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▪️アルバート。

 妹セラフィーナの様子がまた変わった。

 表情も明るくなり、ルークともうまくやっているように見える。

 それこそ、まるで幼い頃の彼女に戻ったかのような、そんな雰囲気もして。


 ルークの話によれば、あの婚姻の日にセラフィーナは記憶喪失になったのだという。

 それまでの陰鬱な少女時代の記憶を一旦無くして、新たなセラフィーナになっていたのだと。

 信じられなかった。そんな、人格さえも変わってしまうような、そんな現象が妹に起こるだなんて。

 それでも。

 あの王都のマキアベリ侯爵邸での事件の後の彼女は生き生きとして見えて、母が死に親父があんなふうになってからうちに籠るようになってしまっていた妹とはとても同一人物には見えなくて。

 もしかしたら?

 何か悪いものにでも憑かれているんじゃないだろうか?

 そんな想像もしてしまった。


 ほら、よくある転生? ロマンス小説でよくあるように、別の時代、別の世界からやってきた魂が乗り移ったりするようなあれ? もしかしたらそんな存在に妹は乗っ取られているんじゃないか。

 可哀想なセラフィーナ。

 もしかしたらセラフィーナの魂はとっくに消滅してしまっているんじゃないか。

 もしかしたらそんな別の人格、魂に乗っ取られてしまったんじゃないか。


 そう思うと悲しくて。

 でも、何もしてやれなかった自分が不甲斐なくって。

「あれは、セラフィじゃないのかもしれない」

 だなんてセリフをついついルークの前でこぼしてしまった。


 驚いたような顔をして、そしてどこか納得するような表情になったルーク。


 奴がどう思ったのかまではわからない。

 ただ、それでも。

 ルークが今受け入れているのは今のセラフィーナだから。だったら俺がどうこう言うべきじゃないのかもな。だなんて考えて。

 それ以上の口出しはするのをやめた。





 マキアベリ侯爵領の屋敷に乗り込んだあの日。


 侯爵の腹の中に残った魔結晶が暴走を始め、奴を黒い繭で覆った後

 危険だからと俺たち全員を部屋から追い出し中から結界のようなもので封印したセラフィーナ。


 その魔力は人間離れして。

 いや、人が変わったようになってすぐ彼女が偽名で冒険者登録をしていたところまで突き止めたのだが、多分その時すでに彼女のその真の魔力は人の持ちうるものからはかけ離れていたのだろう。

 そう思うしかなかった。


 ルークはその魔力をも含め、セラフィーナの事を恩人だと言って傾倒していたようだけれど、普通じゃありえないのはわかるだろう?

 そして、あの男。


 繭から出てきたという黒ずくめの男は、セラフィーナの旧知の知り合いだと言った。


 そんな馬鹿な話はない。


 魔族かと聞くと、「はは。俺はそんなチンケな存在ではないよ。そうだな、おまえたちにわかる言葉で名乗るなら、俺は『竜神』、神の使徒である黒竜ブラド様だ。人間の物差しなんかで俺を測れると思うなよ!」と、そう凄まれた。


 黒竜?

 そんな伝説の中でしか語られないような存在がここにいる?

 それも、セラフィーナと旧知、だと?


 そんなこと、にわかに信じられるわけないじゃないか!




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