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Dr.Kの鼓動  作者: パワプロ58号
6.GW
123/402

第123話「打者として」

 二回裏、マウンドには古堂、打席には泉中が立つ。


(まさか、諒真とハルの二人を凡退させるなんて……しかもスローカーブを使わずにだろ)


 そんな彼も、アウトコースのストレートとシュートの二球で追い込まれてしまう。


(ここまでスローカーブを使ってこなかったのはブラフ? でもストレートが来たら打てないし、カットボールを狙うってのはいささか博打が過ぎるよな……)


 金条の配球を読み込む彼に対し、古堂が投げたのは、シュート。内角ギリギリを抉り込む球――


「ぐっ!」


 何とか打ち返す泉中だが、詰まった当たりになりセカンドゴロになる。


「よっしッ! 1アウト!!」


 田中塁が打球を捌いたのちに大声でエールを送る。


「おっけえ! どんどんいこーぜ!!」

「簡単にいくかよ……」


 盛り上がるクロ高に対し、冷徹な声で打席に立ったのは、赤河栄介。6番打者である。


(俺はこの試合で、使えるってことを証明して見せる)


 右打席に立つ赤河に対し、古堂は初球から内角のクロスファイアのカットボールを投げ込む。これに対し、赤河は初球からフルスイングでボールを打ちぬいた。


「セカンドッ!」


 詰まった当たりの打球は、セカンド後方にふらふらと落ちていく。


「ぐっ!」


 セカンド田中塁が滑り込むが、間に合わない。ライト伊奈が前に詰めて打球を拾う頃には、赤河は一塁ベースに到達していた。


(ちっ……ポテンヒットか)


 納得いかない様子の赤河。しかし、ファーストを守る森下は畏敬の念を抱いていた。


(あのポテンヒットはフルスイングした結果だ……。初球からあんなに振れるなんて、きっとバットを相当振ってきたに違いない)


 そんな赤河のヒットが出るも、続く迫田がサードフライ、影山が三振に倒れ、二回裏の攻撃を終える鉄日高校。


「ナイピだぜコドー。全然打たれてないじゃん」

「鉄日打線を一巡目、ヒット二本。しかも、クリーンナップを完全に抑えぬくとは……予想以上の出来だな」


 伊奈や大滝は、ベンチに戻ってきた古堂の頭を叩きながら祝福している。そんな古堂がネクストバッター。中学からの旧い友、宮城との対決である。


 左打席に立つ古堂に対し、容赦のないインコース攻め。三振に倒れる古堂。


「ここぞとばかりに実力を見せてきてたな」

「闘争心の強いやつだこと……」

伊奈と林里は帰ってくる古堂を励ましている。


「佐々木、お前同じ中学だったんじゃねえの? どんなピッチャーだったよ?」


 大滝が、ベンチ内にて佐々木に話しかける。


「……いや、こんな感じだったよ。とにかく隙がないというか。第二中がいいところまで行ったのも、結局あいつのおかげだったし」

「そうだよな……陽明中時代はコドーを差し置いてエースやってたピッチャーだもんな」


 古堂のことはなんやかんやで認めていた大滝にとって、宮城という投手の評価は上がらざるを得なくなっていた。


 田中塁がショートゴロに倒れたところで、林里が打席に立つ。しかし、変化球を有効に使われ、三振に倒れる。

「ストライークッ、アウト!」


 悔しさをにじませる林里にグラブを渡すのは、1年の河中瑛五朗。


「ザトさん、こっからっす」

「ああ、そうだな……」


 三回表を簡単に終えてしまったため、悔しさが残る。しかし、古堂は動じない。


「ストライークッ、バッターアウトッ!」


 宮城、沢口、四方の三人を三振に抑え、前回から合わせて4者連続三振を果たす古堂。


「いや、ナイス金条。変化球効いてるね」

「お前の力だよ、コドー。シュートキレキレじゃねえか」


(初巡はカットボールを織り交ぜた直球中心配球でゴロを打たせ、二巡目は変化球を混ぜて三振を取りに来る感じか……打者に慣れさせない気だな)


 宮城はにやりと笑ってマウンドに向かう。


(迫田は、肩や捕球力こそ優れてるが、金条みたいにエロいリードするわけじゃねえ。ピッチャーの力を利用した、ごくシンプルな配球をする。もっとも、中学時代から実績のある黒鉄や宮城にとっては、そういうキャッチャーの方がやりやすいだろうし、迫田もそこはわきまえてるんだろうな)


 乾監督はそんな迫田を見ながら、二巡目を見守る。二番打者の佐々木を追い込んだのちのストレート――打ち返す佐々木。


「二遊間!」


 ピッチャー返しを取れずに叫ぶ宮城。二遊間を抜けていく。浅めに守っていた四方がしっかりと捕球するが、ヒットになる。


(イザナはまだ、黒鉄さんほどじゃないか)


 迫田は立ち上がり、マウンドに向かう。


「次回うちはクリーンナップから。木口だって次は黙ってないだろうし、月守だって合わせられてる。一点は取られたってどうってことないさ。配球はどうする?」

「ストレート調子良いし、やっぱりこれ主体でいきたい」

「おっけ。まだヒット1本。今日はアレ使わずに行けると良いね」

「ああ……。確かに。まだ見せたくはないな」

「んじゃ、スライダーとカーブとシュートを見せ球にしつつ、ストレートを軸に持っていこう」


 迫田と宮城が会話を終えたところで、伊奈が打席に立つ。


「俺をもう一回打ち取るための算段ついたか?」

「……まあね」


 初球のストレートが内角を抉り込んでくる。

「ストライーくっ!」


(さすがのストレート。暗黒世代の中じゃ鷹戸の次ぐらいに速いッ……)


