侵略者を撃退したのは……。
通勤通学ラッシュが始まる時間帯、某駅の改札口の向かい側にある立ち食いうどん屋も書き入れ時を迎える。
「キツネうどん」
店に入って来た客がカウンターに金を置き注文する。
「はい、ありがとうございます」
「竹輪天うどん」
「はい」
「月見蕎麦」
「うちはうどん一筋で蕎麦はやって無いんです」
「えーそれじゃ月見うどん」
「すいませんね」
駅の改札口の前にシャッターが降ろされる頃、地球の侵略を企むうーどん星人は、侵略の拠点である某駅の立ち食いうどん屋の厨房で人間に寄生させる分身体を次々と吐き出していた。
人間そっくりに化けたうーどん星人の口からは、ウニョウニョと蠢く細うどんのような白く細長い物が次々と出てくる。
うーどん星人は吐き出した細うどんのような物たちに動かないよう言い聞かせながら、少しずつ纏め箱に並べて行く。
此の吐き出された細うどんのような物をうどんを食べに来店した客に食べさせるのだ。
腹に入った細うどんのような分身体は腹から頭に登り、脳味噌に寄生して人間を操り人形にする。
うーどん星人は操り人形が増える事を思い浮かべながら分身体を吐き出す作業を続けていた、その時。
鍵が掛けられ閉め切られていた引き戸がバシーン! と開かれる。
音を立てて開かれた引き戸に目を向けるうーどん星人。
うーどん星人の目に数体の人間の姿が映る。
ドヤドヤと断りもなく店に踏み込んで来た人間たちの1体、耳や鼻や口からウゾウゾと蠢く白い蛆のような物を出した1体が大宇宙共通語で話し掛けて来た。
「数百年前から地球の此の国を含む約3分の1は我々はくまーい星人の支配地域だ、出て行け!」
「え? もう侵略してる奴等がいたのか? そ、それじゃ、残りの3分の2に行けば良いのか?」
「良いわけ無いだろ!」
引き戸の方から別な声が響く。
はくまーい星人に向けていた目を引き戸の方に向ける。
引き戸の内側、はくまーい星人の後ろに地球の白人のような顔の人間が数体いてうーどん星人を睨みつけていた。
その中の1体、口や鼻や耳からウニョウニョと蠢くスパゲッティのような物を出した1体が話す。
「はくまーい星人と同じように数百年前から残りの3分の2の半分、地球の3分の1は我々パスター星人の支配地域だ」
「それじゃ残りの3分の1なら良いのか?」
「「別に構わないが、残りの3分の1の地域はのべつ幕なしに内戦しているから旨味は少ないぞ」」
「そうなのか?」
「「そうなんだよ、分かったなら此の星からサッサと出て行け、サッサと出て行かないなら、我々はくまーい星とパスター星連合軍と星間戦争になるぞ」」
「分かった、分かった、出て行くよ」
「「出て行く前にお前の分身体を寄生させた人間を解放して行け、此の星は我々パスター星人とはくまーい星人の所有物なのだから。
あ、でも、後数十年待てば我々は此の星から出て行くから、それまで待つって手もあるけどな。
もっとも、その時には此の星にマトモな資源なんて残って無いだろうし、人間も激減してるだろうがな」」
「どういう事だ?」
「「お前も此の星の侵略を企んだなら気がついただろう、此の星が温暖化で滅び掛けている事に。
温暖化により人間は滅亡まで一直線なのに、奴等は何ら温暖化を阻止する為の手を打って無い。
まぁそうなるように誘導しているのは我々なんだがな。
温暖化が進めば進むほど此の星の資源を集めるのが楽になるからだ。
それでも良ければ数十年待っていろ」」
「いるか! そんな出涸らしになった星なんて」
こうしてうーどん星人の地球侵略は頓挫したのだった。