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絵描きな彼女

作者: 八月一日

「なあ、毎回言ってるけどさ。この部屋いつ整理すんだよ」

「いつっていつもしてるじゃない」

「どこがだよ」


 俺は今、幼馴染の夕凪刳葉(ゆうなぎくるは)の部屋にいる。そしてその刳葉の部屋はとんでもないことになってる。

 床一面に広がる紙。

 和紙 トレーシングペーパー ケント紙 ボール紙 ファンシーペーパー パステル紙 画用紙 水彩紙

 それぞれ荒さも変えた紙がそこらじゅうに散らかってる。しかもそれ全部に絵がかいてある。


「智樹の右足から3枚目には樹の絵、その横には人物画」

「合ってるけど、あってるけどさ。脚の踏み場がねぇえっての」

「あるでしょ。そことか」


 刳葉がシャーペン片手に指差してきたのはほんのわずかな隙間。


「……もういい、片づける」

「んーよろしく」


 なんだろこの流れ。

 もう定番のようになってるこの片づけ。そして片づけをしている間にも刳葉は絵を描いてはそれを床に散らかしていく。注意してもやめないからもう諦めた。

 とりあえず系統別に分けていく。刳葉が描く絵はとりあえず系統が決まってるからまとめるのは楽だ。楽だけど。


「なあ、そろそろ収納スペースなくなってきたんだけど」

「あるでしょ、智樹の部屋」

「おい、俺の部屋は収納スペースじゃねーぞ」

「え? 違うの?」

「ちげぇよ」


 心底驚いたって顔を向けてくる刳葉。こいつ俺の部屋をなんだと思ってんだ。


「あー、やっぱだめだ」

「なに、どうしたんだよ」


 刳葉はその問いに答えることなく、椅子から立ち上がるとすたすたと俺に近づいてきた。


「な、なんだよ」

「てい」

「うおっ」


 ずいっっと近づいてきた刳葉はぽーんと両手で俺を押すとそのうえにのしかかってきた。俺が倒れた先はベッドで俺は今刳葉に押し倒されわけで。


「お、おい何考えてんだ?」

「うるさい、黙ってて」


 刳葉はそういってぺたぺたと体を触ってくる。


「ふむふむ……邪魔だなぁこれ」

「な、おい刳――ッ」


 なにやら思案顔をしたと思ったら今度は俺の服の裾に手をかけた。


「意外と筋肉あるんだね。ていっ」

「何がしたいんだよ、一体……」


 軽く握り込んだ拳で何度か腹筋をたたいた刳葉はまた思案顔になり、今度は自分の服に手をかけた。

 いや、ちょっと待て。


「待て待て待てッ何してんだよ一体ッ!?」

「何って、脱いでるんだけど」

「しれって言ってるけどそれかなりおかしいからなッ」

「服が邪魔でワカラナイ。だから脱ぐ」

「服が邪魔って今手でさわってたじゃねぇか」

「それじゃダメ。全然足りない。だから脱ぐ」


 そういう刳葉はどんどん服を脱いで行って、仕舞には上半身には何もつけてない状態。俺は刳葉がキャミソールに手をかけた時点で目をつむっていた。つむっていたけど布切れ音でなんとなく上半身裸ってのはわかった。


「うひぃっ」


 そしてなぜか俺まで服を脱がされてる。脱がされてるっていっても上だけなんだが抵抗するとなんか触りそうで抵抗できない。

 何を触りそうなのかは想像にまかせる。


「ん」


 なんか、なんかめっちゃ柔らかいものが二つくっついてきてその後に胴体らしき感触がくっついてきた。

 なんかいい匂いがする……。


「……意外と、オトコノコだったんだね智樹」

「おい、それどういう意味だよ」

「筋肉とか骨格とか……こうして響いてくる胸の音とか」


 耳を胸にくっつけてそう言ってくる刳葉。俺としてはそんなことよりこの現状がいろいろとやばいんだが。


「うん、これで描ける」


 そういった刳葉は体を起して俺は慌てて目をそらす。もとから開けてもいなければ刳葉の方に目をむけてすらいないけど。

 刳葉が服を着直したのを音で確認して、目を開けると椅子に座った刳葉はカリカリとペンを紙に走らせてる。

 俺も着崩された服を着直してそれを見守った。


*** *** ***


 刳葉の描いてきた絵を見て時間を潰していた時のこと、ガタッと立ち上がる音がした。したと言ってもだれが建てた音かは見るまでもない。


「できたのか?」

「ん、できた」


 そういって刳葉はベッドに腰掛けて絵を見ていた俺をまた押し倒した。その時、束ねていただけの紙たちが舞に舞って、床一面に広がった。


「できたからご褒美ちょうだい」

「なあ、できたらなんかやる的なこと俺言ったか?」

「彼氏ならそのくらいしてよ」

「は? 彼氏って――」


 二の次の言葉を言う暇なく、唇をふさがれた。ほんの一瞬だけ。


「今日で幼馴染はおしまい。今から恋人同士、いい?」

「はぁ、相変わらず強引だな。これで俺がいやだって言ったらどうしてんだよ」

「言わせない。言うつもりならこのまま犯す」

「……なあ、それ女のセリフか? 普通男じゃね?」

「何? 私のこと犯すの?」

「犯さねぇよ。なんでその選択しかねぇんだよ」


 逆に他になにがあるの? と言いたげな顔やめろ。探せばいくらでもあるだろ。


「それで、彼女さんはこの体制のままでいるつもりか?」

「ん、よろしい」


 刳葉はそういうと起き上がって、


「智樹、大好き」


 極上の笑顔でそう、言ってのけた。


久々の更新です。

そして今月末にある大仕事のせいで来週から残業だらけになります……ちくしょう。

さて、『絵描きな彼女』はいかがでしたでしょうか。

感想やご意見などありましたらお聞かせくださいまし~。

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