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不安にならないで。

 貴女がこれを読んでいるっていうことは、あたしはまた奥に篭っているのでしょう。

 でも安心して。

 あたしは貴女だし、決して貴女に乗っ取られたとかそんなわけではないから。

 っていうかあたしが貴女だった時の記憶を思い出したからからこそルーク様を助けられた未来を掴むことができたのだから。感謝してるんだ。


 かあさんが逝って、父さんがお酒に負けて、あたしにも暴力をふるうようになったあの時。

 あたしは自分だけ幸せになっちゃいけないんだって心を押し殺してしまった。

 お兄ちゃんも寄宿舎に入って家にはあたしと父さん二人きりになったから、心を殺してないと耐えきれなかっただろうなって今ならわかるけど。


 そんなあたしが変われたのは貴女のおかげだよ。


 心の奥からずっと見てた。


 自由に生きる貴女はとっても心強くって。ああ、あたしでもこんなふうに生きられるんだ、そう思えたらとても心が楽になった。


 たぶん、あたしは魔女エメラだった前世を思い出したことで、貴女っていう理想の自分を産み出したんじゃないかな。そんな気もするの。


 ねえ。貴女にはまだ全ての記憶が戻って居ないんだと思うんだけど、あたしは実はエメラ時代も含めてもう全て思い出してるんだ。きっとね、貴女が全ての記憶を思い出した時、あたしと貴女はもう一回一人のあたしになれるんじゃないかなって、そんな気もしてる。


 それまで。


 楽しみましょ。この人生を。

 もしかしたらまた入れ替わることもあるかもだけどそれはそれ。

 貴女が感じたことはちゃんとあたしも一緒に感じてるから、今はきっとメインは貴女の方がいいかな。

 今のあたしは貴女の感情も記憶もすべて共有してるから。

 だからね。

 あたしには不安はないよ。

 貴女も不安にならないで。


 きっと、いつか。

 あたしと貴女が再び一緒になれるまで。

 それまで。ばいばい。




 ♢ ♢ ♢


 手紙にはそう書かれていた。

 ああ、これは間違いなく自分の字だ。そう信じられる。


 そう、か。

 わたしの方が解離した方の人格、なのか。

 と、そう納得して。


 エメラの前世に引っ張られてはいるものの、確かにエメラの最後の記憶はない。

 魔女エメラとして生きた。そんな実感があるだけ。


 本当のセラがエメラの記憶を全て思い出しているのなら、彼女の言うことの方が正しいんだろう。


 ほおに涙が一筋流れていく。


(なんだろう……、情緒不安定になってる? だけど……)


 不安にならないで。

 手紙にはそう書かれていた。


 でも、だって、だからと言って。


 不安にならずにいられない。悲しい。感情がぐちゃぐちゃになっていた。

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