表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
季節はフィルムと共に  作者: 三好ことね
参章 夏は日陰と共に
38/39

伍節

 その後、百日と林道は布団に包まったまま、西臼と共に状況の整理をすることにした。

「まず、あの人結局誰なんです?」

「松笠真昼、松笠家の三男。蛇の目持ちを見つけ、蛇目家へ連れて行く一家の……なんですけど」

「……なんですけど?」

「……松笠家には、もう一つの顔があるというか……」

 林道は見えないように、布団を強く掴んだ。

 これから話すことは――彼らが知る必要がないこと、だったから。


 けれど、そんなことも言ってられないのだ。


「松笠家は、蛇目家と……林道家の橋渡し、です」

「……は?」

「橋、渡し……」

「はい。基本的にはこの両家の間柄を取り持つことが仕事なのですが……松笠真昼は違う。立場と役目を重んじ、公平に拘る人物である彼は……林道家から逃げ出した蛇の目持ちを回収する役目がありまして」

 淡々と、ただ自身の持ちうる情報を話す。

 君谷に聞いたことだけではない、林道が元から持っていた知識も含めて、だ。

 その中から、二人が聞いても、害のないもの――つまりは、君谷の二の前にならない情報だけを話している。


「その、松笠真昼って奴が探してんのが、林道さん?」

「はい。逃げ出した……というのは、本当は正しくはないのですが……」

「じゃあ……どうして、林道さんは……追われて、いるんですか?」

「それは――僕が、捨てられた後、蛇の目が発芽したから……です」

 そのあと、諦めたように笑いながら「開眼、の方がそれっぽいでしょうか」と、付け加えた。

 西臼と百日は顔を見合わせ、行場のない感情に襲われていた。


 理不尽だ、と思った。

 素直な百日らしい感想だ。

 

 笑えない、と思った。

 捻くれた西臼の、本心だった。


「なに、それ」

 思わず西臼は、呟いた。

「おかしい、っていうか、ひどい……って僕も思います」

 落ち込んだ様子で、百日も釣られて呟いていた。

「……いいんですよ、これが、僕の運命なので」

 その目は、諦めに塗れていた。


「林道家、っていうのは昔から優秀な蛇の目を持っていたんです。まあ、蛇の目の優劣なんて、僕にはわかりませんが」

「優秀な、蛇の目……」

「ええ、あの人達は、特殊且つ使い勝手がいい目を求めていたんです」

 つまり、林道家が求めるのは、使い勝手のいい駒なのだ。

 林道玲、彼は当時蛇の目を持たなかった。


 そう、駒にすらなれなかったのだ。

 捨て駒としても使われず、ただ、要らないものとして捨てられた。

 追い出された。

 

「じゃあ、今の林道さんは……そいつらが求める存在、ってことですー?」

「それは……どう、なんでしょう。ただ回収したいのかもしれませんし……悪用、を考えているのかも、とも思いますし……」

 西臼と百日は疑問符を浮かべていた。

 

 林道が引っかかっているのは、自身の目の特殊さ故である。

「僕の目は――」

 林道の持つ目は――異質なのだ。

「つまり、ですね……この、目は――」

 

 林道の言葉を聞き終えると、部屋は静まり返った。

(だから、できることなら……言いたくはなかった、けれど――そんなことも言ってられないもんな)

「……つまり、さ。林道さんは、その目をどう使われるかわからないから、逃げてる……ってことで合ってる?」

「はい、その認識で合ってます」

「確かに、悪用……できちゃいますもんね」

 帰りたくない――否、捕まるわけにはいかない理由は、別にあった。


「そう、いくらでも――悪用できるんですよ」

 林道は、そう言って笑った。


 なぜなら、悪用しているのは他でもない。

――僕なのですから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