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はざまの空間。

 ルークヴァルトもアルバートをも、周りの騎士たち、そして侯爵家の人間までもみな無理やり部屋から追い出したセラフィーナ。

「セラフィーナ!!」

 と叫ぶルークヴァルトの悲痛な声に心が痛んだけれど、それでも、と。

 扉を締め切り次元の封をし、そして目の前の黒い塊に目を向ける。


 黒いまゆのようになってしまったそれは、どんどん大きく膨らんでいってもうすでにセラフィーナの背丈くらいの高さになって。大きくなったそれはいつの間にか床に転がっていた方の魔結晶も吸収してしまったらしい。

 中で蠢く魔の気配。

 侯爵の体はもう完全に溶けてしまったのだろうか? もう人であった様子などどこにも感じられなかった。


 ドクンドクンと鼓動を始めるそれ。


(まさか!)


 普通の魔獣のそれとは比較にならないくらいの魔力が溢れ出してくる。

 もうこのまま焼き払ってしまった方がいいのか。それとも……。

 いや、きっと外側を焼き払ったとしてももう遅い。

 それくらいはセラフィーナにも感じられた。

 昔の記憶が全て戻っているわけではない、今のセラフィーナにも、目の前のその漆黒が只者ではないことはわかる。


 いや、マキアベリ侯爵とその魔結晶などただのきっかけに過ぎない。

 その魔結晶が開けた次元の穴が、どうやら最悪の魔を呼び出してしまったのだろう。

 ドクドクと聞こえてくるその音が、セラフィーナには大昔に聞いたことがある、あの漆黒の魂の響きであると思われて。


 どんどんと大きくなっていくその漆黒の繭。

 このままでは部屋ごと埋め尽くしてしまいそうで。


「しょうがないわ」


 次元の壁で部屋を覆ったけれどそれだけでは広さが足りなかった。だから。

 セラフィーナはその部屋の空間をそのまま少しだけ世界からずらす。

 (はざま)の空間。

 ほんの少しだけ世界をずらすことで、この中で何かあっても外界には影響が及ばない、そんな空間を創り出した。



 唐突に。

 繭がパンと裂けた。

 もうその役割は終わったかと言わんばかりにしおしおと足元に落ちていくその繭であったもの。


 そして。


「ふむ。久々の外界かと思ったが、ここは(はざま)かや?」


「あなたが来るなんてね。あっちで満足してるもんだと思ってたわ」


「お前は、白竜のところにいた魔女か? エメラの化身の」


「そうね、黒竜の貴方はいっつもおじいさまに喧嘩を売りに来ていたものね」


「ふはは。喧嘩か。まああんまものはただの力試しに過ぎんわ」


「そうね。でも……。どうするの? まさか大人しく帰ってくださるだなんて殊勝なことおっしゃるわけでもなさそうだけど」









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