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じゃれあってる。

 エメラにしろ白竜にしろ、人のような食べ物を必要とはしなかった。

 元々彼らは神によって創造された使徒。

 その身体を構成するものは純粋なマナだった。


 生命、とは少し違う。

 エネルギー生命体と言っていい存在。


 この世界はマナの膜の表面にある。

 物質、質量というものも、そんなマナの膜の表面のほんのほつれ。歪みにしか過ぎない。

 しかし、そんなほつれに過ぎない物質から生命が産まれ、生き物が世界に溢れ。

 人は文明を築きより多くの命を育んできた。


 元々。

 人の魂ですら、マナの泡でできた儚い存在であった。

 生命という器を手に入れた魂は、大霊から別れ命に宿り、そしてまた大霊に還る。

 そんな輪廻を繰り返して。


 そういう意味ではエレナらは生命という器には囚われていないだけで、その魂は人のそれと何ら変わりのない儚いマナの泡であった。


 命に囚われてはいないけれど、その魂には人と同じように「感情」というものをちゃんと持っている。

 決して超越した精神を持った存在なんかじゃぁ、なかったのだ。



 この世界の成り立ち。

 ギアのこと。空間のこと。

 そういったものは全て白竜パイロンより学んだ。


 元はほんの小さなギアだった、エレナ。

 それがあるとき自我を持った小さな意識となって。

 そして、そんなエレナを導く使命を神デウスから授かった白竜によってここまで育てられたのだということも、いつしか理解して。


「やぁエレナ」


「どうしたの? ブラド。今日はおじいさまいるわよ?」


 風に紛れやってくるブラド。いつもは白竜の留守に会いにきてくれる彼。

 エメラに色々教えてくれる彼は、いつもそんなふうに突然に現れた。


「はは。俺は何もパイロンの目を盗んでおまえに会いにきているわけじゃないぞ? そもそも俺は強いからな。パイロンなど赤子の手をひねるが如くーー」


「赤子の手かや。おぬしはよっぽど叩きのめされたいのだとみえる」


「はん! 聞いてたのかよパイロン。まあいい。ほら、相手してやんよ!」


 漆黒の渦を体に纏い一瞬でそれまでの人型から竜の姿にへんげするブラド。

 天まで届くかと思われるその巨体がゆったりと白竜を睨む。


「ふん! まだまだ幼いの!」


 そういうと、負けじと巨大な白竜の姿にへんげし、黒竜に絡みつく。


 白い嵐を纏った白竜、黒い渦を撒き散らす黒竜。

 その二体の間にはバリバリとした電撃が行き交う。


 白竜はどうかわからないが、黒竜にはこの闘いを楽しんでいる節がありありと見えた。


 そもそも空間の歪み、重力を操る黒竜と。

 物質の相転移とディラックの海に手をかける白竜がまともにやりあえば世界なんぞあっというまに壊れてしまう。

 だから。

 エメラはそこまで怖く感じなかった。

 じゃれあっているだけ。そう見えていたから。



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