竜種。
マナと魔素。
その二つは水と氷のように元々は同じものだ。
世界の根源であり神の氣であるエーテルがその姿と性質を変えたものにすぎない。
水が生命を育み、氷が命を断つように。
マナは生き物の健全な成長を助け、魔素は命を蝕む。
白竜はゼロを1に、1をゼロに、空間からエネルギーを取り出し、また返す。
それはマナと魔素にも同じ。
マナをゼロに、ゼロからマナを取り出し。
魔素をゼロに、ゼロから魔素に。
そしてその延長として、マナを魔素に、魔素をマナに相転移させることもできた。
白竜の権能、真空相転移は、最大で放てば全ての生命を無に還すことが可能であったし、その逆に星を壊すほどのエネルギーを取り出すこともできた。
まさに神から世界を託された調停者、その役割に相応しい権能を授かっていたのだった。
そして。
黒竜ブラドはまた違った役割を持つ。
彼に与えられた権能は、混沌。
暗黒竜、漆黒の竜、闇の福音。
通り名もたくさんあるブラドは、厄災竜としても名を轟かせている。
そのパワーは他の竜種を圧倒する。
存在するだけで地に嵐を巻き起こす、そんな漆黒のギア、重力を司るブラドそのものであるそんな存在の竜。
ブレス、黒褐色の嵐は全てを引き裂き。
その権能、重力崩壊は全てを飲み込む漆黒の穴となる。
この世界には他にも神の使徒、代理人として使命を与えられた竜種がいる。
紅竜レッドクリムゾン。
赤竜レッドストライク。
黄竜ジラーフ。
青竜ブルーラグーン。
聖竜エレメンタルクリスタル。
そして、
神竜オーバーザレインボウ。
彼らが真に仕えるのはデウス・エクス・マキナのみ。
神デウス。
勇者エクス。
そして聖者マキナ。
三位一体とも呼ばれる彼の神に創造されし竜種。
この世界はそんな竜種によって支えられていたのだった。
この白い世界。
白い砂と白い壁しかないこの場所の上空で争われた白竜と黒竜の闘いは、ほぼ一日中続いたのちどちらからともなく終了した。
「ふはは、もう終わりかよじじい」
「なんと、まだ駄々をこねるかや、稚児よ」
ほぼ肉弾戦となっていた彼らの表皮は傷つき、ダメージも相当にあるように見える。
「キュア、お願い。二人の身体を癒して」
エメラはギア・キュアに祈る。金色の粒子が舞い散り、巨大な竜の全身を覆った。




