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〜後日談〜 その四


〜冷と美恵留の場合〜


 結局、二人は横になっている間に寝てしまったようで、仲良く同じベッドで眠っている。

 時折、美恵留が寝返りを打つ度に冷は何かしらの攻撃を加えられているが、問題無いだろう。眠っていても喜んでいる風に見えるからだ。いや、それの方が問題なのかもしれないが。


〜依奈の場合〜


 自室のベッドの上できょろきょろと辺りを見回しながら、依奈が舌っ足らずな口調で側にいたゆかりに近馬のことを聞いた。


「ねぇねぇ、ゆかりちゃん?柊くんはいつの間に帰ったんですか?」


「眠った依奈さんを送ってくださったすぐ後に帰りましたよ」


 ゆかりはまだ眠そうに目を擦る依奈に、独特な関西地方の口調でゆったりと答えた。ゆかりの母親が京都辺りの出身で、それの口調が彼女に影響しているのだ。ちなみに、依奈の『うち』という一人称はゆかりのそれと発音は違うが、ゆかりの影響だ。

 くあ、と小さく欠伸をする依奈にゆかりは質問する。


「なんだか、お疲れのようだけれど、今日は学校で何かあったのですか?」


「うん、鬼ごっこをしていたんです」


「鬼ごっこ……ですか。それは、何と言うか随分とまた質素な遊びをしましたね」


「遊びじゃなくて学校行事ですもん。今年は唯ちゃんが考えたらしいですよ」


「学校行事ですか。相変わらず面白いことをする学校ですね」


「もう慣れましたよ。今では日常みたいなものです」


 くあ、ともう一度小さく欠伸をした依奈はぱたりとベッドに倒れ込んだ。間もなく寝始めたので、ゆかりは布団を掛けてあげると、部屋から出ていった。


〜近馬の場合〜


「なあ、真人?あの通り魔の噂の出所って誰なんだ?」


 近馬は甘いコーヒーを飲みながら、閉店後の作業をしている真人に聞いた。


「あれは誰だっけ?お客さんが話しているのが聞こえただけだった気がするけど」


「じゃあ、出所に確認することは出来ないのか」


「近馬くん、気になるのかい?」


 真人が聞くと近馬は少し黙り、甘いコーヒーを一口飲んでから答えた。


「もしかしたら、っていう風に思っただけだよ」


「もしかしたら、って何が……ああ、そうか。そういうことね。なるほど、わかったよ。それだったら別の違う方法で確かめておくよ」


「そうか、助かるよ」


 近馬はそれだけを言うと、一気に残ったコーヒーを飲み干して、店から出ていった。


「やっぱり、近馬くんは気にしていたのか。あれはどういう思いなのかな……」


〜芙和の場合〜


「おい、芙和よ。最近、お前の気が緩んでおらぬか?」


 この古めかしい話し方をするのは、芙和のお祖父さんで一緒に住んでいる、木薙芝刈(しばかり)。芝刈とは本名ではなく、神社を継ぐと同時にその名も継ぐ、いわば神名みたいなものだ。


「お祖父ちゃんがそう見えると言うのなら、そうだと思います」


「うむ?素直に認めるということは心当たりでもあるというのか?」


「まあ、ね。宵太といろいろかな」


「なんじゃ、宵太くんか。それならば気にすることではないな。芙和が自分の彼氏とどう接しようと、儂には関係の無いことじゃ。軽く踏み込んで良い領域ではないからじゃ。もし、お前が違う悩みでも抱えていたとすれば、儂は全力で助けるがな」


「ありがとうね、お祖父ちゃん。お茶でも煎れようか?」


「いや、茶ではなく酒の方で頼む」


「呑みすぎないようにね」


 芙和は日本酒を持って来ると、芝刈の持つお猪口に注ぐ。それを一気に飲み干す芝刈。


「うむ、やはり芙和に注いでもらうと一段と旨いな。お前も呑むか?」


「未成年だよ」


「そうじゃったな、わっはっはっ」


「ご機嫌になっちゃって。私はもう寝るからね。呑み終わったら片付けておいてね、お祖父ちゃん」


「わかっておるよ。おやすみ」


 おやすみ、と挨拶をして芙和は自分の部屋へと向かった。


〜唯の場合〜


「入と出はどこ?」


「お呼びでしょうか、お嬢様」


 出も一緒だが、例によって喋りはしない。


「呼んでいないのなら、呼ばないわよ。あのね、鬼ごっこについてどう思っている?あなたたち、といっても入しか喋らないけれど、意見が欲しいのよ」


「我々が思うに、意図が全く伝わりません。お嬢様は何故に鬼ごっこにしたのでしょうか?」


「ペアを組んで何かをやることによって、相手をどう思っているのか明確にしたかったからよ。冷様が美恵留様をどういうカテゴリで好きなのかを知りたかったのだけれど……まあ、予想通りだったわ」


「そうですか。ちなみに、賞品は決めてあるのですか?」


「その人が望むもの、それを私が責任を持って用意するわ。こちらで決めるより良いと思うの。それに、その人の人間性が出るから面白くなるわ」


 うふふ、と意地悪く笑いながら言う天上院唯は、やはり底知れぬお嬢様に変わりは無い。


〜宵太の場合〜


「なんじゃ、今年のは帰ってくるのか。これでは、儂と妹ちゃんのイチャラブ計画が台無しじゃのぅ」


「よみは救われた気分だよー。宵兄にお礼のちゅーをしてあげるよー」


「夜凪にしてやれよ。『いつもありがとうー』ってさ」


「弟くん!お主って子は……」


「お礼なら言わなくて良いからな」


「妹ちゃんの声真似が似合っておらぬな。というよりは気持ち悪いぞ」


「そこかよ!」


「宵兄に慰めのちゅー」


「同情するなら、おとなしくご飯を食べさせてくれ」


 ということで、食事中にも関わらず宵太に絡む姉妹は、結局、食べ終わるまでずっと続いた。御柳家は相変わらず、変わらない日常を送っていた。


〜七士と天の場合〜


 とある公園にて。


「七士くん!美恵留ちゃんと戦ったんだって?怪我でもさせてしまったらどうするんだ!」


「い、いや、でもよ、天さん。あれは仕方のないことだったんだ。まあ、怪我をさせちまったのは謝るが――」


「怪我を……させた、だと?七士くんのばかやろー!」


「お、おい、天さん!」


 うわーん、と走り去っていく中年の背中を見ながら、七士は溜息を吐いた。


「まじで親バカだな。つーか、馬鹿親か?まあ、天さんらしいけどな。それにしても、明日はどうするか……」


 いろいろと悩みながら七士も帰っていった。


〜斗乃の場合〜


「ボクが留まれるのもあと少しかな。あと少し、か。あの子たち全員に挨拶できるかなあ……ボクらしくもないなあ」

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