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Dr.Kの鼓動  作者: パワプロ58号
7.県予選
158/402

第158話「U-18」

 今宮がU-18の合宿へと向かうのは、親善試合の2週間前。今日の連絡が来たのが、そのさらに一週間前のことであった。


「大事な時期にチームを離れるわけだが……どう思う? コバ」

「……うぅん……正直心配だよね」


 今宮が相談していたのは、小林。どうも田中や山口には相談できるような内容ではなかった。


「本来ならばチームをまとめていかなきゃいけないはずの二人が、今は意見の食い違いで対立している……」

小林が心配そうに見つめる先は、室内練習場。いつもなら互いに打撃のアドバイスをしあう二人が、対極の位置で素振りをしており、お互いに田中は大滝と、山口は佐々木とアドバイスをもらい合っている状況だった。


「金条とかはただでさえ不安な投手陣をまとめてもらわなきゃいけないし、何より後輩に頼るのはもってのほかだよな」

「芝や坂本は試合に出たいっていう熱意で下から押し上げることに専念してもらいたいし……」

小林と今宮で、この状況に頭を抱える中、伊奈がたまたまそこに顔を出す。


(やっぱ、三年生大変そうなんだな……まあ、俺は田中さんの意見にどっちかつーと賛成派だけど……無理にこれまでの形変えるのもなんか怖いし)


「伊奈センパイ! スイング見てもらっていいですか!?」


 伊奈を呼ぶのは、1年生の森下龍。黄金世代の弟である。


(俺も正直うかうかしてられないけど……やっぱ結果はそこそこ出してるし……)




 室内練習場の中で対立ムードが広がっている田中と山口。合宿から日も空き、お互いに周りの人間を巻き込み、田中派、山口派ができている始末であった。これには二年生も物議を醸しており、林里、佐々木、小豆の三人でそのことについて話しているところだった。


「山口さん急に堅い堅い。クロ高は練習こそ厳しくやるけど、試合中は楽しくがモットーなわけじゃん? そこまで気を張ってたら持たないよ」

こう言っているのは林里勇。二年生のショートで、田中派についていくことにした人間である。おおよそ部員3分の1が田中派。もう3分の1が山口派、そして残りの3分の一である今宮や小林や大滝らは、中立派として真ん中に立っているという状況だった。


「佐々木は、分裂に関してどう考えてる?」


 林里に問われ、佐々木は少し考えている様子だった。その様子を見かねて小豆が口を開く。


「僕はさ……ピッチャーだから、あんまりこういうのに流されずに我を貫いた方が良いんじゃないかなーって思ってる。いつでも最高のパフォーマンスができてこそって感じがするから」


「小豆、コドーっぽくなってきたな」

「ああ、確かに。A戦で投げて自信ついたか?」


「それなら、林里も自信ついてきたんじゃねえの? 内野安打も決めてたし」

「佐々木だってヒット打ってたじゃん。松下さんから打つって相当だぞ」


「まあ……俺は山口さんから色々教えてもらってきたし。実際に山口さんの教えがあったから打てたって気はする。……となると、やっぱり、山口さんの常日頃からのメンタリティは参考にするべきなのかなって思うし、となってくると今の環境に甘えてちゃいけないかなとも思う」

佐々木の言葉に、林里は頷いた。


(……佐々木も結果出してるからな……悔しいけどこいつの言ってることは正しい。っつうか山口さんの言ってることも正しい。でも、田中さんの言ってることを全否定するのはよくねえと思うし……)


「……とりあえず、今宮さんもいなくなる週末の練習試合で武里と鶴工業のダブルヘッダーするんだし、備えとかないと。先輩たちが分裂してる分、僕たちがもっとしっかりしないとだよ」

「小豆……」


 小豆の言葉に納得し、それ以上は何も言わない佐々木と林里。




 その日の晩、今宮は不安を抱えながらも寮の荷物をまとめている。相部屋の一年生、田中塁がその様子を見ていた。


「……今宮さんってやっぱ凄いっすよね。多分九頭竜シニアにいたら俺はレギュラーじゃなかったっす」

「どうした? ビッグマウスがお前の持ち味だろ?」


「……兄貴……ユウは……山口さんと喧嘩してますけど、実際は新田さんがケガして動揺してて、一緒に甲子園に絶対に出たいって思ってるだけなんです」

「わかるよ。俺もあいつとは2年の付き合いだ。(どっちも、チームの為を思って言っている。だからどっちも間違っていない)」


 それゆえに、今宮はかける言葉が見つからなかった。


「小林に臨時キャプテン任せてあるから、何かあったらあいつを通じてでもいいから伝えてくれな」

「はい……!」


(古堂はまだ練習か……)


 窓には月が出ていた。




「おはようございます!!」


 高らかな声であいさつが飛び交う。すれ違う人それぞれに、緊張感が現れている。


(全国の強豪が集まる……その中でも優秀だと認められた高校生たちが集まる……U-18日本代表合宿――)


