闘い。
「セラフィーナ? なのか?」
ごめんなさいと言いつつルークヴァルトを覗き見ると、彼がそう驚愕しているのが見えた。
口の動きからもセラフィーナと言っているのがわかる。
最近はセラフィと呼んではくれなくなった。
なぜかわからないけどそれが、少し悲しく感じる彼女。
(セラフィーナの身体はやわだから、危険を避ける意味でもこうしてマトリクスで覆うのはしょうがないんだけど)
そんな意識が頭をよぎる。
(まあそれに、セラフィーナのまま戦うよりこの方が皆さんを驚かせなくて済むかもしれない。ルーク様にはわかるだろうけどそれでも)
「やらせない! よ!」
そう赤鬼に啖呵をきる。
「ふむ。なんだ、女、か?」
「なんだ女かって、あんたら魔族にも性別の概念があるのね!」
「長くここにいるんでな。女とは弱くやわいものだ。俺がふれればすぐに崩れてしまう」
「そんな女ばっかりじゃないってこと、見せてあげるわよ!!」
そのまま右手、手刀を振り抜く。
圧縮された空気のヤイバが赤鬼の胸を切り裂いた。
「おお、そこらの騎士どもには傷もつけられなかった俺の皮膚を切り裂くか! これはこれは。驚愕に値するな!」
まるっきり痛がっているわけではない。むしろ喜んでいるかのような笑顔を見せる鬼。
「少しは楽しめそうか!?」
そう言って、彼も右手に持ったどでかい棍棒を横なぎに振った。
衝撃波が巻き起こり、周囲にいた騎士達までもがかなりの距離飛ばされる。
セラフィーナは両手をクロスし、アウラクリムゾンの盾を展開しなんとかそれを受け流した。
「やるな小娘!」
「あなたもね! 前の鬼さんとは大違いだわ!」
「前の、だと!? まさか!」
「王都のマキアベリ邸にいた鬼さんよ。彼は……、そんなに強くはなかったわ!」
「なんとー! 弟分を殺ったのはお前なのか!?」
「って、人ぎきの悪い言い方しないでよ。彼のは自滅よ。館も吹き飛ばすような炎を熾すんだもの、危ないから魔法で覆ったら自爆しただけよ!」
「そうか。あやつは馬鹿だったからなぁ。まあいい。俺はあれとは違う! そう簡単に行くとは思うなよ!!」
「あなたが強いのはわかるわ! でも、負けないんだから!!」




