学年の美少女
教室の窓際に、学年一綺麗だと噂される少女が居た。その少女の名は、二ノ宮 式。漆黒の髪に、血管まで透き通って見えそうな白い肌。小さくて紅く色づいている艶やかな唇に、ぱっちりと大きく、吸い込まれそうな綺麗な瞳。
まさに、美少女そのものだった。少女といっても、女の色気を醸し出している。彼女は、芸能界で活躍しているアイドル達にも劣らない位、美しかった。
いつも……窓際の席で、つまらなそうに頬杖をついている。
その授業態度が、教師軍の気に触ったみたいで各担当の教師の作った難しい問題を、良く解かされていた。
中学二年のレベルじゃないほどの問題を、彼女はすらすらと引っかかることなく解いていた。……特別、塾に行っているわけでも無いらしい。
学活の時間、担任の横谷がにこにこしながら教室に入って来た。がっちりと、ラグビーで鍛えられた体に、小麦色色の肌からちらりと見える白い歯。
決して爽やかとは言えないが、それなりに整った顔をしている。
「今度の、文化祭で二年三組は……劇をする事になった!」
それを聞いた、生徒からはブーイングを受けて……窓際にいる美少女は立ち上がって教室から出て行ってしまった。――とても、不機嫌そうな顔で。
「二ノ宮は、どうしたんだ?」
きょとんと、二ノ宮の出て行く様子を見ながら横谷は言った。――鈍い奴。
俺は、二ノ宮の座っていた席に目をやる。
――いつからか、俺は二ノ宮を目で追うようになっていた。
彼女を教室で始めてみた時は、本当に……驚いた。あまりにも、整った顔立ちをしているから。
でも、その美少女は……笑わなかった。
――笑った顔は、今よりたくさんの男共のハートを射止めるだろうに。
俺が二ノ宮の席を見ているとき、隣に座っている親友の矢野が俺の肩をシャープペンシルでつっついた。
「ん?」
振り返ると矢野は、黒板をシャープペンシルで差して、微笑みを浮かべている。眼鏡の奥にある、切れ長の瞳はきらりと怪しく光っていた。
一体、なんなんだろう、と黒板に目をやるとそこには、大きく『ロミオとジュリエット』と書かれていた。
生徒からは大ブーイングが巻き起こり、クラス中が猛反対をしていた。
「ジュリエットは……二ノ宮かな?」
そう、横谷が呟いた途端に男共の視線が輝いた。
「俺、ロミオに立候補ー!」
一人がそう叫んだのを最初に、「俺も」とたくさんのロミオ立候補の手が上がった。
――これは、横谷の策略だろうか?
「お!? そんなに、立候補がいるなんて……今年の文化祭は盛り上がるなー!」
はははっと、嬉しそうに大口を開けて笑っている馬鹿さを見ると……策略ではなさそうだ。――天然の策略家というところだろうか?
その前に、ジュリエットをあの二ノ宮が引き受けるのだろうか?