 伊奈は目を見張る。二球目の変化球――カーブがまたしても内角ギリギリに決まって追い込む宮城。


(切れ味鋭い――本格派か)


 コントロールの良さもしっかり見せてつけてくる宮城。続いて、一球外したスライダー。見逃す伊奈。


(さっきは直球力押し。俺はさっき三振。ってことは、まだ通用すると踏んでくるよな)


 投げ込まれるストレート。インコースに飛んでくる。


(だからと言って確実に打てる保証無しッ!!)


 伊奈はバントの構えをし、そのままバットにボールを当てた。打球の勢いが死ぬ。


(こいつバントできるのかよッ!)


 一塁線を転がる打球。器用なバントに、両ベンチは驚きを隠せない。


「伊奈ってこんなにバント上手かったっけ?」

「器用な奴だからね……今更驚かないけどね」


 林里の問いに、苦笑いする小豆。


(練習した甲斐あったな。伊奈!)


 送りバントを決め、1アウト2塁の状況を作り上げるクロ高。打席には4番大滝。


(チャンスでこいつはちょっとやだな)


 迫田が思案しているが、宮城は迷いのない様子。


(勝負か。まっ、こいつ……今日は熱入ってるみたいだし、何より練習試合。投げさせていいか)


 初球、ストレートがアウトコースに決まる。手が出ない大滝。


(さすがのコントロールッ! 新田さんほどじゃないけど……直球の速さとか考えたら十分だ)


 大滝は大きく息を吐きなおす。しっかりと宮城を見据えた。


(雰囲気あるよなあ。伊奈に比べたら変化球への対応力には乏しいけど、パワーがあるからまぐれが怖い。やっぱりストレートをコースに突くのが一番か)


 迫田のサインにうなずく宮城。インローにストレートを決める。

「くっ!」

ストライクになり、追い込まれる大滝。


(マジでストライク先行だな。セットポジションでも変わらない球威は……恐ろしい)


 三球目のカーブをひっかける大滝。しかし、フルスイングで振りぬかれたバットによって飛んできた打球は鋭く跳ねて、ショートのグラブを交わしていく。


(クソッ!)


 センター四方が打球を拾う頃には、佐々木は三塁に到達しており、チャンスを広げていた。


「よしっ、森下ッ!! チャンスだぞ! 今日初めての!」

「ですよね……」


 森下が自然と固くなっているのがわかった金条。声をかける。


「森下。お前のスイングをしてこい。外野フライでも一点だ。内野ゴロでも佐々木は走る。振りぬくなら振りぬく。繋ぐなら右方向へ。徹底すれば大丈夫だ」

「……はい!」


 少し背中が大きくなった彼に、一塁ベースから大滝が叫ぶ。


「秀さんみたいなことは求めてねえ! お前は森下龍だッ!!」


 大滝の言葉にも鼓舞され、森下は息を整える。


(そうっすよね……ああ、ほんとにいい先輩たちだ)



 宮城はピンチの場面だろうと、表情を何一つ変えない。


(一点覚悟……っていったって、打席には一年。あの黄金世代の森下秀さんの弟らしいけど、だからって打たれて仕方ないってことはないでしょ!)


 初球からスライダーを投げる宮城。迫田はにやりと笑う。


「ストライク」


 主審の声。大きく空振りする森下。


(そうだ。それでいい。らしくいけ)


 ベンチから、金条は笑っている。


 二球目、高めの釣り玉に手が出る。大きく打ち上げるが、バックネットに当たる。


「ナイススイングッ!!」

「負けるなッ!」


 ベンチから後押しする声。森下はにやりと笑った。それに対し、宮城は平然としている。鉄日ベンチも、マウンドに立つ彼を後押ししようと必死に声を出す。


(ありえるとしたら、外野フライか……こんだけフルスイングしてるんだもんな。水樹の肩に任せよう……)


 三球目――インコースにカーブ。引っ張らなければ打てない箇所。しかし、左翼そこには浅く守っている泉中。ほどよく脱力した球が、弧を描いて膝元に落ちてくる。


(えっ、こんなに落ちるのかッ……んで、こんなにギリギリに……入るのかッ!?)


 一瞬迷いが生じる森下。しかし


(俺だってクリーンナップ。絹田監督が、チームメイトが、クロ高が、打者としての俺に期待してるんだッ!)


 森下は振りぬく。打球はあまり高くはないライナーとなって飛んでいく。


「レフトォ!!」


 ベンチの叫び声。レフト泉中は後ろから捕球体勢を整えている。


「よーい……」

 三塁ランナーコーチが三塁ランナー佐々木に準備を促す。


「アウト!」「どん!」


 泉中の捕球と同時に走り出した佐々木。


(刺すッ!)


 泉中の肩からボールが振りぬかれる。鋭い送球は、ツーバウンドでキャッチャー迫田の元へ。しかし、佐々木もそんな迫田をかわし、ホームに滑り込む。タッチしようとキャッチャーミットを向ける迫田だったが――


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