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第15章 文化祭の開始4

 お化け屋敷を抜けた後、少し慣れてきたのか、織姫は興味深々と言った様子で学園際を見ていた。

 相変わらず倉山の後ろに隠れてはいるが、目を輝かさて文化祭を楽しんでいる。

 一通り回ったところで、すっかりお昼を過ぎてしまい、三人で焼きそばを買って、校内の隅のベンチで食事をしていた時だった。


「そう言えば、雄介様のクラスは何のお店をしているんですか?」


「え!」


 とうとう恐れていた話題が浮上してしまった。雄介はそう思った。

 自分のクラスである、メイド喫茶に本当に連れて行って大丈夫であろうか、雄介はずっとその事を悩んでいた。

 教室に行けば、優子が居るし、なぜか美少女と聞くと異常なバカ騒ぎを始めるクラスの男子諸君もいる。

 雄介自身の心配もあったが、織姫の心配もあった。


「あそこに連れてったら、あいつらうるさいだろうしなぁ……」


「はい? 何かい言いましたか?」


 不思議そうな表情を浮かべて俺を見てくる織姫。


「なぁ、織姫……」


「はい?」


「楽しいか?」


 俺は織姫の方を向いてそう尋ねる。

 すると、織姫は少し考えて答えた。


「はい! 楽しいです!」


 笑みを雄介に向けながら織姫は言う。

 雄介はその表情に安心し、織姫から視線をそらして焼きそばを食べる。


「そうか……誘ってよかったよ」


「はい、雄介のおかげです」


 織姫は頬を染めながら、雄介に笑いながらそう言う。

 雄介は自分のおかげだと言われ、少し照れる。


「お前に素直にそんな事言われるのは気持ちが悪いな……」


「どういう意味ですか!」


 照れ隠しなのか、それとも本心なのか、雄介は織姫をからかうい、織姫はそんな雄介に不満を漏らす。

 横で見ていた倉前は笑ってその姿を見ていた。

 そして雄介は、次の行き先を織姫と倉前に告げる。


「今度は俺のクラス行くか…」


「ハイ! 言ってみたいです!! 確かメイド喫茶をやっていると!」


「倉前さんからしたら、お遊びも良いとこだろうがな……」


 雄介は織姫たちを自分のクラスに連れて行くことにした。

 今日で最後なんだ、雄介はそう自分で心に言い聞かせる。最後なら、自分なりに織姫に強力しようと思い、その結論を出した。


「楽しみですわ~、一般の方はメイドをどんな風にとらえているのでしょう……」


「なんか、倉前さんが一番楽しそうだな……」


 三人は焼きそばを食べ終えて、そのまま雄介のクラスに向かった。

 クラスにつくと、雄介は思ったより客足が少ないと感じていた。

 メイド喫茶という、いかにも目立ちそうな出し物にも関わらず、雄介たちのクラスはまずまずの客足だった。


「おいおい、どうしたんだ? さっきまで結構お客さん居なかったか?」


 雄介は先に中に入り、中に居た慎に状況を尋ねる。

 慎は暇なのか、バックヤードで携帯を弄っていた。


「ん? 帰って来たのか。どうもこうもねーよ、先輩たちのレベルの高い店に皆行っちまった」


「そう言えば、確かに色々すごかったな……」


 雄介は織姫たちとクラスを回っていた時の、各クラスの出し物の事を思い出す。

 里奈のクラスのお化け屋敷も、空き教室二つを貸し切って作っており、メイクのレベルも高かった。

 他のクラスも、工夫を凝らしている物ばかりで、俺達一年とはレベルが違っていた。


「それでか……そう言えば優子は?」


「ミスコン行った」


「あぁ……」


 雄介は慎の言葉に納得する。優子の可愛さなら、出場しても不思議ではない、そのせいで休憩が無い事になっていたらしく、優子の居ない教室はなんだか冷め切っていた。


「店長!! どうにかしてくれよ!」


「そうよ! 店長でしょ!!」


「誰が店長だ! いつ俺が店長になったんだよ!」


 慎と雄介が話をしていると、堀内と江波が雄介に向かって行ってくる。

 メイド服の江波は女子だから良いとしても、堀内のセーラー服はおぞましい。そんな事を考えながら雄介は二人から距離を置く。


「あの……雄介様、入ってよろしいでしょうか?」


「雄介? どうかしたの?」


 雄介が遅くなったのが気になったのだろう、織姫と倉前が教室の中に入ってくる。

 その瞬間、クラスの男共が目を光らせて教室の入り口を凝視する。


「「「美少女の気配だ!」」」


「マジで、こいつら何者だよ……」


 雄介がそんな事を考えていると、クラスに居た男子全員が、倉前と織姫を囲む。


「ようこそいらっしゃいました! お姉さま、お嬢様」


「出来の悪いメイだけしか居ませんが、どうぞおくつろぎ下さい!」


「おい! そこの男子、今なんつった!」


 雄介はしまったと思った。

 あれだけの男子に囲まれてしまえば、織姫はまた気分を悪くしてしまうかもしれない、雄介はすぐに男子の中に入っていき、二人をかばうように前に立つ。


「おい、客だぞ! お前らが暴走してどうすんだよ!」


「なんだ今村、知り合いか?」


「なんだと! またこいつは美少女を連れて歩いているのか!!」


 男子生徒からの厳しい視線が雄介に集まる。


(あぁ、またこんなか……)


 雄介はそう思いながら、男子を散らせる。

 そのまま織姫と倉前を雄介は席に案内し、メニューを尋ねる。

 織姫は紅茶を倉前さんはアイスコーヒーを注文し、そのまま席で持つ。


「おい、大丈夫か? 織姫」


「は……はい……何とか…」


(あぁ、これは駄目だ……)


 雄介はそんな事を考えながら、真っ青になった織姫の顔を見る。

 やはりここに連れてくるのは間違いだったか? そう思いながら、雄介はバックヤードに向かい、注文されたものを用意する。


「おい、あの子が星宮財閥の?」


「あぁ、まぁな……。優子が居なくて助かったよ、あいつが居たら大騒ぎだ……」


「フーン、まぁ優子が居なくても、大変な事にはなってるがな……」


 慎の言う通り、雄介の背後には、嫉妬の怒りをまとったクラスの個性豊かな面々が、雄介を睨みつけている。


「おい今村!! お前加山さんという人がありながら……。あの美少女と綺麗なお姉さんは何もんだ!!」


「そうだ! 俺たちは、お前になら加山さんをと……見損なったぞ!!」


 紅茶とアイスコーヒーを用意する後ろで、雄介はクラスの男子から攻撃的な言葉を浴びせられ続ける。


(これだから、うちの男子共は…)


 そんな事を考えていると、今度はメイド姿の女生徒たちが、雄介を睨んで何やら話を始める。


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