいつを打てる?」

「打たなあかんよなあ」


 キャプテンの平田に抽選でついてきていた猿渡。白銀世代に含まれる彼は、苦笑いしていた。


「道中は確かに全国クラスの投手やけど……大丈夫や。強いんは道中だけや」

(ウチもそういうチームだ……猿渡が抑えられたら終わる……でも、そうならないために俺たちだって練習してきたんだ。頑張るぞ)


 平田は、その抽選結果を、写真に撮り、会場を後にした――



 続いて武里高校が、3の数字を引く。これに反応したのは、秋江工業の江戸川凛乃介である。


「おっ……武里か……」


 同ブロックの秋江工業は、その情報をすぐさまチームメイトに流す。


(鉄日や初巾だったらやばかったけど……今年の俺らなら倒せないチームじゃない。とりあえずベスト8は手堅くもらってやる)


 福富商業が8、鶴工業が2を引く。


「初戦は西馬だぞぉおおおお!!」


 福富商業のキャプテン、高月広嗣が叫び、もはや西馬高校を威圧していた。西馬高校のキャプテンはどこか上の空だった。


「マジかよ……そんなことってあるかあ……?」


 鶴工業が引いた番号に反応するのは、阿賀黎明高校のキャプテンだった。


「どうにかなる?」

「わっかんねえ。大利おおとしのことも考えねえといけねえのに」


 そして、ベスト4組がくじを引く――初巾高校のひいた4の数字に、奥野高校のキャプテンは絶句していた。


三浜高校が7を引く。野海高校のキャプテンは強気な姿勢だ。


「ふん……柴川だか坂東だか知らねえが、ここじゃあ負けらんねえよな!」


 そして、残るはクロ高と鉄日高校である。今宮はくじに手を伸ばしながら考えていた。


(1か5……マツガクかケンエツか……どっちもぱっとしねえが……二回戦で当たる高校に赤佐高校がある方――5は引きたくねえな)


 胸を躍らせながらくじを引く。


(まあ、どこだろうと勝つけどなッ!!)


 引いた番号は――1。松野学園の隣である。



「クロ高やで……」

「大したくじ運やなあ」


 絶望する松野学園の横で不敵に笑うのは、そのさらに横に位置していた昂大こうだい高校である。


「ったく……チームメイトから怒られちゃうなこれ」

「いや、むしろ大歓迎でしょ……ジャイアントキリング……見たくない?」

「だな……」


“KODAI”と書かれたジャージを身にまとった彼らは、どこか自信がありそうな表情をしていた。その様子を二列後ろから眺めていた小泉――


(夏大会の怖い所は……何があるかわからないところ……)






 くじの結果を持ち帰った今宮。対戦表と参加校名簿が書かれた冊子を、部活のミーティングで全員に配る。



「今宮さんナイスくじ運っすね!!」

「明誠も鶴も秋江工業もいない……これはデカい」


 浮かない顔をしている小泉。


「えっと……どうしたの小泉ちゃん?」

大滝が尋ねる。


「抽選会での昂大高校の様子が気になって……調べてみたんです。色々記事とか」


「うん」


 落ち着いて話を聞く大滝――小泉の顔は明らかに曇っていた。


「……そしたら……」


 小泉が見せたのは、とある練習試合の結果――対戦相手は、鶴工業と武里高校。そして、初巾高校であった。


「鶴工相手に4-0で勝ってる……」

「いや、それだけじゃないね……」


金条も寄ってきた。


「武里に2-0、初巾には負けたとは言え、5-3。しっかりと点を取ってる」

「打撃力は文句なしにシード校レベルってことか?」


 大滝が金条に尋ねる。


「うん。間違いなく。鶴工業と武里を0に抑える投手力も、並みじゃあない」

「普通につええじゃねえか」


「バカかお前ら。昂大がつええのは間違いないけど、負ける相手じゃあねえ。それよりも、一回戦のマツガクが相手だろ? そっちに照準を合わせねえと」


 田中に言われて二人ははっとする。


(そうか……俺たちはなおかつエースの新田さんなしで戦わないといけない)

(鷹戸やコドーが投げることになるんだろうか……)


「まあ、対戦相手の松野学園は、新設されて数年の私立高校というわけだが、1期生が三年生になる今年、懸けてくるものがあるだろうな」


 監督の言葉に、全員が息を呑む。


「そいつらと同じくらい、お前たちにも懸けるものはあるか?」


 全員が強く頷く。



「それじゃあ練習を始めるぞ。投手陣と……金条は残っていてくれ」

「はい!」




 絹田監督に呼ばれ、残った古堂、鷹戸、伊東、小豆、金条。そして、井上と呉井の一年生投手の二人も残った。


「二年生以上の投手4人。お前たちには……背番号を与えることを約束しよう」



 絹田監督の言葉に、一番反応を見せたのは小豆だった。


「えっ……僕にも……ですか?」


「ああ。そうだ。お前にもだ」


(や……やった……18枠しかないうちの一つを……もらえたんだ……)


「そして、金条……薄々気づいているとは思うが……お前には正捕手として2番を背負ってもらいたい」

「はい」


 二つ返事で即座に答えた金条。


「……新田が抜けるこの夏大会予選。昂大高校は言わずもがな強敵。そして……なにより、ベスト8の再抽選の日が新田の完治日となっている。つまりどういうことかわかるか? 伊東」

「……はい。準々決勝で鉄日などの強豪校と当たるっていう際に、復帰間もない新田を登板させるのは危険だと思います」

「その通りだ」


 鷹戸も古堂も息を呑む。


「お前たち4人の力で……せめて、決勝……いや、ベスト4まででも構わない。行けるか?」

「行けます!!」


 即座に叫んだのは古堂だった。


「負けません」


 鷹戸も続く。


「新田さんと伊東さんの最後の夏……簡単に終わらせたくないですよ僕だって!」


 小豆も答えた。


「自分は……投手の希望に応えるだけなので。これが答えっす」


 金条も頷いた。


「ならば……任せたぞ。お前たちピッチャーに懸かっている」

「「はい!!」」


 全員が大声で返事を返した――


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