〜後日談〜 その三
後日談の前に、前言撤回などが多く、設定が曖昧になっているので、もう一度確認しておこう。ただし、今この場で伏せるべきものは伏せるので、あしからず。
季節は春と夏の間のような、そんな六月の後半辺りだ。
先ずは、御柳宵太。
黒髪を無造作に伸ばした、無気力のような二年生男子。彼は姉の夜凪と、妹の黄泉と一緒に暮らしている。母親は既に亡くなっていて、父親は失踪中。姉や妹については説明するほどでもないだろう。
次に、木薙芙和。
やや長めの綺麗な黒髪で、ツンデレ気味の二年生女子。彼女の両親は亡くなっていて、お祖父さんと暮らしている。神主であるお祖父さんの手伝いで、巫女をやることもある。
宵太と芙和が付き合い始めたのは、一年生から二年生にかけての春休み、つまり割とつい最近からだ。
続いて、柊近馬。
軽く茶色が入った短めの黒髪で、掴み所がないような二年生男子。彼も両親がいない。なので父親の弟である叔父と二人暮らしをしている。叔父が喫茶店を経営していて、忙しいときは手伝っている。
そして、綾杉依奈。
長い黒髪を縛りいろいろな髪型に変える、いろいろと小さい二年生女子。彼女の両親は共に海外働きで、家にはメイドと二人だけ。とはいえ、家が屋敷とか財力が無限などということではなく、単に親代わりのような理由で雇っているだけだ。そして依奈は、近馬の家の喫茶店でバイトをしている。
近馬と依奈は一年生の大晦日から付き合い始めた。
お次は、比名麦冷。
金色のメッシュが入った少し長い黒髪で、ばかで正直者な変態の一年生男子。彼の両親は、美恵留の実の両親と共に事故死してしまっている。今は親が遺した実家に七士と住むが、それまでは児童施設にいた。ミステリアス研究会の中では、彼だけが一年後輩である。
そして、天里美恵留。
肩にも届かない程度に揃えた茶髪で、飄々としている二年生女子。先程記したように、彼女の両親も事故死。同じく児童施設にいたが、後に白羽家に引き取られる。高校生になり、実の両親の遺した実家で一人暮らしをしていたが、二年生のゴールデンウイークに天と親子になる。これについては白羽家も了承済みだ。
ここでミステリアス研究会を紹介しよう。
設立直後はただの怠慢の集まりだったが、部活名の命名者でもある顧問の七士の指示で、簡易相談所のような部活になった。今では利用者もそれなりで《なんでも屋》みたいな活動をしている。部室はA棟四階の一番奥の部屋を利用している。
「それにしても僕たちの部活も随分と有名になったよな」
「私たち最初は会話すらしなかったのにね」
「俺と宵太ん、木薙と綾杉、あとは美恵留んが孤立していたよな」
「今思うと、うちらがいじめているような光景でしたね」
「僕が知った時には既に仲良く見えましたけれど」
「いけ好かない不良教員があたしたちを変えたのさ」
と、いうことで、次は緋鳥七士。
縛れるほど長い黒髪に少しだけ赤色のメッシュを入れている、言葉も性格も態度も悪い、保健室勤務兼スクールカウンセラーだ。まだ若いのに仕事は優秀で、なんでも出来る器用な人。名目上は保護者として、冷の家に居候している。
次に紹介するのは、天里天。
短い金髪で実年齢よりも若く見える、饒舌多弁でおしゃべり好きの、私立太刀守高校購買経営者。過去から流れてきた人間で、実験の被験者。実際は美恵留の曾祖父に当たるが、六十年流れた故に、まだ父親として見ても若い年齢だ。始めは美恵留に関係を隠していたが、後に明かしてめでたく親子になった。
お嬢様の天上院唯と、浮浪者の東雲斗乃については記載することが無いのでスルー。
長くなりましたが、後日談に移ります。
〜宵太と芙和の場合〜
「ねぇ、宵太。話したいことがあるから、付き合ってくれるかな?」
「うん、いいよ。じゃあ、近馬のところの喫茶店に行こうか」
この話は次章に続く!
〜近馬と依奈の場合〜
「今日も宵太んにいろいろ言われたな」
「助けてほしかったです」
「あはは、悪いな。あまりにも楽しそうに見えたからな」
「まあ、楽しいですけど……あ、そうだ。柊くんは、唯ちゃんが御柳くんのことを好きじゃなかったことに、気付いていたんですか?」
「なんとなくだけどな」
「やっぱりですか。それを聞いた時の柊くんが驚いていなかったので、そんな気がしていたんです」
「まあ、宵太んが好かれるのは難しいからな。ぶっちゃけ、ありえない」
「御柳くん、ひどい言われようですね……」
「ほら、宵太んは無気力な感じに見えるからな」
「そんな御柳くんのどこを好きになったのか、今度芙和に聞いてみます」
「素直に答えてくれなそうだな」
「あうぅ……」
的確な指摘をされて頭を悩ませる依奈と、その頭を撫でる近馬。やはり、仲が良い。
〜冷と美恵留の場合〜
「お嬢様ちゃんが御柳を好きだっていうのが嘘で良かったねぇ」
「え?なんで?別に僕には関係ないじゃないか」
「関係あるじゃないか」
「……あ、そうか。僕の御柳先輩を奪われる心配がなくなったもんな!」
「冷はばかだねぇ。既に木薙ちゃんが奪っているじゃないか」
「僕は昼ドラのようなドロドロ関係じゃなければ良いんだ」
「つまり、三角関係が嫌いってこと?」
「そういうことだ!」
「ああ、そうかい」
やれやれといった風に溜息を吐く美恵留と、妙な発言の多い冷。今更冷の発言は気にも止めないが、本当にやれやれだ。
〜七士と天の場合〜
「七士くん、聞いてくれるかい?実は美恵留ちゃんとの会話の仕方がいまいちわからないんだ。あの子は基本的には寡黙なところがあるから、ぼくみたいなのは苦手に思ったりしているんじゃないか心配なんだよ」
「天さんは気にしすぎだ。美恵留だってあんたに嫌われないか心配なんだ。お互いがそうだからぎこちないだけだ」
「そうなのか。それなら――」
数分後、愚痴の吐き出し合いが始まった。
〜唯の場合〜
「またしても、失敗。いや、失態かしら。それにしても、急いで企画を変更しないと。この企画だと皆様に迷惑がかかってしまうわ。やはり私情を挟むようではだめね。冷静によく考えなくちゃ」
意外といい人なお嬢様でした。
〜斗乃の場合〜
「そろそろ、ここともお別れかな……いや、もう少し、もう少しだけ留まろう」