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じれったい。

(あああああああ。焦ったい焦ったい焦ったい)


 あくまで国家安全保安局局長として話すルークヴァルトに、貴族、侯爵という立場でのらりくらりと話すマキアベリ侯爵。

 彼のことだから言い逃れのできないだけの証拠は抑えてあるんだろうけれどと思いながら、それでもほんと焦ったくてしょうがないセラフィーナ。


 通された執務室の応接用テーブルを前に、侯爵の対面でソファーに腰掛けているルークヴァルトの斜め後ろに控えているセラフィーナは、知らぬ存ぜぬを決め込むマキアベリ侯爵の胸元にあの時感じたのと同じ魔素の気配も感じていた。


(やっぱりもう一つあったんだ。魔結晶が!)


 彼の胸元、上着の下にどうやら隠されている魔結晶。前のものよりは少し小さいか。

 飲み込んだりしたわけではなく、服の下にあるのだろうというのは彼のマナの変化がそれほどでもないことからもわかる。

 もし飲み込んでいたのなら、もうとっくに侯爵の魂は魔素に侵され、彼は魔人と化していただろう。

 それでも。

 今ここでセラフィーナがそれを指摘したところで、彼はやっぱりシラを切るだけだ。取り押さえて調べるなんて真似も、今のままじゃできるわけがない。


(ああ、ほんと焦ったい)


 この男が諸悪の根源に違いないのに。

 なのに。

 そう思うと焦ったくてしょうがなくて、自分が魔法を使ってとっとと片付けてしまいたくなるけどそれはダメだ。

 ルークヴァルトの顔を潰すことになる。

 だから。


 焦ったくてもどうしようもなくても、ルークの斜め後ろに立って、その様子を眺めているしかできなくて。



「実はここにくる途中、我々は突如発生した魔獣の襲撃にあった。そちらは撃破したのだがそこでこれと、それを操り魔獣を呼び出したのであろう魔道士の亡骸を回収したのだが心当たりは?」


 徐に頑丈そうな鞄を運び、目の前のテーブルに置くアルバート。その蓋を開けると中にあったのはセラフィーナが回収してきた魔結晶そのものだった。漆黒に黒く光るその拳大の石は禍々しい魔素を撒き散らしていた。


 一瞬、マキアベリ侯爵の目がその魔結晶に釘付けになる。


 魔素の悪影響を防ぐため素早く鞄の蓋を閉めるアルバートをみて、侯爵が苦々しい顔になるのをセラフィーナは見逃さなかった。


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