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第一章 ◇六頁◇


「………御柳先輩!おかっぱロリ少女な妹さんと、和服撫子お姉様がいるなんて、羨ましすぎますよ!その上、超絶ツンデレ彼女までいるなんて………恵まれすぎじゃないですか!」


冷は宵太と、宵太に頬を引っ張られ続けている姉妹を見て興奮しながら言った。


「いや、兄弟は数に入れたらだめだろ………」


「何を言っているんですか?この世の中には、"そういった"のを趣味とする人だっているんです!自分だってそうですから。」


「冷や麦は天里がいるだろ?」


「み、美恵留は嫌ですよ!自分はまだ死にたくないですから!」


「天里は何者扱いなんだ?」


「快楽思考殺人者ですね。」


「超危険人物じゃないか!まあ、確かに釘バットだしな………あれ?つーか、冷や麦はなんで家に来たんだ?」


ようやく宵太は本題に話を戻した。

おそらく、忘れかけていたんだろう。

しかも、冷でさえも。


「あ、えっと………そうそう、"仕事"ですよ。呼び出されたので迎えに来たんですよ。」


「相変わらず、変わらずに急だな。だいたい用があるのなら、本人が直接来ればいいんだよなあ。」


「あの…それが………」


「ざーんねん、今日は来ちゃっているんだよーん。生意気なこと言うねぇ、宵太。てめぇらには義務があるんだから文句を言うんじゃねぇよ。それとも俺様七士様の言うことが聞けねぇのかなあ?」


宵太の発言に反応したかのように扉が開き、長身の男性―――緋鳥七士(ひとり ななし)が入ってきた。

見た目こそは誠実そのものの神主だが、中身は傍若無人の極悪非道。


「うわ………本人登場かよ………」


「御柳先輩、伝え忘れて申し訳ない………」


「いいから早く行くぜ。こんなところで話しても時間の無駄、生きる無駄だ。現場に行かなきゃ意味が無ぇ、生きる意味も無ぇ。」


そういうと七士は、二人の襟首を掴み引きずっていった。


「七士殿は素敵じゃのぅ。」


「夜凪ちゃんってああいうのが好きなのー?」


「儂は俺様男が大好物じゃ!」


「じゃあ、デートにお誘いすればいいのにー。誘わないのー?」


「誘えないんじゃよ。儂、乙女じゃから恥ずかしくて………」


「あはっ、夜凪ちゃん可愛いー。」


三人の姿を見送りながら、和む二人だった。

一方、七士に引きずられ現場へ到着した宵太と冷は、先に着いていた近馬と会った。


「宵太んと冷後輩、どうした?なんだか雰囲気が暗いぞ?」


「近馬、気にしないでくれ………」


「どうして自分まで………」


「ん?緋鳥ん、何かしたのか?」


「んあ?気にするな、ただの俺様式教育だ。ところで、今日はてめぇら男共三人だ。女の子がいなくて華が無ぇが、まあ我慢しな。今日の相手は男じゃなきゃ意味が無ぇからな。」


と、そこで、なんとか立ち直った宵太が質問をした。


「七士さん、それってどういう意味だ?」


「つまり、だ。今日てめぇらが相手をするのは、"そういう奴"ってことだ。」


「答えになってない気がするけれど、僕たち三人の内の一人だけでも良いってこと?」


「さて、それは知らねぇ。女の子じゃ意味が無ぇってのは確かだが、"奴"にも好みがあるだろうからな。」


一見、にこにこと笑顔で答えているように見えるが、実はそうではない。

にやにやと嫌な笑顔なのだ。


「自分、なんとなくわかりました。今日の相手は女の子、そして鍵は恋ですね?」


「さすがだな、冷。まあ、その通りだ。俺様が出向けば一発一撃で終わるが、生憎だがロリコン趣味は無ぇんだ。だから、てめぇらでよろしく頼んだぜ。」


それだけ言うと、七士は持参した枕を持って何処かへ行った。

寝心地の良いところを探しに行ったのだろう。


「宵太ん、冷後輩、とりあえず行くか。その娘が居るのはこの先の廃墟らしいから。」


「柊先輩は楽しそうですよね。それに比べて御柳先輩は………」


「僕には不向きな気がする………」


「毎回のように同じ台詞を言いますが、そろそろ慣れましょうよ。」


渋る宵太を連れながら、近馬を先頭に廃墟へと入っていった。


『だ、誰?私を消す人なの?』


廃墟の中に居たのは、白装束を纏った女の子だった。

ただし―――半透明の幽霊だ。


「俺たちはある人から頼まれてキミの悩みを解決しに来ただけだ。」


『私の悩み?う、嘘よ!そうやって私に近付いて消すんでしょう!』


そう、宵太たちの"仕事"とは、幽霊を相手するというもの。

とある事から七士の仕事を手伝う羽目になったのだ。


「俺たちはそんなことはしないよ。だから、お願いだから、キミの悩みを聞かせてくれないか?」


近馬が笑顔で幽霊に言った。

こういう時は近馬が一番適している。

自然体で話せるし、自然体で笑顔になれる。


『あ、あなたたちの名前は?』


三人で顔を見合わせ、お互いに許可をとる。

名前を教えて危なくなるケースも少なくないからだ。


「俺は柊近馬だ。」


「僕は御柳宵太。」


「自分は比名麦冷です。」


『わ、私は…生前の名前は、零六式(ぜろりく しき)です。』


幽霊―――もとい、式は少し躊躇いながらも名乗った。

これで少しは距離が縮まっただろう。


「そうか、零六式か。キミはどうしてこんなところで、悩み続けているんだ?」


『待っているんです………』


「誰を?」


『ラブレターの相手です。ここで待ち合わせをしているんです。その人が来るまでは離れられないんです………』


「そうか、待ち合わせをしていた時に………それは悲しいな。その人の名前は知っている?」


『知りません。名前が書いてなかったので………』


「隣に座っても良いかな?」


『………はい。』


近馬は式との距離を順調に縮めていく。

そんな近馬を見ながら、宵太と冷が小声で会話する。


「御柳先輩、柊先輩は先程から普通に話してますが、恐怖が無いんですか?」


「まあ、近馬だからな。近馬は人との距離を縮めるのが上手いから。」


「自分なんて先程から衝動を抑えるので精一杯です………」


冷は自分を腕で抱えながら言った。

式は幽霊ということもあって、儚げな雰囲気が漂う純粋無垢な少女に見える。

しかも歳は中学生か高校生ぐらいなのだろう。

妄想僻で変態な冷の好みにぴったり合っているのだ。


「冷や麦は変態だな………」


「お褒めの言葉、光栄です!」


「勘違いするな、褒めていない!」


二人はどうやら手伝う気は無いらしい。

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