 今宮陽兵は、その合宿が行われている東京のグラウンドまでわざわざ出向いていた。


「よぉ今宮じゃねえか。センバツに出てない、春は北信越すら出ていないのに良く選ばれたなお前」

「ふん、うるせえ。クロ高は夏強いチームなんだよ」


 いきなり今宮に小言を投げかけてくるのは、黒鉄大哉。同じく福井県にある鉄日高校から来たピッチャーである。


「んで、今回……福井県勢はレイモンドと地村もいる。ありがたい話だぜ」

「4人もいるのか……」


「あれ、クロ高のキャプテンやないか」

「お前も選ばれてたんか」


 関西弁が聞こえる方を向けば、野淵藍平と多田恒興がいる。その後ろには、岡田聖也、中島勇吾、そして松下巧介が立っていた。


「開盟と桐陽の大阪組だな。大阪だけで5人も選ばれてるってやべえな」



 ぞろぞろと選手が一方を向いて集まっているのがわかった。ざっと20人はいる。彼らの視線の先に立つ男こそ、武石肇。U-18代表監督である。


「えー、今回みんなに集まってもらったのは――」


 武石が口を開くと、全員が口を閉じて姿勢を直す。


(やっぱ上に立つ選手ってのは、こういうところきっちりしてんだな……)


「今回、代表選手として投手8名、野手16名の24人を選抜させてもらった。そして、現在の仮の背番号を決めさせてもらった。名前を読み上げる」


「1番ピッチャー、黒鉄大哉」

「はい!」


(マジ? あいつエースなのかよ)


 仮の番号とはいえ驚きを隠せない今宮。自分の名前も読み上げられ、全24名が一列に並んでいた。


1.黒鉄大哉(投) 鉄日高校(福井)

2.法寺覇月(捕) 諏訪涼成高校(長野)

3.三好和徳(一) 明徳高校(高知)

4.前島まえじまアラン(二)大堀内高校(福岡)

5.和賀頼二(三) 知廉和歌山学園(和歌山)

6.芳賀山仙(遊) 清龍高校(石川)

7.岡田聖也(左) 桐陽学園(大阪)

8.レイモンド(中)初巾高校(福井)

9.中島勇吾(右) 桐陽学園(大阪)

10.茅場 清(投) 明徳高校(高知)

11.住友龍二(投) 秀英館高校(熊本)

12.堤 俊也(捕) 知廉学園(奈良)

13.地村 洋(一) 鉄日高校(福井)

14.今宮陽兵(二) 黒光高校(福井)

15.藤間武士(三) 名豊高校(愛知)

16.野淵藍平(遊) 開盟学園(大阪)

17.知多哲也(左) 明徳高校(高知)

18.鉛野太陽(中) 龍宮高校(高知)

19.畑木秀太はたき しゅうた(右) 東南大付属高校(神奈川)

20.多田恒興(一) 開盟学園(大阪)

21.武永吾郎(一) 爽田実業高校(東京)

22.松下巧介(投) 桐陽学園(大阪)

23.川島宗篤(投) 大牧高校(北海道)

24.鷲尾理知(投) 龍宮高校(京都)

25.渡 守 (投) 花丸大宮高校(宮城)

26.遠野阿月とおの あつき(投) 東南大附属高校(神奈川)



 今宮はふと、自分の両隣を見た。


(地村と藤間……二人とも全国レベルのスラッガー。多田や武永みたいなやつらが20番代の背番号……やっぱこの日本代表、昨年同様勝ちに来てるな……)


「早速、AチームとBチームで練習試合を行いたい。Aチームのオーダーから発表する」


 Aチーム オーダー

1番ライト、中島勇吾。2番ショート、芳賀山仙。3番センター、レイモンド=アルバード。4番ファースト、三好和徳。5番レフト、岡田聖也。6番キャッチャー、法寺覇月。7番DH、武永吾郎。8番サード、和賀頼二。9番セカンド、前島アラン。ピッチャー、黒鉄大哉。


 Bチーム オーダー

1番ショート、野淵藍平。2番ライト、畑木秀太。3番DH、多田恒興。4番ファースト、地村洋。5番サード、藤間武士。6番レフト、知多哲也。7番センター、鉛野=リチャード=太陽。8番キャッチャー、堤俊也。9番セカンド、今宮陽兵。ピッチャー、川島宗篤。


「Aチーム投手陣は黒鉄、茅場、住友、松下。Bチーム投手陣は川島、鷲尾、渡、遠野だ」

(そりゃあ圧倒的にAチームの評価は高そうだな。でもこれは“Bチームは少しでも活躍の場を見せれば昇格のチャンスがある”ってことだ。意識高く持ってやっていこう)

大牧高校のエース、そしてBチームのエースである川島は武石の言葉に強く頷いた。ふと地村と目が合う。


(正直、黒鉄の球に見慣れてる地村もいるし、県予選で黒鉄から打ったって噂の今宮クンもいるし、選抜でメッタ打ちにした知多くんもいる。負ける理由はなさそうだ。なにより、今回バッテリーを組むのが、知廉学園の堤。最高の捕手じゃないか)


 テンションが上がる川島をよそに地村はただ一つのことしか考えていなかった。


(ここでチームが勝つために研究する――ちょうどいい全国の投手共が揃っている。球を見定めておこう)


 それぞれの思惑を抱え、早速紅白戦へと移っていく。


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